最終話 いつまでも一輝は彼女に敵わない

 そして、ベッドの直ぐ傍に歩いて来た一輝は、ベッドの上に仰向けに寝転がっている綾香の事を見て、


「えっと、綾香さん、僕はどうすれば……」


 少し緊張した様でそう質問をすると、


「一輝くんの好きな様にして下さい、私は一輝くんの彼女なんですから、一輝くんのやりたい事は全部私が受け止めて上げます」


 綾香は妖艶な笑みを浮かべてそんな事を言ったので。


「綾香さん……分かりました」


 そう返事をすると一輝は精一杯の勇気を振り絞り、ベッドに寝転んでいる綾香の上にゆっくりと覆いかぶさり彼女の顔を正面から見つめた。そして、


「……綾香さん、キスをしても良いですか?」


 かなり緊張した様子で一輝がそう質問をすると。


「ええ、勿論良いですよ」


 天使の様な微笑みを浮かべて綾香はそう返事をしたので。


「えっと、それじゃあ、失礼します」


 そう言うと、一輝はゆっくりと自分の顔を綾香の顔へと近づけて行った。そして、


「……ん」


「ん」


 それからゆっくりと二人の唇が重なり数秒間2人は静かにキスをしていたのだが、その後直ぐに一輝の口元は綾香の唇から離れた。すると、


「……これだけですか?」


 少し不満そうな様子で綾香がそんな事を言ったので。


「この後もっと激しい事をする予定なのに今から全力で行くと僕の体力が持ちませんよ」


 苦笑いを浮かべながら一輝がそう言うと。


「ふふ、それもそうですね、それで一輝くん、次は何をしたいですか?」


 綾香は納得した様子でそう言ったのだが。


「えっと、その前に綾香さん、一つ質問をしても良いですか?」


 一輝は綾香に向けてそう言うと。


「ええ、良いですよ、何ですか一輝くん?」


 綾香は優しい笑顔を浮かべてそう言ったので、一輝は一呼吸置いてから。


「その、綾香さんの初めての相手は本当に僕なんかで良いんですか? 今の僕ならギリギリですが止める事も出来ますよ」


 一輝は最後の確認を込めてそう質問をした。すると、


「……そんな事ですか」


 綾香は何でもない様子でそう言った後。


「勿論私の初めての相手は一輝くんが良いですよ、私が家族以外でここまで好きになったのは一輝くんだけですし、一輝くんとなら将来を共にしても良いと私は本気でそう思っていますから」


 綾香はそう言うと、そんな一輝の不安を優しく振り払って上げるように自分の右手で一輝の頬を優しく撫でた。


 そして、そんな言葉を聞いた一輝は、


「……分かりました、僕も覚悟を決めました、綾香さん、僕の気持ちを全部受け止めて下さい!!」


 精一杯の思いを込めて一輝がそう言うと。


「ええ、勿論です」


 綾香はそう言って、再び2人の唇が今度は激しく重なった……






 その後、数時間たって2人は少し荒い呼吸をしながら並んでベッドの上に寝転んでいた。そして、


「……もう一輝くん、普段は大人しいのにさっきの一輝くんは色々と激しすぎますよ」


 自分の胸元を隠す様に布団を深く被りながら、綾香は頬を真っ赤に染めてそんな事を言って、それに釣られて一輝も恥ずかしくなって綾香から顔を逸らしながら。


「仕方が無いじゃないですか、綾香さんが色々と魅力的すぎて理性が全く持たなかったんです」


 一輝が正直にそう答えると。


「もう、私のせいだって言うんですか?」


 少し拗ねた口調で綾香がそんな事を言ったので。


「あっ、いえ、そういう意味で行ったのでは!?」


 一輝が慌ててそう言うと、綾香はクスクスと笑いながら。


「もう、一輝くん慌てすぎです、今更そんな事で私は怒りませんよ」


 綾香は笑顔を浮かべてそんな事を言ったので。


「そうですか、ありがとうございます、綾香さん、でも、すみません」


 一輝がそう言うと。


「何がですか?」


 綾香はそんな事を聞いて来たので。


「その、恥ずかしい話ですが、さっきの事で僕は予想以上に体力を使ってしまって体が殆ど動かないんです、なので申し訳ありませんが、暫くの間このままベッドの上で横になっていても良いですか?」


 一輝が綾香に向けてそう言うと。


「ええ、良いですよ、と言いますか、私も一輝くんと同じで暫く動けそうにありませんから……あっ、そうです!!」


 綾香は何かを思いついた様子でそう言ってから。


「その一輝くんさえよかったら、今日は家に泊まって行きませんか?」


 綾香は唐突にそんな提案をして来たので。


「えっ、それは一体どうしてですか?」


 一輝が少し驚いてそう質問をすると。


「今の一輝くんは随分疲れているので、もしこのまま自転車で帰る事になったら途中で倒れて事故を起こしてしまうかもしれません、それに今日は私の両親もコタロウも帰って来ないので、私は家で一人寂しく過ごす事になるんです」


 そこまで言うと、綾香は一度言葉を切ってから。


「だから一輝くん、よかったら今晩は家に泊まりませんか? 晩御飯も私が用意してあげますし……その、一輝くんさえ良かったらさっきの続きをしても良いですよ?」


 綾香は頬を赤く染めながらそう言った。


 そして、思春期真只中の一輝が超絶美少女の綾香にそんな事を言われたら断るという選択肢など取れる筈もなく。


「……分かりました、それなら綾香さん今夜はよろしくお願いします」


 彼女の甘い誘惑には全く抗えず、一輝が素直にそう言うと。


「ふふ、分かりました、あの、一輝くん」


「何ですか? 綾香さん」


 一輝がそう質問をすると、綾香は妖艶な笑みを浮かべて。


「一輝くんには色々言いましたが、どうやら私は意外とそういう欲求が強いみたいなんです、なので申し訳ありませんが、今日は一晩私の相手をお願いします」


 綾香は頬を真っ赤に染めてそんな事を言った。


 そして、そんな綾香の姿に一輝は思わず見惚れてしまい、自分なんかじゃこの先一生彼女には敵わないだろうなと心の中で強くそう思ったが。


 可愛くて料理上手でちょっぴりエロい、そんな彼女の掌の上で転がされている、こんな今の生活は自分にとってはこれ以上にない幸福だと、一輝は今の生活にとても満足していた。









 最後までこの物語を読んでくれてありがとうございます、良かったら評価や感想等、よろしくお願いします。

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