ダンジョン探索
沢田達は入口にやってきたゴブリンを全て倒し、網をどけた。
中から新たなゴブリンが出てこないのを確かめて、中に入る準備をする。
ガスマスクを装着し、ヘッドライトを頭に取り付け、それぞれの武器を持つ。
「よし、行こうぜ」
準備が整うと沢田は先頭に立ってダンジョンへ 入る。
麻衣も先ほど倒したゴブリンから流れる血に怯えながらもダンジョンへ踏み込んでいった。
男子は沢田を含めて四人、女子は麻衣と沙紀という女子の二人、合計六人だ。
女子二人を真ん中にして前後を守るように進む。
全員、沢田が持ってきたガスマスクを付けている。
通路内には塩素ガスが充満しているハズだが、ガスマスクのおかげで刺激臭は嗅がずに済んだ。
霧吹きで水を噴霧しながら彼らは奥へ進む。
「結構効いているようだな」
投げ込んだ洗剤と漂白剤のボトルより先にゴブリンの死体が数体あった。
沢田の言うとおり、塩素ガスが効いているようだ。
「ちっ、ろくなものがねえ」
ゴブリンの死体を沢田が漁った。
ドロップ品が目的とはいえ、死体を漁ることに麻衣は嫌悪感を抱いた。
「沢田。死体を漁って平気なの?」
「何言ってんだよ。ゴブリン退治に来たんだろう。ドロップ品を目当てにするのは当然だし記念品が欲しいだろう。俺たちの勲章を手に入れないとな」
だが、今回の計画者であり一番の功労者である沢田は自分の偉業の証、記念になる様なものを手に入れようと躍起だった。
「もっと奥に良い物がありそうだ」
沢田は更に奥へ行こうとする。
「大丈夫なの?」
不安になった麻衣が聞いた。
「ゴブリンの生き残りがいるかもしれないのに」
「大丈夫さ。皆ガスでお陀仏さ。それに塩素ガスは空気より重いからな。下に行くほど高濃度で効き目バッチシだ」
自信満々に言う沢田は更に地下へ向かって行く。
彼の言うとおり、塩素ガスは空気より重く、下っていくにつれて濃度が濃くなっていくように感じる。
同時に重苦しい感じがして一同の足取りは重たくなる。
「何かあるぞ!」
ヘッドライトの明かりに何かが光った。
沢田は急いで光った場所へ駆け寄る。
「待てよ沢田!」
仲間の制止も聞かず、沢田は一人で走って行き、探す。
「何だ、小汚い水たまりか」
沢田が見つけたのは石に囲まれた水たまりだった。水湧いているのか周囲の床が濡れていた。
「げえっ、変な虫がいる」
水面に浮かんでいたダニやノミを見つけて沢田は仰け反る。
それを聞いた仲間も水たまりを避ける。
「ねえ、帰らない?」
麻衣は沢田に話しかける。
先ほどの事もショックだったし、ダンジョンの中に入ると気が滅入る。
ガスマスクで息苦しく、生理前のこともあり、気分が悪かった。
「おい、何を言ってんだよ」
沢田が呆れたように言う。
「まだ奥まで行っていないだろうが。ドロップ品もないし」
「でも」
「そんなに嫌なら帰ればいいだろう。俺は奥へ行くぜ。どうせモンスターなんて皆ガスでくたばっているから安全だしな」
沢田はずんずんと奥へ歩いて行く。
その様子を見た他の仲間も沙紀も興奮して沢田の後に付いていく。
「ま、待ってよ」
一人取り残された麻衣は仕方なく追いかけていった。
「畜生! 行き止まりだ! このダンジョンは外れみたいだ。何にもねえや」
先を進んでいた沢田が落胆した声で嘆く。
色々と伝手を伝って準備したのに、ドロップ品はゴブリンの死体だけ。
モンスター駆除の報奨金が出るが、最初にゴブリンを派手に殺したので、もっと記念になる様なドロップ品が欲しかった。
それだけに何もないのを残念がる。
ビチャッ
「ひっ!」
突然後ろから物音がして麻衣は恐怖から悲鳴を上げた。
「どうした!」
麻衣の悲鳴に驚いた仲間が振り返る。
「う、後ろから物音が」
恐怖で振り返れない麻衣が後ろを指して言う。
前にいた沢田が仲間をかき分けて麻衣の後ろにやって来ると歩いてきたばかりの通路を見る。ヘッドライトで足りないと感じると懐中電灯で奥まで照らす。
何もなかった。
「……へっ! 脅かしやがって」
芝居がかった言い方で沢田は言う。
「ここは俺たちがガスを充満させて仕留めたんだ。生き残っているモンスターなんていねえよ。怖がりすぎなんだよ麻衣」
少しビビったためはぐらかすように、そしてビビらせた仕返しに沢田は麻衣をなじる。
「で、でも、何か音がしたのは本当だもん」
「おい、麻衣」
苛立たしいとばかりに顔を歪めた沢田は麻衣を見て言う。
「ここは塩素ガスを充満させたんだ。毒があってモンスターもゴブリンも全滅だ。動いている奴なんているわけないだろう。あ、むしろ、俺たちの手柄を横取りする奴が入ってくるかもしれねえ。その前に先に全部見回ろう」
「で、でも」
「おい、ここでちんたらしている暇はないぞ。居ないモンスターに怯えるなんてビビりすぎ」
沢田は麻衣を嘲笑った。
そして、突如後ろから、闇から現れたゴブリンに後ろから背中を刺された。
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