第117話 お詫びと彼女の提案

 その後、プールの前に体育座りで一輝と綾香の二人は並んで座ると。


「えっと……それで綾香さん、話というのは一体なんですか?」


 一輝はそんな疑問を綾香にぶつけたのだが。


「あっ、いえ、私は特に話したい事があるわけではないんです」


 綾香はそんな事を言ったので。


「えっ、そうなんですか?」


 一輝は少し驚いてそう質問をすると。


「ええ、そうなんです」


 綾香は笑顔を浮かべて一輝の方を観てそう言ったので、一輝は水着姿の綾香から少しだけ目を逸らしつつ。


「えっと、それならどうして僕と話をしようと言ったんですか?」


 綾香に向けてそう質問をすると。


「今のままプールに入ると、一輝くんが危ないと思ったんです」


 綾香はそんな事を言ったので、


「えっ、危ないって何がですか?」


 一輝がそう質問をすると。


「だって一輝くんは今色々と気持ちが高まってしまっていて、このままプールに入ったら足をもつれさせてプールで溺れてしまいそうでしたから、それなら、少し私と雑談をして気分が落ち着いてからプールに入った方が良いと思ったんです」


 そう言うと、綾香は一輝の方を観て優しく微笑んだので。


「……綾香さん、ありがとうございます」


 一輝がそうお礼を言うと。


「いえ、気にしないで下さい、一輝くんとこうしてお話をしているだけでも私は楽しいですから」


 綾香は笑顔を浮かべてそう言ったので。


「……そうですか」


 その言葉を聞いた一輝は恥ずかしくなって綾香から目を逸らした。そして、


「……あの、綾香さん」


「はい、何ですか?」


 綾香がそう答えると。


「……その、いつもこんな情けない姿を見せてしまって本当にすみません」


 一輝が少しだけ視線を下に向けてそう言うと。


「もう、急にどうしたんですか、一輝くん」


 綾香は何でもない様にそう言ったので。


「だって、僕はいつも大切な時にヘタレてしまって、今回だって綾香さんが水着姿を見せてくれたのに何も言えずに逃げてしまって本当にすみません」


 一輝は下を向いたまま綾香に向けて謝った。すると、いつもの彼女なら、


「それくらい気にしないで下さい」


 そんな風に一輝の事を励ましていたのだが。


「……それに関しては、私は少しだけ、いえ、私は結構傷つきました」


 綾香はそんな予想外の言葉を口にしたので。


「えっ!?」


 一輝はそう言って、思わず顔を上げて綾香の方を見ると。


「だって、一輝くんは何も言わずに逃げちゃったので、もしかしたら私の水着姿がそんなに似合って無かったのかと、私はそう思ってしまったんです」


 綾香は少しだけ悲しそうな表情を浮かべてそんな事を言ったので。


「あっ、いえ、決してそんな事は無いです!! さっきも言いましたが綾香さんの水着姿が魅力的すぎて、僕は思わず逃げてしまったんです」


 一輝は慌ててそう言った。すると、


「一輝くんの気持ちはよく分かりました、でも、それでも私は一輝くんのさっきの行動でかなり傷つきました」


 綾香は一輝から顔を逸らすと改めてそう言ったので。


「えっと、綾香さん、僕に出来る事なら何でもするのでどうか機嫌を直して下さい」


 初めて機嫌を悪くした綾香の姿を見た一輝はどうしていいか分からず、一輝は慌ててそう言った。すると、


「一輝くん、そんな事を言って良いんですか? そんな事を言われたら私は本気にしますよ?」


 綾香は一輝の目を見るとそんな事を聞いて来たので。


「……ええ、勿論いいですよ」


 一輝は改めてそう言った。すると、


「そうですか、それなら、そうですね……」


 綾香はそう言って一輝に何を言うべきか悩んでいたが、その後、何かを思いついたのか。


「あっ、そうです!!」


 綾香は何かを思いついたのか、笑顔を浮かべてそう言った。そして、


「一輝くん、今日は一日私にもっと積極的に接して下さい!!」


 綾香は笑顔を浮かべると、そんな事を言った。

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