デート編2

「ここよ」


 ダイナがアイリに連れて行かれたのは駅ビルの中に入っているテナントの一つだった。

 比較的大きめで様々な店がある中、二つのフロアを占有している大きな店だ。

 復興途上の新門市は復興景気で消費意欲が旺盛でしかも若い人が多くこのような大規模店が多く進出してきている。

 それだけに様々な種類の祝を取りそろえている。

 ワンピースだけでも数百着あり店舗の一角を占めるほどで、全体で何万種あるのか、ダイナには想像も付かない。


「どれにしようかしら」


 早速アイリが飛び込んで選びに行っている。

 


「ねえ、これとこれだとどっちが良い?」


 早速見つけ出してワンピースの中から気に入ったものを選び出して見せる。

 赤いワンピースと青のラインが入った白いワンピースだ。


「赤が良いともうけど」


 ダイナは思った事をそのまま言った。

 明るく活発なアイリのイメージは色的に赤だ。

 それに髪の色が明るく肌も白いので全体的に色素が薄い。なので濃いめの赤でバランスを取った方が良い。

 何よりアイリの白い顔や髪、手足が映えるし、服の赤も鮮明に見える。

 白の方は清楚な感じだが大人しすぎるし、肌も髪も同系統なので無意味だ。

 青も清楚そうぎて、今のアイリに合わない


「そう、じゃあ着替えてみるわね」


 そう言ってアイリは試着室に入って着替え始める。

 女性用の服を扱う店に入るだけでも息苦しいのにアイリの着替え、更衣室から流れてくる服を脱ぐ音が響いてきて余計に居心地が悪い。

 だからといって逃げることが出来ない。

 いつもならさっさと帰るが、アイリ相手ではそうもいかない。


「じゃーん、どう?」


 着替え終わったアイリがカーテンを開いて見せた。

 想像通り、アイリの雰囲気にぴったりだ。

 明るい笑顔もあって、服もアイリも映えている。


「よく似合っているよ」

「ありがと」


 と言うとアイリは再びカーテンを閉めて、着替える。

 再びカーテンが開けられたとき着ていたのは、先ほどの青いラインの入ったワンピースだ。


「うーん」


 確かに着てみると綺麗だ。

 清楚な感じがして非常に良い。

 深窓の令嬢と言った感じで雰囲気のあるアイリでも似合う。だが、活動的な普段の一面を思い出すとどうも違うように思える。


「それも良いけど、さっきの方が良い」

「そう、わかった。じゃあ次の探してみましょう」


 こんな感じで服選びは始まった。

 ブラウスにロングスカートの組み合わせは大人びた雰囲気で、年上ということもあり色気があり綺麗だ。

 カーディガンにボックスプリーツの組み合わせはお嬢様校の生徒のようだ。元々戦争前はお嬢様校に通っていたと言うから着こなしも完璧だ。

 キャミソールにショートパンツも活動的なアイリに合っている。

 かと思ったら、ホルターネックの上にプリスカートだったりチューブトップにホットパンツを組み合わせたりして、中々大胆だ。

 だが、肌が多くて目のやり場に困る。

 そのあとは抑えめになった。

 白い長袖シャツに青のジャンパースカートだったりベアトップのワンピースだったり、比較的ダイナの好みの組み合わせが続く。


「……」


 好みが続いて心穏やかになったが、徐々に得体の知れない恐怖がこみ上げてくる。

 自分の好みを押しつけてしまっているのでは無いか、という罪悪感が湧いてきたが、アイリが選ぶ度に喜んで着てくれるところを見ると薄まっていった。

 そして自分色に染めていくという快感が徐々に沸き立ちダイナも大胆により自分の好みを剥き出しにする。

 しかし、同時にとんでもない領域、自分の性癖を暴露してしまってるのでは、という恐怖に逆に自分自身に首輪を嵌められていくような気分に、ダイナはなる。


 止めようと思っても


「ありがとう」


 と最後にアイリは笑みを浮かべるので断れない。が、どうも怖い。


「ねえ、今度はあっちにどう」

「あっち?」


 と見つめてダイナは固まった。

 アニメや漫画のキャラクターが着る所謂コスプレと呼ばれるジャンルだ。

 さすがに普段から着るモノではないが、楽しみとして着ることが流行っており、おしゃれな店の一角にも進出している。

 しかも品揃えが良い上に、一切、差別無し、きわどい品まで揃っている。


「ねえ、どれが言い」


 アイリが綺麗でありながら悪魔のような声で尋ねてきた。

 ダイナは答えなかったが欲望が視線を勝手に動かし、一部の服に目を向ける。


「じゃあ、アレ着てみるね」


 めざとく視線を追っていたアイリが目についた衣装を手に取り試着室に入る。


「ちょっ」


 止めようとしても既になから似ぬズレの音がする。

 カーテンをめくりあげる事など出来ない。

 かといって、欲望と期待感からその場から去ることも出来なかった。


「じゃーん」


 出てきたのはバニーさんだった。

 黒のベアトップのハイレグ衣装に黒タイツ。

 スタイルの良いアイリのラインを余すことなく妖艶に引き出している。

 しかも、ダイナの性癖にぶっささる膝まであるロングブーツに黒いロンググローブ。

 幾多ある衣装の中からあめざとくアイリがダイナの視線を追って見つけて来ただけに破壊力は抜群で、ダイナは暫し釘付けだった。

 ほんの一分くらいのハズだが数時間くらい見つめていたようにダイナは感じた。

 そして周りがひそひそ話す声が聞こえた。

 これまで押さえていた羞恥心がこみ上げてきたダイナは言った。


「決めた服をレジで買ってくる」


 そのままアイリを置いてレジに向かってしまった。


「……ちょっとやり過ぎちゃったかな」


 さすがに自分でもやり過ぎだと思ったが、ダイナが喜んでいるのを見ると歯止めが掛からなかった。

 ちなみにこの衣装はどうしようかと思ったが、ダイナが好きそうなので密かに別のレジで購入し自宅配送してもらった。

 そのあと、ダイナと合流し手ぶら名アイリを見てホッとしたところで今日は終わりにした。

 さすがにダイナが気疲れしてこれ以上デートなど無理だからだ。

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