スケルトン

「で? 目的のダンジョンは遠いの?」


 ヘリを降りた後、山道を歩きながらダイナがアイリに尋ねた。


「近いわよ。というか、ここよ」


 目の前は何の変哲もない斜面だ。


「出来たばかりなのか?」


 ダンジョンの出入り口は偽装されていることが多い。

 コアは十分な魔力が高まり自衛出来るようになるまで、隠すからだ。


「いいえ、報告にあったとおり、大規模よ」


 だが、一定以上の規模になると周りから集められる魔力の限度が来るため、新たな供給源、人間が必要になるため出入り口を作り出す。

 出入り口が分かるダンジョンは既に規模が大きくなっていると考えて良い。

 特に作りが凝っていたり、大きい出入り口だと規模も大きいと考えた方が良い。


「見つけた部隊がマジックアイテムで出入り口を隠しておいたわ」


 アイリは、手元から魔方陣が書かれた札状のマジックアイテムを取り出し、呪文を唱え隠蔽を解除した。

 魔方陣が輝き札から光が溢れ、目の前の景色を歪ませると、人工的な構造物が現れる。


「これは凄いな」


 目的のダンジョンの入口を見たダイナは感嘆した。

 山の斜面の一角に出来た出入り口はかなり大きく装飾も立派だ。


「よく、これまで見つからなかったな」

「ええ、何故か被害が無かったから」


 モンスターが外に出てきてもおかしくない規模だと思った。だが、考えても仕方ないので入って調査することにする。

 二人はダンジョンに入ると、すぐに床にワイヤーのアラームと警告の札を立てる。

 冒険者が同時に入ることを避けるためだ。

 互いにモンスターと誤解して誤射するのを防ぐためだ。

 ダイナが準備を行っている間、アイリはマジックアイテムを使って出入り口を隠す。


「さあ、行きましょうか」


 全ての準備が終わるとアイリは楽しそうに言った。

 ダンジョンの中はコアごとに特色がある。

 どんなドロップ品が出るか、モンスターが出るかはコア次第だ。


「またスケルトンだ」


 ダイナは小銃を構えながら、後ろで警戒するアイリに言うや腰骨あたりに狙いを定め連射する。

 人間でも腰の動きが重要とされる。重心に近く全ての動きの基本になるからだ。

 スケルトンも同じで、腰の部分が重要、そして他の骨に比べて大きく狙いやすい。

 二発も命中させると文字通り腰砕けになり、バラバラになって崩れ落ちる。

 五体をそれぞれ連射して倒した


「ローディング!」


 ダイナが叫ぶとアイリが前に出て射撃を行う。

 その間にダイナは後ろを警戒しつつマガジンを交換する。

 二〇発入るマガジンだが、フルで入れるとバネがヘタって弾が供給されず装填不良を起こし撃てなくなるので二発抜いた一八発しか入れていない。

 マガジンに弾は余っているが、弾切れを起こしたくないのでマガジンに弾が残った状態で交換する。

 ここは個人の好みの問題だ。

 だが、マガジンは使い捨てにせず、左太もものケースに放り込んで持ち帰る。

 後方を監視しつつ手元を見ずに予備のマガジンを取り出し素早く、装填。

 本体のストッパーがマガジンをロックする振動がマガジンを通じて手に伝わるのを感じて装填出来た事を確認する。


「ローディング・コンプリート!」

「ローディング!」


 手早くダイナが交換するとアイリもローディングを宣言し、ダイナが前に出て射撃する。


「キリが無い。グレネードを撃つ」

「OK」


 アイリの返事を聞いて、ダイナは小銃の下に付いたグレネードの引き金を引き、迫ってくるスケルトンの先頭に向かって放った。

 ほぼ直線で飛んでいった四〇ミリグレネードはスケルトンに命中し爆発。周囲のスケルトンも巻き込んだ。


「あー、やっぱりあんまり効かないな」


 ゴブリンだとグレネードの破片などが刺さりある程度負傷させる事が出来るが、骨だけのスケルトンだと破片や爆風がすり抜ける事が多く効果は低い。

 だが、爆風でよろめかせる事は出来た。

 動きが鈍っているところに銃撃で狙いを定める。

 だが、三体ほど残った。


「弾が勿体ない。叩いて仕留める」


 言うやいなやダイナはスケルトンに向かって突撃する。

 スケルトンが剣を振り上げ、ダイナに向かって振り下ろす。

 だがダイナは銃剣を突き出し剣に触れると小銃を回転させ、軌道を逸らす。

 同時に前に出てきた銃床をスケルトンの頭蓋骨に向かって体重を乗せ叩き付ける。

 スケルトンの骨は硬いが打撃に弱い。銃床で叩けば粉々に崩れる。

 ダイナが勢いを付けて叩き付けるとスケルトンは、頭蓋骨を吹き飛ばされ倒れた。


「もういっちょ」


 近くに居たスケルトンも身体を回転させて勢いを付けて、銃床で叩いて倒した。

 だが、一体が残っていてダイナに向かって剣を振り下ろした。


「はっ」


 すかさずアイリが駆け寄り下から銃床を突き出してスケルトンを後ろの壁に吹き飛ばす。

 ただ、体重が軽いためか、威力がなくスケルトンは崩れなかった。

 アイリは素早く小銃を構えると連射を加えスケルトンを倒した。


「一寸油断しすぎよ」

「そうだね。少し数が多いかな」


 たしなめたアイリだがダイナの言葉に同意する。

 入ってから、スケルトンの襲撃が相次ぎ、疲労が溜まった。

 それに間もなく夕食の時間だ。


「休憩にしよう。何か食べるか」

「そうしましょう。わたし、サンドウィッチ作ってきたから」

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