ドラゴンとの死闘
「うわあああっっっ」
ブレスの直撃を受けた兵士が火達磨になり、駆け回る。
「泉に入れ!」
ダイナは叫ぶがパニックを起こした兵士は暴れ回るだけだた。
やがて気管も熱で火傷し、爛れて塞いでしまい呼吸が止まり倒れた。
「くそっ!」
倒れたのを見て最早手が施せないことをダイナは悟った。
「ぐおおおおおおおっっっっ」
煙の中からドラゴンが現れた。
命中した場所は燻っているが、大きな傷を負ったようには見えなかった。
「どうして対戦車ロケットを受けて無事なんだ」
「鱗を立てて身体との間に隙間を作ったんだ」
混乱するフォースリーコンの隊長にダイナは説明する。
「逆立てた鱗に命中させて早期に爆発させる。爆風、メタルジェットを他の鱗で逸らして身体への直撃を防いだんだ。戦車の中空装甲と同じだ」
「まさか」
「やっているんだよ。鱗自体もタングステンみたいな金属を使った殻みたいな構造で強度があり装甲板みたいに堅い。おかげで痛い目を見たよ」
新門戦争では対戦車ロケットを何発も撃ち込んでも倒せず、ダイナ達は大きな犠牲を払った。
ドラゴンはそれだけ賢く手強い。
そのドラゴンが、ダイナの方を見た。
「離れろ!」
ダイナは口を開けるドラゴンに向かって飛び出した。
「ダイナ!」
アイリが叫ぶが走るのを止めず手元からポンチョを取り出すと広げた。
ドラゴンはやってくるダイナに向かってブレスを放つ。
「うぐっ」
ドラゴンのブレスはビームなどではない。
体内で餌を発酵させたりして作り出した可燃性の燃料を放ち、牙にある生体電気を使った発火器官で着火し、炎の塊を浴びせるのだ。
ダイナは広げたポンチョで燃料がかかるのを遅らせた。
いずれ熱で溶けるが、時間は稼げる。
そのままドラゴンに接近しグレネードのトリガーを握ったままドラゴンへ向けて放つ。
「うおりゃ!」
至近距離からグレネードを発砲しても勿論爆発はしない。
だが、鼻先への突然強烈な打撃を受け、ドラゴンは驚き、ブレスをやめ顔を逸らす。
「ちっ!」
思ったより打撃を与えられず、ダイナは舌打ちする。
発砲の際にブレスを浴びてダイナの身体が燃え始めたにも関わらずだ。
「ダイナ!」
アイリが叫ぶ中、ダイナは泉に向かって駆け出す。
息はしない。
身体の周りの炎が息と共に吸い込まれ肺を焼かれるのが怖い。
だが人間は息を吐ききった状態でも十秒は動けるし、て三〇秒は活動できる。
ダイナは走りきり泉に入って炎を消した。
「ぷはっ」
「大丈夫! ダイナ」
「あのクソトカゲ。良い物くれたな」
火を消して泉から出てきたダイナ。
心配したアイリは声をかけるが悪態しか返ってこない。
「怪我はない」
「今のところ大丈夫。燃料の燃えかすでベトベトだ。」
日を浴びたのは短時間だったし、すぐに消せた。
ただタール状の燃料が衣服にこびりついている。
その間にドラゴンはダイナの方へ視線を向ける。
自分を傷つけようとしたダイナを許すまいとブレスで攻撃しようとした。
「三〇秒、引きつけてくれ」
燃料でベトベトになったダイナは柱の陰へ向かう。
ブレス攻撃を受けるが、柱が盾になってくれたおかげで無事だ。
「左右に分かれ銃撃をして! 遮蔽物でブレスを防いで!」
アイリは言われたとおりフォースリーコンに指示を出す。
最初は戸惑っていたが、自ら小銃を構えドラゴンを攻撃するアイリにフォースリーコンは従った。
ダイナを攻撃しようとしたドラゴンは銃撃を加える兵士達に顔を向ける。
「隠れて!」
ブレスがやってくる前に銃撃を止めさせ、隠れさせる。
適切な指示のおかげでブレスを食らっても殆どが無事だった。
その隙にアイリは反対側へ駆け抜け、そこにいた兵士に命じる。
「ドラゴンを引きつけて!」
再び銃を放ちながら命令する。
味方にブレスを放つドラゴンへ銃弾を浴びせ、気を引きつける。
ドラゴンはブレスを中断し、銃撃を加えてくる方向へ首を向ける。
「今度はこっち」
再び反対側へ駆け抜け、ブレスの残炎が燻る中、アイリは銃撃を加え、牽制する。
これを繰り返し、ドラゴンを引きつける事に成功した。
「終わった! 隠れろ!」
きっかり三〇秒後、ダイナは用意していたモノを作り上げ、ドラゴンに投げた。
C4爆弾を取り出し信管を付けると予備の靴下に入れる。
その靴下に先ほどドラゴンが浴びせてきた燃料を塗りたぐり、準備完了。
爆弾の入った先端を重しに靴下の口を掴んでグルグルと回し勢いを付けて、ドラゴンの頭に投げる。
投石器の要領で投げられた靴下は目論見通りドラゴンの側頭部に命中した。
銃撃に気を取られていたドラゴンは避けられず当てられた。
始めは気にしなかったが、べとつく感じが不愉快で振り落とそうとしたが、燃料でベトベトのため剥がれない。
爪で落とそうとしたとき、中の爆弾が爆発した。
「よし! 成功!」
映画に出てきた対戦車兵器を再現したのだ。ドラゴンを仕留めたように戦車に磔吹き飛ばす応急兵器を応用したのだ。
新門戦争の時もこれでドラゴンを何匹か仕留めている。
流石に一発だけだと威力が足りない。
だが、頭なら強烈な衝撃で脳震盪を起こす。
ドラゴンは強烈な衝撃を受け床に倒れ込んだ。
「ロケット弾だ!」
すかさずダイナが叫ぶと兵士達は残りのロケット弾をドラゴンに放った。
気絶して鱗が寝ていたこともあり、命中した瞬間メタルジェットがドラゴンの身体を貫き、ようやく仕留めた。
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