第07話 筋骨隆々のオニヤンマ

或るシンガーソングライターは言ったそうだ。

「だまされんじゃねえぞ!」

彼は演奏者と激しく密着したり、オーディエンスに大合唱を強要したりして

感染領域を演出してしまった。

その上でコロナに感染して、さも政府がでっち上げた嘘の病気みたいな匂わせ方で

「だまされんじゃねえぞ!」

と、睨みを利かせて一喝する。

僕は彼のにわかファンだったから、知人にDVDを借りて

ライヴの中で彼が激しく密着、全員で大合唱……そう言う光景を

飽きる程、目撃してしまっている。

ファンにとっては神様のような演出かも知れないが

僕だったらあんなライヴに行きたいなんて思わない。

あんなライヴと失礼な泥を塗ったが、

総合演出プロデューサーとしての腕も買われていた彼は

コロナ以前、コロナ以後の演出の組み立て方を

何故、大幅に変更しなかったのだろう?

そして、何故、全国各地のオーディエンスは

そんな危険なライヴのリピーターになり得るのだろう?


僕だってAdoさんのチケットが取れたら

アクセスがし易い開催地だったら

人混みにまみれても、歌姫のライヴを堪能するかも知れない。

しかし、知ってしまった

「だまされんじゃねえぞ!」

発言から一転、そう言う危険な外出は、

どんなに条件が整っても敬遠すると思う。「祭りのあと」と言う言葉が示す哀愁。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る