水中移動
ゴブリンの巣穴に向かうことを決めたダイナは準備を始める。
救命キットから男性用ゴム製品を取り出す。
「いっ」
思わぬものが出てきて麻衣は顔を赤くする。
「ちょっと」
袋から製品を取り出したダイナに声を上げようとしたが、ダイナはそれを銃口にかぶせた。
「あんまり効かないかもしれないけど、ないよりマシだな」
「何しているの」
「銃口の防水、水が入ると撃てなかったり危ないから」
淡々と言って準備をするダイナを見て顔を赤らめて自分が恥ずかしくなった。
顔の赤みの意味が変わりつつある麻衣を尻目にダイナは準備を進める。
「持ってて」
ダイナはジップロックを取り出すと口を開き麻衣に渡す。
そこへホルスターから自動拳銃を取り出していれた。
「重っ」
スターウォー○のハ○・ソロが使ったレーザー銃に似ている拳銃をジップロックに入れて厳重に口を閉じる。
「先に潜るから。あとから来て、それを渡して」
「って、ここに潜るの」
「他に通路はない」
「で、でも」
「友達、助けたくないの?」
「……分かった!」
麻衣は覚悟を決めた。
ダイナがその様子を見て先に水たまりに入り潜り込む。
予想通り、通路があり先に続いていた。
短い通路の先にもう一つ水面があり、そこへ小銃を前にゆっくりと顔を上げる。
素早く周囲を確認する。
周りはゴブリンがいた。
「ぎゃあっ」
斧を振りかぶってきたが小銃の引き金を引いて撃ち倒す。
しかし、横にもう一匹いて攻撃してきたため頭を水中へ引っ込める。
そしてポーチから手榴弾を取り出すと安全ピンを外し水面から手だけを出して放り投げる。
四秒後、爆発が起き、直後にダイナは浮かび上がる。
「かはっ、ちょっと、爆弾を使って大丈夫なの、げへっ」
ダイナに続いて浮かんできた麻衣が咳き込みながらダイナに文句を言う。
沙紀を爆発に巻き込んだのではないかと思ったからだ。
「大丈夫だ。周りに人質はいなかった」
浮上したときに素早く周囲を確認してゴブリンのみだったのを確認していた。
手榴弾を使っても問題は無いと分かっていたのだ。
「早く銃を」
「う、うん」
麻衣はジップロックをダイナに渡した。
素早く拳銃を取り出すと爆発から立て直ったゴブリンが襲撃してきた。
そこへダイナは拳銃を向け至近距離から銃撃する。
銃口を突きつけるようにゴブリンを狙い、引き金を引いて倒していく。
「数が多い」
辟易していると背後の水面が揺れて、中から人影が出てきた。
「大丈夫か麻衣!」
「草加!」
麻衣と一緒に入った仲間だった。
「加勢に来たぜ!」
多少お調子者なところのある子供っぽい奴だが、麻衣に気があり、麻衣が飛び出したあと追いかけてきた。
「ゴブリン共! こいつでも喰らえ!」
草加は持ってきた拳銃を取り出した。
近くの戦場となった藪の中で見つけて隠し持っていたのだ。今回の探索に念のため持ってきたが、先ほどは混乱して使えなかった。
だが、持っているのを思い出し、少しでも役に立とうと思って持ってきた。
「死ねっ」
草加は両手で拳銃を構えゴブリンに銃口を向け引き金に手を掛ける。
「止せ!」
銃を構えた草加にダイナは叫んだ。
しかし、草加は制止を無視して引き金を引いた。
パアンッ
発砲よりも激しい音が響く。
「ぎゃあああああっっっっ」
草加の拳銃が暴発し吹き飛び破片が周囲に飛び散る。
銃口の中に水が入っていたため、設計想定以上の圧力が銃身にかかり耐えきれず暴発したのだ。
「クソッ」
ダイナは吐き捨てると、拳銃のマガジンを一〇連装から二〇連装に交換。
銃を横に倒して右に向ける。
「おりゃああっっっ!」
反動で銃身が上にぶれ続け、右から左へ弾がばらまかれ、ゴブリン達は怯む。
最後にスタングレネードを奥へ放り投げた。
「目を閉じて耳を塞げ!」
ダイナが言った直後、爆発が起きた。
爆発が収まるとダイナはすぐに小銃の槓桿を動かし薬室を開けると銃身を下に向け息を吹きかける。
銃身から水が出たのを確認すると銃弾を装填して構える。
先ほどのスタングレネードでうずくまっているゴブリンをレーザーポインターで狙いを付け引き金を引いた。
暴発はなく、銃弾は飛び出しゴブリンを倒す。
警戒しつつ拳銃のマガジンを元の十連装に戻しホルスターに仕舞い、その他装備に異常がないか確認すると奥へ行こうとする。
だが、目の前に思わぬ相手が現れた。
「さ、沙紀……」
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