第118話 お約束の展開

 そして、その言葉を聞いた一輝は、


「積極的に接するですか?」


 綾香に向けてそう質問をすると。


「ええ、そうです、一輝くんが消極的な性格なのは私もよく分かっていましたしそれは仕方がないと思っていましたが、私も女の子なので出来れば彼氏である一輝くんには私の事をもっと積極的にリードして欲しいなと、少しだけそう思っていたんです」


 綾香は初めて一輝に対してそんな不満を口にしたので。


「えっと、それに関しては本当にすみません」


 一輝は正直にそう言って謝ると。


「謝らなくても良いですよ、私はいつもの優しい一輝くんも好きですから、でも、折角の機会なので今日はいつもより積極的な一輝くんも見てみたいです!!」


 綾香はそんな事を言ったので、一輝は数秒間考えてから。


「……そうですか、分かりました、正直あまり自信はありませんが、それが綾香さんの頼みなら叶えてみせます!!」


 一輝がそう答えると。


「ええ、よろしくお願いします、一輝くん!!」


 綾香は嬉しそうに微笑んでそう言った。そして、


「えっと、それでは一輝くん、そろそろ気分も落ち着いたと思うので、私たちもプールデートを始めませんか?」


 綾香がそう言ったので。


「ええ、そうですね……あっ、そうだ、綾香さん」


「はい、何ですか?」


 綾香がそう聞いて来たので、一輝は今度は目を逸らさずに綾香の水着姿をしっかりと見つめた。すると、


「えっ、あの、一輝くん、そんなに真剣な表情で見つめられると私はちょっとだけ恥ずかしいです」


 綾香は少しだけ頬を赤く染めて、そんな事を言ったのだが。


「……ぐっ!!」


 そんな彼女のいじらしい反応を見て、一輝も割と大きいダメージを負ったのだが、綾香から積極的に接して欲しいと言われたので、一輝は何とか目を逸らさず彼女の水着姿を見つめ続けた。そして、


「えっと、その、綾香さん、その水着とても似合っていますよ」


 最終的に何とかそんな言葉を口にした。すると、


「……もう一輝くん、言うのが遅いですよ、でも、ありがとうございます」


 綾香は少し不満そうな表情をしていたが、それでも笑顔を浮かべてそう言った。そして、


「それで一輝くん、私たちは何をして遊びますか?」


 綾香がそんな事を聞いて来たので。


「えっ、僕が決めるんですか?」


 一輝がそう答えると。


「ええ、そうです、今日の一輝くんは私には積極的に接してくれるらしいので、今日の予定はなるべく一輝くんが決めて下さい」


 綾香は笑顔でそう言ったので。


「あっ、えっと、そうですね……」


 そう言って一輝は何をするべきか考えたが、特に面白いアイディアは浮かばなかったので。


「えっと、取りあえず二人で少し泳ぎましょうか」


 一輝がそう提案をすると。


「ええ、分かりました!!」


 綾香は笑顔でそう返事をしたので。


「それでは早速泳ぎましょうか」


 一輝はそう言って、プールに入ろうとしたのだが。


「あっ、一輝くん待って下さい」


 綾香がそう言って引き留めたので。


「えっ、綾香さん、何ですか?」


 一輝が振り返ってそう返事をすると。


「プールに入る前に大事な事を一つ忘れていますよ?」


 綾香がそんな事を言ったので。


「大事な事ですか? あっ、もしかして準備運動ですか?」


 一輝はそう言ったのだが。


「確かにそれも大事な事ですが違います、寧ろこれはプールデートをするのに必要な事だと思います」


 綾香はそんな事を言ったので、一輝は改めて考えたのだが。


「えっと、すみません綾香さん、色々考えてみましたが僕には何の事か分かりません」


 準備運動以外の事は浮かばず一輝が正直にそう答えると。


「そうですか、こういうのは一輝くんの好きなアニメやライトノベルではよくある話だと思うのですが、ここまで言われても一輝くんは何も思いつきませんか?」


 綾香はそんな事を言った。そして、その言葉を聞いた一輝は色々なアニメの水着回を思い浮かべてみたのだが、その後直ぐに。


「えっ、あの、もしかして……」


 一つだけ思い浮かぶことがあり、もしかしてと思ってそう呟くと。


「顔を赤くしてそんな反応をするなんて、一輝くんは本当にエッチなんですね、でも、そんな反応をするという事は一輝くんの思っている事は多分当たっています」


 綾香はそう言うと、どこからともなく一つの容器を取り出した。そして、


「一輝くん、私の代わりに日焼け止めを塗って下さい!!」


 綾香も顔を赤くしつつもそう言って、一輝に日焼け止めが入っている容器を手渡して来た。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る