第06話 倍率3,000の猛威

「あの有名な宝塚歌劇団をもじっています」という公表は、いかにも野暮だが

「歌劇」に対して「過激」を持ってこらざるを得なかったことは理解して欲しい。

どうせもじっちゃったんだから中学生らしい健全な「過激」で在りたいと思う。

総監督の石風呂先生も、その辺は重々心得ていることだろう。

妖艶なメロディーに合わせて男子の筋肉質な脚を

チャイナドレスのスリットからチラリズムとか

伝統的な唱歌をパンク・ロックにアレンジとか

客を煽りまくり全校生徒巻き込んで大合唱とか

「とかとか」言っておりますが、前例を踏襲することがあればあるほど引き出しは増える。

茶化ラ塚は、僕達が第1期生だけど、末永く続く文化であって欲しい。

橙色組の2年D組は、読売ジャイアンツのようにオレンジのタオルをブンブン回す

応援パフォーマンスを採り入れたり

ジャイアンツカラーのブラックとオレンジを互いに差し色として使用したり

公演によっては、吹奏楽部とのコラボレーションで

アルプススタンド風にミュージカルを盛り上げる作戦を立てたり

オレンジ=読売ジャイアンツと言う一つのきっかけから

自由発想で、出し物の引き出しを無尽蔵に増やして行こうと言う試み。

ORANGE RANGEが歌いたい選抜隊も存在するので

そこら辺も自由裁量でやって行けたら。

基本的にはテーマに沿いながら「過激」にはみ出す。

そんな性的衝動のようながエナジーが男子女子を突き動かし

見たことのないパフォーマンスを展開して行く。


茶化ラ塚「過激」団は大いに盛り上がっていたが、

長州地区蒲郡坪郷にもコロナウィルスの魔の手が。

総監督の石風呂先生が、まさかの陽性反応=病に倒れたので

濃厚接触の可能性がある人物は全員PCR検査を受けることに。


そう言えばミュージカルの中の演出で、

石風呂先生を胴上げしていたクラスがあったっけ?

※彼女は女教師です。念のため。

はい、選抜全員PCR検査。


そう言えば音楽室の空調の関係で、

閉め切った空間での吹奏楽部の練習風景。

顧問兼任の石風呂先生は、飛沫を飛ばして熱血指導!

はい、部員全員PCR検査。


石風呂先生は蒲郡坪郷の音楽の要(=かなめ)故に、

濃厚接触はある程度予測が立つから

被害最小で助かった。

※それでも選抜と部員は濃厚接触確定!

真っ直ぐ家に帰るタイプの教師故に

近所のラーメン屋で、居酒屋で

クラスターを巻き起こした履歴は残されていない。


コロナの苦しみは、コロナに罹患した者にしかわからないので

感染する迄、危機管理が薄くて当然と書けば無責任だが

我が身のこととして受け留め辛い。

24時間単位の感染者数がわずか1名だった時もあった蒲郡坪郷にとって

3,000人規模で毎日感染者が増えている現状は

3,000倍の脅威が街を呑み込もうとしている。

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