盗賊団発見

 調達が進むUH2の偵察タイプ――通常タイプに赤外線監視装置などを追加装備した機体にダイナは田村二尉を連れて乗り込む。


「出してくれ」


 二人が乗り込みダイナが指示を出すと機体は上昇を始めた。


「お世話になりますダイナです」

「ハヤブサだ。短い飛行だがよろしく。で、何処に送れば良い?」


 パイロットらしいは端的な言葉で尋ねてくる。


「村から見て風下へ降りてくれ。勿論、村から見えないように飛んで下ろして。そのあとは風上側へ回って村を偵察しつつ風上側を周りながら飛んでくれ。これはできる限りで良い。盗賊団が出てきて、やばくなったら切り上げて逃げてくれ」

「あんたらを援護しなくて良いのか?」

「必要なら呼ぶよ。あんたらがすぐに駆けつけてくれるなら、少しの間くらい自分で何とかする」

「了解!」


 ダイナの指示にパイロットは明るく答えた。

 戦争経験者なのか、ダイナの指示を理解して飛んでくれた。

 本当にこういうときはありがたい。

 何も聞かず、このあとの事がやりやすくなるように、盗賊に見つからないよう低空を飛んでくれるのだ。

 多分危険でも、盗賊団から狙われても任務を全うしてくれるだろう。交わした言葉は少ないが腕が良いことは尋ねてくるときの話し方、考え方だけで分かる。

 心強いバックアップだ。

 一方、パイロットと話している間、田村二尉は黙り込んでいた。

 二人の間に割り込める余地がないことが分かったからだ。

 ヘリはダイナの指示通り飛び、川に沿って移動して村に一番近い河原でホバリングする。

 ダイナは素早くファストロープで下りて安全を確保すると、田村二尉を下ろす。

 二尉が降りるとヘリはファストロープを回収し、ハヤブサは川沿いに飛行して飛び去った。


「さあ、村へ行きますよ」

「ふん」


 顔を逸らし、不平を漏らしつつもダイナが村へ向かって歩き出すと田村二尉は黙って後ろから付いてきた。

 日本と違い、平地に森があり地面が腐葉土や落ち葉で柔らかいことを除けば歩きやすい。

 ダイナは歩きやすい場所を選びながら進んで行く。

 暫く歩いていると、偵察ヘリからの報告が入ってきた。


『ダイナへ、此方ハヤブサ。聞こえているか?』

「ダイナだ。どうした」

『目標の村に着いた。ビンゴだ。ついているぜ。盗賊団だ。連中荷物を纏めて出て行こうとしているところに出くわした』

「どっちに向かっている?」

『そっちに向かうように飛んでる。今のところ、連中は風下に、そっちに向かっている。もうすぐ見えなくなるがな。熱探知で出来るだけ追跡する』

「ありがとう、そのまま暫く飛んでくれ。敵の構成は?」

『四十人くらいか。それと人質らしい女性が六人か。見えるのはこれくらいだ』

「攻撃されたか?」

『弓矢だけだ。届いていない。うおっと! ライトニングだ。一人だけのようだから問題ない』

「ありがとう。無理はするな。死なれても、弔いはできないからな」

『勿論死ぬ気はない。できる限り飛んで伝える。映像は欲しいか?』

「ああ送ってくれ」


 すぐに受信機に映像が流れてきた。


『受け取れたか?』

「ああ、受け取った。鮮明な画像だ」

『良かった。連中森の中に入った赤外線でできる限り追跡する。以上』

「ありがとう、無理はするな、やばくなったら逃げろ。以上、通信終了」


 手早く通信を終え、ダイナは盗賊団と接触しようとする。


「ヘリに任せたらどうだ? 見つけたのだから終わりだろう」


 ダイナの予測が当たったことがしゃくに障るのか田村二尉はムスッとした声で言う。


「まあ、これで依頼は終わりですが、追加報酬が必要なので接触をします」


 部隊が接触するまで追いかければ追加報酬が貰えるのだ。


「がめついな」

「冒険者は実入りは良いですが、何時も収入があるとは限らない商売なので。いつまでも出来る商売でもありませんし」


 ダイナは肩をすくめて言う。


「それにヘリと無人偵察機の燃料や偵察装備も心配です」


 上空を飛べるにしても燃料切れや不意の故障、探知圏外あるいは探知不能箇所への移動などで盗賊団を見失う事もある。


「万が一、見失うわけにはいきませんので、自分で接触し続けないと」


 盗賊団を捕捉し続けるためにも、地上から監視する人員が必要だった。

 三佐がダイナを呼び寄せたのも、それぐらいやってもらおうという腹づもりなのだろう。

 でなければ追加報酬として、部隊の誘導、事実上の作戦立案など隊長はさせない。


「アイリ、待機中の中隊は?」


 無線機で基地のアイリを呼び出して、待機させていた部隊の状況を尋ねる。


『準備していた二個中隊がいつでも出られるわよ』

「すぐに出て貰って、僕たちが降りた河原に降下して展開。村に向かわせて。特科も準備出来次第、河原に展開。後続の一個中隊は村に下ろす予定で調整。もう一個は予備として待機」

『了解』

「隊長は?」

『今、戻ってくるところ』

「早く戻ってくるように言ってくれ。帰る前に終わったら作戦指揮の分、更に追加報酬を要求すると言ってくれ、以上」

『了解、以上。応援が必要なら呼んで』


 そこでダイナは無線を切り、盗賊団と接触するべく歩みを早めた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る