第128話 妖艶な微笑み

 その後、二人は食事を終えると。


「ご馳走様でした、それと綾香さん、わざわざ昼ご飯を作って貰ってありがとうございました、凄く美味しかったです!!」


 一輝が笑顔でそう言うと。


「ふふ、こちらこそありがとうございます、まさかお代わりまで全部食べて貰えるとは思っていませんでした、プールで遊んだ後なのでいつもよりお腹が空いていたのですか?」


 綾香も笑顔でお礼を言った後、一輝にそんな事を聞いて来たので。


「それもありますが、それでも僕は割と小食なんで普段はここまでの量は食べません、でも、綾香さんの手料理は別格に美味しいのでいつも以上に食が進むんです」


 一輝が正直にそう答えると。


「もう、一輝くんは本当に大袈裟ですよ、私の料理の腕なんてお母さんと比べたらまだまだですから、でも、大好きな一輝くんにそう言って貰えたら私は凄く嬉しいです」


 綾香は照れ臭そうに微笑みながらそう言ったので。


「……そうですか」


 一輝は綾香から顔を逸らしてそう言った。


 もう付き合って4ヶ月も経つので大好きなんていう言葉は電話越しで何度も言われているので、一輝はとっくに慣れたと思っていたのだが。


 それでも照れた微笑みを浮かべながら目の前でそんな事を言われると想像以上の破壊力があり、一輝も何だか照れ臭くなってしまい、綾香の表情が見られなくなってしまった。


 ただ、今の妙に甘酸っぱい雰囲気のまま2人きりで居る訳にもいかないと一輝は思ったので。


「それにしても綾香さんのご両親は何処まで行っているんでしょうか? ただの買い物なら直ぐに帰って来ると思っていたのですが」


 場の空気を変えようと綾香から視線を逸らしたまま一輝がそう呟くと。


「あっ、一輝くん、その事なのですが、多分私の両親は夜まで帰って来ないと思います」


 綾香は唐突にそんな事を言ったので。


「あっ、そうなんですか……えっ」


 そう言って、一輝が綾香の方を見ると。


「実は今日は私のお母さんの誕生日で、毎年この日はお母さんはお父さんと二人でデートに行っているんです、それで今日は私も一輝くんとのデートだったのでコタロウを一人で残しているのも可愛そうだったので、コタロウも今日は施設に預けていて家には居ませんよ」


 綾香はそう言うと、今まで一輝が見たこともない様な妖艶な微笑みを浮かべた。

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