ふるまい
ドラゴンが倒れても警戒してダイナ達は、はじめ物陰からは出なかった。
だが、ドラゴンが動かない、出血で床に泉を作っていた滝が止まっても動こうとしないのを見て彼らはようやく動き出した。
それでも再び動くことを想定し銃を構え、警戒する。
数分経っても、ドラゴンは動かない。
そこで、ようやくドラゴンを倒せたと確信した。
「……yes!」
誰からか歓声が上がり、ホールの中に木霊した。
仲間が死んだ悲しみを越えるためにも、彼らは大袈裟に歓喜を爆発させた。
「ありがとう、少年!」
フォースリーコンの隊長はダイナと強く握手をする。
苦戦をしていたフォースリーコンだったが、流石に身体は鍛えられており握力が強く、ダイナは痛みで悲鳴を上げた。
それを観た後、フォースリーコンの隊員達が次々と感謝の言葉を浴びせ、感動のハグを行う。
「全く、こういうときアメリカ人はスキンシップが激しい」
作戦後の打ち上げなどで彼らの手洗い喜びに付き合わせたダイナは苦笑する。
当然、アイリにも感謝のアクションを行っているが、ダイナほど大袈裟ではなく、もみくちゃにされる事は無かった。
「さてとダンジョンコアを回収するか」
ダイナはドラゴンが守っていた扉を開けダンジョンの中心部、ダンジョンコアを回収する。
フォースリーコンの隊長が全てを回収すると言っていたが、
「保管するには必要な機材が必要だ。またドラゴン級のモンスターが出る可能性もある。魔タダ得てきたとき、対処できるか?」
実際はダンジョンから外せばまず安心で、置いておいたら勝手にダンジョンを作り出してもその構築速度は微々たるものだ。
ダンジョンコアを確保するための方便だがフォースリーコンは信じ、ダイナ達に預けた。
「コアの所有権は我々にある」
「それについては日本政府と交渉してくれ、あと攻略した分の取り分はしっかり貰うよ」
ダンジョンから得られる利益は攻略した冒険者に与えられる。
ドロップ品は倒した者に。
攻略、ダンジョンコアを手に入れたら手に入れた冒険者達に与えられる。
複数のパーティーで攻略すれば等分される。
だが、彼らはダンジョンのルールを無視して保有権を主張している。
こういうときは、新門市に作られた仲裁所で仲裁される。
まあ、ダイナの取り分をアメリカ側が払って、保有権を完全に手に入れるのが妥当なところだし、ダイナも文句はない。
だが、フォースリーコンの連中は不満のようだ。
「さて、細かい話は後にして食事にしようか」
不満を燻らせているフォースリーコンの連中から離れダイナはドラゴンへ向かうと、肉を切り刻み始めた。
「おい、勝手に採っていく気か」
「<ふるまい>だ。問題ない」
「<ふるまい>?」
「ああ、こうした大物は確かに分配交渉で揉める。だけど終わった後、すぐに報酬がないのはキツい。そこで一割ほどはその場で皆に公平に切り分けて分配するんだ」
戦った労いと分配交渉までの繋ぎとして渡される。
「ダンジョンのの文化か?」
「いいや、異世界だ」
モンスター相手の戦いは異世界の方が多く、後々しこりが残らないよう、こうしたルールが多い。
その点では日本も冒険者達もルールがないため、異世界のルールを適用することで解決した。
そして今も冒険者の間で、適用され続けている。
「ほい、あんたらの分」
ダイナはマチェットで切り分け、フォースリーコンに渡した。
「良かったら食事にしないか? 作るけど?」
「……ご馳走になろう」
気が抜けたのか気怠そうに隊長は言った。
岩で簡単なかまどを作り、ボロ布にドラゴンが吐いた燃料を染み込ませ、火をおこす。
その上にシャベルを置き、熱くなると水をかけて綺麗にする。
色々と使ったし、消毒は必要だ。
再びシャベルを火の上に載せ、熱くなるとドラゴンの脂身を乗せて脂を敷く。
その上に厚切りにしたドラゴンの肉を載せる。
ジュージューと良い肉音が響き香りが、ホールに広がる。
右手を挙げて気取ったポーズで塩胡椒を振りかける。
焼き目の付き方を真剣に見つめ、頃合いと見ると焼いた肉を引き上げた。
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