ダイナ 駆けつける
「炸裂を確認」
先ほど投げた音響閃光弾、スタングレネードが爆発したのを確認するとダイナは、脇の水たまりに手榴弾を放り投げた。爆発前に麻衣達の元へ向かって前進。
十分近づくと、射線上にゴブリンしかいないことを確認。先端のレーザポインタを作動させドットをゴブリンに合わせ愛銃である二〇式改二の引き金を引く。
「ぎゃっ」
二、三連射してゴブリンを数体倒した。
ボンッ
先ほどの手榴弾が爆発した。
「後方異常なし」
ダイナの後ろに付いてきたアイリが言う。
「数体倒した。後は接近戦で仕留める。援護を」
ある程度数を減らしたところでダイナは突進し光と音で混乱したゴブリンに銃剣を突き立てる。
「がはっ」
銃剣の勢いに押されて壁にゴブリンを叩き付けるとダイナは引き金を引いてゴブリンを仕留めた。
その後もはぐれているゴブリンをドットを合わせて銃で撃ち殺し、人に近いゴブリンは刺し殺す。
これをゴブリンが全滅するまで続けた。
「クリア!」
「クリア!」
沢田達を襲っていたゴブリンを全て倒すとダイナは周囲を確認する。
「彼らを助ける。アイリは後方の安全確保を」
「分かった」
そして、ようやく麻衣達の元へ近づいた。
剥ぎ取られたマスクを付け、呼吸を安定させると話しかける。
「大丈夫か?」
「え、ええ」
話しかけられて麻衣は答えるとようやく助かったという実感から安堵した。
同時に安心感から自分が服をビリビリに破かれ半裸の状態の上に、漏らしていることを思い出し羞恥で顔を赤くする。
服の無事な部分を両手で引き寄せ、何とか隠そうとするが無駄だった。
肉付きの酔い彼女の身体は両手で隠そうとしてもこぼれてしまう。
「仲間は、ここにいるので全員か?」
ダイナは視線をそらし尋ねる。
「そ、そうよ。怪我をしているの助けて」
アイリが縋るように言うと、ダイナは周りを見渡す。
そして、動けるが怪我をしている者に薬とガーゼ、テープを渡す。
終わると動かず床に倒れている仲間の一人、沢田の近くに駆け寄る。だがすぐに離れ別の仲間の元へ行く。
「うっ」
悲鳴を上げた男子がいた。
素早く怪我の状態をダイナは確認する。
「脚を刺されているが、命に別状はなさそうだ」
だが、傷は深くえぐれていた。
「おい」
「な、なに?」
ダイナはアイリに尋ねた。
「タンポンを持っているか?」
「え? ……なっ」
意味が分からず、聞き返しようやく単語の意味を理解してアイリは顔を真っ赤に染める。
「何でそんなものが必要なのよ!」
生理前で念のために持っている。
だが、初対面の人間に持っているか聞かれるのは、凄く恥ずかしい。
しかし、ダイナは真剣だった。
「傷が深い。傷の奥まで止血する必要がある。傷口に突っ込むことの出来るタンポンは最適なんだ。止血剤も含まれているからより効果的だ。あるんなら出してくれ」
「わ、わかったわ」
麻衣はバッグから出すとダイナに手渡した。
ダイナは箱ごと受け取ると包装をビリビリに破いてタンポンを出すとそのまま傷口に突っ込んだ。
「あうっ」
「痛いだろうが我慢してくれ」
傷具にタンポンを入れられ激痛で暴れる男子を押さえつつダイナは処置を済ませる。
「よし、とりあえずの処置は終わった。増援ももうすぐ来るからそれまで待機だな」
「急に連絡してきて天の目を使って高校生達を探してくれと言われたときは何事かと思ったわよ」
「急な頼みをして悪いと思っているよ」
「別に、こうして彼らが助かったんだから良いけど」
他愛のないやりとりをするダイナとアイリをみてとりあえず助かったことを実感した麻衣は安堵する。
だが周囲を見渡して、恐ろしい事に気が付いた。
「さ、沙紀は、沙紀はどこにいるの?」
「誰だ?」
「私と一緒に入ってきた友達よ。私より前にいたんだけど」
「女子は見る限り、ここには君だけだ」
「ゴブリンに連れ去られたようね」
アイリが口元を引きつらせる。
ゴブリンが女性を連れ去っていく理由など一つしかない。
「巣穴に連れ込んだみたいだな」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます