第122話 ウォータースライダー
そして、綾香の指先にあるウォータースライダーを見た一輝は、
「ウォータースライダーですか、良いですね、僕も一回くらいはやってみたいと思っていました」
正直にそう答えた。すると、
「そうですか、それなら良かったです、それじゃあ早速二人で挑戦しましょう!!」
綾香は嬉しそうな声でそう言うと、そのまま一輝の手を握ってプールの壁際まで歩いて行った。
その後、二人はウォータースライダーの上へと登ると。
「えっと、綾香さんどっちから滑りますか?」
一輝は綾香に向けてそう質問をしたのだが。
「えっ、何を言っているんですか、一輝くん?」
綾香はそんな事を言った。そして、
「私たちは恋人同士なんですから、二人で一緒に滑る方がいいですよ!!」
綾香は嬉しそうな声でそう言ったので。
「えっ、二人ですか……」
一輝はそう言って、何と答えるべきか悩んだが。
「……ええ、分かりました、それで大丈夫です」
一輝は覚悟を決めてそう答えた。すると、
「そうですか、ありがとうございます、一輝くん」
綾香は笑顔を浮かべてそう言った。しかし、その後直ぐに綾香は頬を赤く染めると。
「えっと、それじゃあ一輝くん、一輝くんは前と後ろどっちが良いですか?」
綾香はそんな事を聞いて来たので。
「えっと、どういう事ですか?」
一輝がそう聞き返すと。
「えっと、つまりですね、私を後ろから一輝くんが抱き締めて滑るか、それとも私が一輝くんに抱き着いて滑るのかどっちが良いのかという事です」
綾香は頬を赤く染めたまま上目遣いで一輝の事を見つめながらそんな事を聞いて来た。そして、
「えっ、あっ、そうですね……」
そんな綾香の顔を見た一輝は自分の心臓の鼓動が早くなり熱が出た時の様に頭が熱くなって行くのを感じたが。
「……えっと、それなら僕が綾香さんの事を抱き締めて滑りたいです」
数秒経って一輝が少しだけ声を小さくしてそう答えると。
「えっ、あっ、その、そうですか……」
その言葉を聞いた綾香は少し下を向いてそう呟いたので。
「えっ、あっ、その……もしかして嫌でしたか?」
その言葉を聞いた一輝は少し不安そうな口調でそう言ったが。
「あっ、いえ、決してそういう訳ではないんです、ただ」
「ただ、何ですか?」
一輝がそう聞き返すと。
「その、一輝くんなら多分私に抱き着いて欲しいと言うと思っていたので、そんな風に言われて少し驚いたんです」
綾香は正直にそう言ったので、それを聞いた一輝は、
「確かに綾香さんの言葉を最初聞いた時、僕は綾香さんに抱き着いて貰おうかと思いました、でも、今日は綾香さんに積極的に接して欲しいと言われたのにそれは違うと思ったんです、それに」
「それに何ですか?」
綾香がそう聞き返すと、一輝は綾香の目をしっかりと見て。
「僕はいつまでも綾香さんにリードされ続けるだけの情けない男では居たくないです!! だから、僕は綾香さんの彼氏として今から綾香さんの事をしっかりと抱き締めてウォータースライダーを滑りたいと思います!!」
一輝は力強くそう言った。そして、その言葉を聞いた綾香は下を向くと、
「……そうですかそれなら一輝くん、私はここに座るので、私の事を離さない様に強く私を抱き締めて下さい」
ウォータースライダーの入り口に座って綾香はそう言ったので。
「……ええ、分かりました」
その言葉を聞いた一輝は短くそう答えると、ゆっくりと彼女の背後へと向かって行った。
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