ダンジョンのルール
「もうっ! いつも勝手なんだから!」
出発したフォースリーコンが見えなくなった後、綺麗な髪をかきむしりながらアイリが叫ぶ
思いやり予算とか渡しているが、門が開いてからアメリカの傍若無人ぶりは激しくなった。
モンスターは危険だ、同盟国日本を守るのために参戦するといって新門戦争に介入した。だが、勝手に国内でドンパチする、自衛隊には何も知らされず独自に作戦を進める。
戦争が終わった後もダンジョンの掃討とか言って勝手に軍事行動を行い度々、トラブルを起こす。
その度に自衛隊は後始末に追われており、アイリも奔走させられてるだけに余計にイライラするのだろう。
「放っといて帰りましょう」
米軍に好感を抱いていないアイリはダイナを促し帰ろうとする。
「追いかけないか?」
だがダイナはフォースリーコンを追いかけようとした。
「別に構わないでしょう。どうなろうがそれは冒険者の自己責任よ」
ダンジョンの中は究極の自己責任だ。
冒険者は自由、行くか戻るかを決める自由がある。
危険だと判断して戻るのは別に恥ではない。
ミスをして帰ってこれないのは、そいつらの判断ミス、自分の技量に合わない冒険をした結末だ。
「経験なしにドラゴン相手は危険だ」
フォースリーコンは威力偵察、通常の偵察のみでなく戦闘を行い相手の武器の数や対応を見て情報を収集する。
対応できる相手のみに戦闘を仕掛けるが、彼らも戦闘のプロだし、艦砲射撃や空爆を要請する権限がある。
だが、ダンジョン内では外部からの支援は無理だ。
いくらシールズ並みの特殊訓練を受けているとはいえ、モンスターへの対処訓練などしていないはず。ドラゴン相手だと対応をミスして負けてしまうだろう。
「多少の手助けはするべきだ」
ダンジョンに潜ると危険が多い。
だから万が一の危険に陥ったとき冒険者達は互いに支え合うことを暗黙の了解としている。例え素人でも手助け出来る範囲で手助けをする。
ダイナは特に強く思っていた。
「それに万が一ドラゴンが外に出て行ったら」
「あー、連中が外に出して仕舞う可能性があるか」
冒険者がちょっかいを出してモンスターが外に出てしまったという事例は多い。
そのたびに自衛隊が出動し後始末をする。
民間人への被害も多いし、避難で損害が増える事も多い。
「行きましょう。被害を防がないと。けど、援護だけ。危なくなったらすぐに離脱」
「それでいい」
ダイナは喜んだ。
ダンジョンの中は自己責任だが、冒険者同士できる限り助け合う、自分が対応できる範囲で助けるのがルールだ。
お節介はしたくないし、死にたくないが、見逃していくのは居心地が悪い。
二人は装備を確認するとフォースリーコンのあとを追いかけた。
「ドラゴンの方へ向かっているわね」
バイザーを下ろし、サーマル探知――赤外線探知装置で通路の床に残る足跡の熱を辿ってたアイリが言う。
予想通り、彼らはドラゴンの方へ向かっている。
「時間の問題だな」
ドラゴンとの戦闘を覚悟してグリップを握りしめる。
やがて前方から銃声が響いた。
「急ごう」
先ほどの通路から大広間の中を見る。
「Fire! Fire!」
大広間では各所に展開したフォースリーコンがドラゴンに向かって小銃を放っている。
だが、効いていない。
金属で出来た固い鱗を持つドラゴンは小銃などはじき返せる。
グレネードも撃っていたが爆発しても効いていない。
「撤退しろ!」
戦況不利と見てダイナは叫ぶが、彼らの動きは鈍い。
「ダイナ!」
突如アイリがダイナを押した。それまでダイナがいた空間を剣が切り払う。
「竜牙兵か!」
いつの間にか追尾されていたのに、フォースリーコンに気を取られて後ろを疎かにした。
咄嗟にグレネードを直撃させて、バラバラにするが、押し出されてドラゴンの広間に入った。
その上に、トラップが作動し扉が閉ざされた。
「こりゃ、ドラゴンを倒すしかないか」
「そうね」
ピンチに陥った二人だったが、何処か、弾んだ調子で言う。
「ロケットを放て!」
その時、フォースリーコンが装備しているM72対戦車ロケットを取り出した。
背嚢から引き抜き、安全ピンを外し、後ろの筒を伸ばすと上部に付いた照準器が立ち上がる。
M72を持った兵士は左右に展開しドラゴンに向かって構えて、狙いを定めると発射レバーを押した。
二人が同時に発射し、左右から挟み込むようにドラゴンに向かって飛んでいく。
二発ともドラゴンに命中し大爆発を起こし、炎と煙が広がり、ドラゴンを隠す。
「やったか!」
フォースリーコンの隊長が言った瞬間、煙の中から炎の柱が、ドラゴンブレスが飛び出してきた。
ドラゴンブレスはロケット弾を放った兵士に直撃し、彼らを火達磨にした。
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