竜牙兵
ダイナとアイリの唇同士が触れようとしたとき、元来た道から銃声が響いた。
「なに?」
互いの唇が触れようとしたとき、元来た道から銃声が響いた。
「誰か、何処かの入ってくる予定は?」
「聞いていないわ」
ダンジョン内での同士討ちを避けるため、入る部隊は必ず一つ。二つ以上の部隊が入る場合は、必ず連絡がある。
「東部方面隊が入る予定なんてないはず」
「いや、違う自衛隊じゃない。この音はM16、M4あたりだ」
アメリカ軍が使う自動小銃で、日本だと漫画の主人公スナイパーが使う銃として有名でありAK47に並ぶ名銃だ。
M4は、M16の短縮型で銃床を伸縮できるなど狭いところで使える。そのため特殊部隊などが使っている。
「本物の米軍だろう」
入り口に簡単な警報器を仕掛けておいたが、素人が鳴らさずに解除出来るモノではない。解除したのなら訓練を受けている。
そんなの訓練を積んだ正規軍ぐらいだ。
別の入り口があってそこから入ったのかもしれないが、今のところ入り口は一つであり他から入ったとは考えられない。
「結構、練度が良いな」
練度が良い奴と悪い奴では銃の撃ち方が違う。
素人だったり慣れていない、腹が据わっていない奴は引き金を引きまくり、やたらめったら撃つ。
だが、上手い奴、実戦経験がある兵士は、弾薬不足を避けるため、無駄打ちを避ける。
弾幕を張るときも間隔を開け、同じ弾数でも長時間牽制できるようにしている。
物量豊富な米軍でも歴戦の部隊なら似たような撃ち方をする。
新門戦争で味方が信頼に足るか、弾薬不足で後退しないか、見定めるために身につけたダイナ達のスキルだ。
「合流する」
「うん」
同士討ちしてこないと判断。大成は合流しようとしアイリも賛成する。
グレネードの爆発音も響いてきた。
M203――グレネード付きのM16系統を持っているとは装備が良い。
暫く走ると前の方からマズルフラッシュ――銃口から放たれる発砲炎で周囲が照らされる空間が見えてきた。
そこにモンスターがいた。
「スケルトン?」
「いや、竜牙兵だ!」
竜牙兵、ドラゴン・トゥース・ウォーリアーとも呼ばれる龍の牙から作られるモンスターだ。
一見スケルトンだが、強度も強さも倍くらい違う。
見慣れていないとスケルトンと侮り、取り返しの付かない事態になることが多い。
実際、銃撃を浴びせるも効いていない
「援護する!」
ダイナは叫ぶと、竜牙兵に向かって射撃を行い米軍の援護を始める。
攻撃していた竜牙兵は突如撃ってきたダイナの方へ振り返る。
ダイナとアイリは息を合わせ、竜牙兵の骨盤を同時に狙って撃つ。
一発では倒せないなら二発。
戦争の時は、十字砲火による弾幕射撃や重機関銃で仕留めたが、ない時は分隊ごとに単一目標へ集中砲火を浴びせた。
少人数、バディの時は同一目標へ同時に撃った。
ダイナはアイリとバディを組み、戦争中は息を合わせ同時に命中させていた。
時間が経過してもタイミングが変わっていないことにダイナは安堵した。
「We're friendly!」
米軍と想定したアイリが発音の良い英語で叫ぶ。
相手の聞き慣れた言葉で話しかけておいた方が、理解されやすい。
特に恐怖で混乱する戦場では。
案の定、入ってきていたのは米軍の兵士で一瞬、銃をダイナに向けかけたが、アイリの英語で引き金は引かれなかった。
ざっと周囲を見渡し状況を確認する。
前後から挟み撃ちにされたようだ。
「gaddem!」
奥で一人、竜牙兵に馬乗りにされていた。
振り下ろされる剣をM4小銃で受け止めるが、力が強く銃はたたき壊される。
ジャケットの防弾機能で剣で貫かれなかったが、竜牙兵は彼の顔に剣を突き立てようとする。
仲間が援護しようとするが、近すぎて撃てない。
銃床で叩くが竜牙兵は堅く、壊れない。
「おらっ」
そこへダイナは駆け寄ると小銃の下に付いているグレネードを竜牙兵に押しつけ、引き金を引いた。
通常ならグレネードは命中すると爆発するが、安全装置があり二五メートル以上飛ばないと爆発しない。
だが、勢いは強く、当たったら頭蓋骨が陥没するくらいの打撃だ。
グレネードを受けた竜牙兵は吹き飛び、兵士から離されバラバラになった。
「はあっ」
助け出すと背中から折りたたみ式のシャベルを取り出し竜牙兵に叩き込む。
銃剣術でも良いのだが、竜牙兵相手だと小銃が壊される可能性があり、手近な鈍器としてシャベルで叩き潰す。
「やあっ」
シャベルの歯を竜牙兵の骨の隙間に入り込ませ無理矢理切断する。
グラインダーと焼き入れ、研ぎで作った即席の刃が点けられており、竜牙兵を切断した。
その後もダイナは竜牙兵を一体残らず叩き潰した。
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