村上の目的
「なっ……」
再びの爆発に山本達は驚く。
爆発から生き残ったゴブリンも驚いて、入り口の方向を見る。すると数発の銃弾が飛び込んできて一発が眉間を貫きゴブリンを絶命させた。
「へ?」
頭部を撃ち抜かれたゴブリンに山本が驚いていると、更に銃撃があり、ゴブリンは次々と倒れていく。
「おめえら本当に使えねえなあ」
ゴブリンが倒され銃声が止んだ後、人の声が響いた。
人を馬鹿にするような声だったが、聞き覚えのある声が入り口からゴブリンの群れの向こうから響いた。
「む、村上!」
声の主は死んだ佐脇を通じて山本達をダンジョンに案内し、武器を提供した村上だった。
「来るのが遅えぞ!」
生き残った山本は、村上に悪態を吐く。
「まったく馬鹿を使うと余計な手間だ」
だが、村上は見下したような視線を山本に向け、出会ったときの慇懃さが幻と思えるほどの見下した口調で悪態を放った。
「まあ、予定通りモンスター駆除の手間は省けたか」
死んだ不良の遺体を楽しそうに村上は蹴り上げた。
蹴った瞬間、いたぶったことに対する歓喜で爛々と輝く村上の目を見て、山本達は震え上がった。
「……手間って何だよ。それより、俺たちを助けろ」
「うるせえ」
「ぎゃあっ」
文句が耳障りに感じた村上は銃口を向けて悪態を放った不良を躊躇いなく撃った。
「もう少し、進むか思ったんだが、やっぱ出来損ないの馬鹿だな。結局ガキ共なんて囮程度しか役に立たねえ」
「……どういうことなんだ」
恐怖に震えながらも山本は村上に尋ねた。
「これだけ言ってわかんねえのか、バーカ」
小馬鹿にしたような口調で村上は説明する。
「いいか、アホ共。ダンジョンは、一攫千金のお宝の山だ。だが、お前らのような馬鹿が銃を持った程度で攻略出来るような場所じゃねえんだ。訓練された兵隊でも死人が出るほど危険で過酷な場所なんだ。部隊で攻略しなきゃならないくらい大変なんだ。わかるか」
ダンジョンは狭く入り組んでいる上、枝分かれしている。
全容を把握し、無力化するには十数人から数十人必要とされている。
「そんな人数簡単には集まらないし、集まったら山分けで取り分は少ない。そこでだ、俺が目を付けたのが、お前らのようなダンジョンの事を知らない外の馬鹿だ」
鼻高々に村上は、教えてやるとばかりに傲慢な態度と口調で、倒れる不良仲間に言う。
「ダンジョンが儲かるって話しておけば、金の欲しいお前らはほいほい来るだろう。武器も渡すと聞いたら、何の疑問を抱かない馬鹿をな。自分たちだけの秘密だ、と言えばより興奮するし、誰にも言わずホイホイとくるだろう」
クフフフッ、と嘲笑い話を続ける。
「まあ、そんな奴らにダンジョン攻略なんて無理だ。だが、入っていけばモンスター達をおびき寄せることぐらいは出来る」
モンスターはダンジョンを守る為に生まれた。そのため侵入者に集まる傾向がある。
「そこを一網打尽だ。相打ちくらいは出来ると期待していたんだが思ったよりも出来損ないで無理だったがな」
期待した俺が馬鹿だった、と村上は小声で呟き付け加えた。
「まあ、これだけゴブリンが集まったんだ。ダンジョンの中は掃除されただろう。あとはダンジョンコアを回収して戻るだけだ」
「てめえ……」
利用された怒りで山本は村上を撃ち殺そうとしたが、怪我のために指を動かす事も出来なかった。
「おっと、後始末がまだだった」
村上は死んだ不良が持っていた銃を手にすると山本に向けた。
「な、何をするんだ」
「生きていたら困るんだよ。死んだダンジョンに入ったら、間抜けな外の高校生が、観光気分で入っていた」
「何だよそれ、ちげえだろうが」
「こういう筋書きなんだ。しかも中に放置してあった武器で遊んだあげく、ゴブリンに襲撃され同士討ちも行って全員死んだ、ということにする。ダンジョンコアは闇に売りさばけば良い。上手くいけば表より高い値段で売れるかもしれない。つまり俺一人が丸儲けだ」
得意げに村上はこの後の事を言う。
「俺らを騙したのか!」
「ようやく気づいたかバーカ。まあ、これから死ぬお前達には、どうでも良い話だ」
村上は山本達に銃を向けた
「こ、殺さないでくれ! 絶対に言わない……がはっ」
助けてくれと懇願する不良に村上は銃を撃った。
「てめえらの事を信用していねえ。世の中舐め腐った糞ガキである、お前らは口が軽い。外に出れば話すだろう。なら話せないように殺してしておくのが一番だ。モンスターが始末してくれると思ったが、生き残りやがって。こちらの思い通り死んどけ、余計な手間をかけるな。じゃあ、そろそろ、さよならだ」
村上は山本の頭に銃口を突きつけ、トリガーを引こうとした。
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