不躾な元同級生
「あれ? 木戸じゃねえ?」
アイリが差し出したパフェをダイナが食べようとしたとき、喫茶店に入ってきた金髪に染めたダイナと同じ年頃の少年が口出しする。
ダイナは自分の名字を呼ばれて振り返ると、少年の顔と記憶が一致すると無表情になり、顔を逸らした。
「やっぱ木戸じゃねえか。顔を背けるんじゃねえよ」
顔を品のない角度で歪め、笑い声を上げながら近寄ってくる。
少年は長身だが、がに股で言葉遣いが悪い、人を嘲るような口調のためチンピラに見える。
馴れ馴れしい、いや、不躾な態度でダイナとアイリに近づくと品定めするような視線を二人に浴びせて言う。
「戦争で死んだって聞いていたけど生きてたんだな」
ダイナは不登校気味で、治療を兼ねてソロで各地を歩き回ったり山登りをしていた。
戦争勃発時たまたまゲート近くを訪れたため戦争に巻き込まれ、戦う事になった。
地元にも伝わっていたようで、激戦だったこと、ダイナが地元に戻らなかった事もあり、死んだとされていた。
「死んでたら面白かったのに」
人の死を面白がっている。いや、少年はダイナを人とは思っていない。
遊び道具、サンドバックくらいにしか思っていない。
ダイナは面白い反応をする遊び道具で壊れても構わない。むしろ壊れたら面白い、程度にしか考えていない。
「女と一緒にいるなんて生意気だな」
アイリを見て少年は嘲笑うように言う。
「お前のような陰気な奴に付き合ってくれる女なんているわけないだろう。なあ、あんた。こいつより俺たちと付き合わない? こいつより楽しく過ごせるぜ」
固まったまま、だが拳を強く握りしめるダイナの頭をバンバンと叩きながら少年は言う。
「止めなさい」
アイリが笑みを浮かべて、いや凍り付かせて押し殺したような声で言う。
「そうだな。木戸なんかと関わっているとつまらねえよな。あんたも俺と一緒に来ないか」
「失礼な人と一緒にいきたくないから結構」
「ああ、名前を言っていなかったな。俺は山本って言うんだ。中学でこいつ、木戸を遊んでやっていたんだ。ここには遊びに来たんだ。なあ、俺たちと一緒に来ないか。ダンジョンとかもぐったり金も稼げるから楽しいぜ」
「いいえ、私はダイナ、いえ木戸大成君と一緒にいる方が良いの」
「おいおい、こんなつまらない奴に気を遣わなくても良いんだぜ。俺たちとダンジョンに来なよ。ああ、木戸も来て良いぜ荷物持ちとしてな」
「お断りだ」
ハッキリとした声でダイナは断った。
「ダンジョンが怖いのか?」
「ああ、怖いね。だから行きたくない」
見下すような視線を山本に向けながらダイナは言い返した。
「けへへへっ、相変わらず臆病だぜこいつ」
山本はダイナを見下すように嘲笑う。
「なあ、こんな臆病者、放っておいて、俺たちと来いよ。こいつより気を利かせるぜ」
「気を利かせているのは私達の方よ。失礼な奴に怒らずにいるんだから」
「……けっ! すかした女だ」
せっかく誘ったのにアイリに断られたことを逆恨みして山本は吐き捨てる。
それでも気が収まらないので、振られた腹いせにアイリに向かって悪口を言い始める。
「顔が良いのに木戸と同類か、もったいねえ。いや、案外ぼっちでオタサーの姫なのか。見てくれ良くても中身はブスってか、がはっ!」
次の瞬間、山本の顔にダイナのストレートが入った。
「アイリの悪口を言うな」
ダイナは山本を睨み付けて言った。
自分の事を言われるのは、構わない。
未だに山本達に虐められたときのことを思い出してダイナは身体が竦む。
だがアイリのことを悪く言われたのは、自分を庇ってくれたアイリを悪く言うのは許せず怒りのあまり山本を殴った。
「山本!」
殴られた山本は吹き飛び仲間の中に飛ばされ仲間が受け止める。
戦争中、武器がないとき、人型のモンスターと近接戦闘になった時に備えて格闘術を名字の上官、顔が悪く強引で粗忽で口の悪い人間のくずだったが、人情深くんどうみ通い上に強い隊長から七二時間連続のブートキャンプで叩き込まれたおかげで一般人を、同世代の高校生を吹き飛ばすくらいには強い。
「テメエ! やりやがったな!」
だが山本はダイナが殴ってきたことに怒った。
格下認定していたダイナが殴ってきたことに、抵抗せず殴られるのが役目のハズのダイナが刃向かい殴られるなど、山本には恥でしかなく、制裁して当然だった。
山本にとってダイナは遊び道具。嘲ったり殴ったりして遊び面白い反応をして自分たちを笑わせる玩具。反撃して殴り返すなど、あってはならない行為、いや故障だった。
山本はダイナを殴り飛ばそうと拳を振り上げる。
仲間も、ダイナの態度を見て修正、殴って大人しくしようと襲いかかる。彼らも山本と同じだ。
いや山本が殴られた事を見て、面白いイベントが発生した程度にしか見ていない。一緒に袋だたきにした上、このことで山本を笑いのネタにしようとしていた。
その前にダイナを弄って、殴って大人しくさせようとする。
彼らが迫ってくるのを見たアイリとダイナは、護身用、万が一モンスターが現れたとき、自衛できるよう拳銃に手をかけた。
喫茶店に銃声が響いた。
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