第03話 AKITA INU
ゲーム的なブーストに頼らなくても
美幸ちゃんの可愛らしさを引き立てるような使役を目指してもいいと思った。
※ブースト=この場合は能力を高めることを指す。
音響機器のブーストは、音量のことであり、音量の調整=ブーストの調整に当たる
コスプレ・ゲーム会は、僕的には大成功で、美幸ちゃんのミュミュ・コスプレは
見事な位、萌え萌えな完成度だった。
盛り上げ役の、ネコもハルチも見事なコスプレで舌を巻いた。
僕も勇者コスプレすることが判っていたなら
掃除機の部品を剣に見立てることなんてしなかっただろうに。
一週間後、中学生達に戦慄が走る事件が起こった。
警察学校の警察犬が飼育されていた小屋の一部が破損して、そこから二頭逃げ出したと言う。象とかライオンのレベル比では無いが、躾が施されているとは言え、ドーベルマンはめちゃくちゃ怖かった。今、さらりとドーベルマンで片づけようとしたけど、もう一頭は秋田犬らしい。犬種が割れていると言うことは、内部情報が漏れているか、目撃情報があったのだろう。
現実逃避すれば、美幸ちゃんは聖魔法使いミュミュなので、空のルートで行き帰りすれば、ドーベルマンにも秋田犬にも遭う心配が無い。現実直視すれば、僕達は通学路が別々で、互いに自転車通学でも無かったので、僕は勇気を出して、美幸ちゃんのボディーガードに立候補した。
「青3号と銀牙だっけ? 早くお家に帰れるといいね」
「そうだけど、今は二人の身の安全に気を配ろ? 噛まれたら、多分、痛いと思うんだ」
「TVとかで観るよね。分厚い座布団みたいなの、一度噛んだら放さないってやつ」
(ひええ……。生腕だったら、どうなっちまうんだ?)
「恐くなんて無いよ、恐くなんて……」
「ふふっ、そうなの? あ、あれ、秋田犬っぽく無い?」
「ええ、そんな、まさかあ!……って、マジやん! あれは秋田犬だあ!」
台詞のボリュームが大きかったせいか、のしのし、こちらに近づいて来る銀牙。
急いで美幸ちゃんを高台に移動させたが、僕は学生ズボンの裾を噛まれてしまい、かなり執拗にぶんぶん引き摺り回された。そこが致命傷にはならなかったが、最後のグイグイでバランスを崩した僕は、河川の手擦りに後頭部をぶつけて、TKO!
近所のなぎの木クリニックに受診して、少し縫うほどの痛手を負ってしまった。
美幸ちゃんの話では、秋田犬の銀牙は、無事、捕獲されて、二度と通学路に現れることは無いと断言出来るらしい。
それにしても、警察犬の片割れである、ドーベルマンの青3号は、今、いずこ?
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