第115話 彼女たちの水着姿
そして、そんな心愛の声を聞いた颯太は、
「おう、随分遅かったな」
普段通りの口調でそう言うと、彼女たちが居る背後を振り返った。しかし、
(……今は無理だ!!)
一輝は彼女たちには背を向けたまま心の中で強くそう思った。
何故なら先程の颯太との会話のせいで一輝の頭の中には一瞬かなり邪な彼女の姿が浮かんでしまい。
その煩悩を振り払うよりも前に彼女たちが来てしまったからだ。
しかし、その原因を作った颯太にはそんな一輝の苦悩など知らぬと言った様子で、彼女たちと話し始めていた。
「いやあ、何となく分かっていたけど、立花さんは凄くスタイルが良いな、今の立花さんなら雑誌のモデルをやっていても違和感ないと思うぜ」
そして、最初に颯太は綾香に向けてそう言って褒めたのだが。
I「ふふ、ありがとうございます、斎藤くん、でも、そういうのは私ではなく彼女さんに言って上げた方が良いと思いますよ」
その言葉を聞いた綾香は何でもない様子でそんな事を言ったので。
「ああ、それもそうだな、それに立花さんはこういう事は俺なんかより一輝に言って欲しいだろうしな」
颯太はそう言うと、綾香から視線を外し自分の彼女である心愛の水着姿を見た。すると、
「全く、彼女よりも先に綾香先輩を褒めるなんて、颯太先輩はどういう神経をしているんですか? もしかして、綾香先輩に気でもあるんですか?」
少しだけ機嫌が悪そうな口調で心愛はそんな事を言ったので。
「馬鹿なことを言うな、俺は友人の彼女を狙う様な最低な男じゃねえよ、ただ、悲しいな、男の本能として立花さんみたいなスタイルのいい女性が居ると男はどうしても目を向けてしまうんだ」
颯太は申し訳なさそうにしながらも、そんな風に言い訳をしていた。そして、その言葉を聞いた心愛は、
「まあ、今回は許します、実際、綾香先輩は女の私でも思わず目を奪われる位にはスタイルがいいので颯太先輩が一瞬とはいえ目を奪われてしまうのは仕方が無いですから。ただ、颯太先輩、もし浮気をする様なら私は絶対に颯太先輩の事を許しませんよ」
颯太の言い訳を聞いて一応は納得をしつつも、最後は声を低くして心愛はそう言った。すると、
「ああ、分かってるよ、そもそもお前にバレた時の事を考えると浮気なんて怖くてしたくても出来ねえよ」
颯太はそんな事を言ったので。
「分かって貰えていて何よりです、ところで颯太先輩」
「何だ?」
「私の水着姿はどうですか?」
心愛は颯太に向けてそう質問をした。すると、その言葉を観た颯太は、
「うーん、そうだな……背や胸は相変わらず小さいけど、そういうのが好きな人には結構刺さる見た目なんじゃないか?」
何を思ったのか、いきなりそんな事を言い出したので。
「っちょ、颯太先輩、急に何を言っているんですか!? もしかして私に喧嘩を売ってますか?」
その言葉を聞いた心愛は少しだけ怒りを覚えた様子でそんな事を言ったので。
「いや、そんな事は無いぞ、俺はただ思った事を素直に口にしただけだ」
颯太が何でもない様にそう答えると。
「それはそれで余計にムカつきます、こうなったらもっとスタイルを良くして、何時か絶対に颯太先輩を見返してやりますから」
心愛は少しだけイライラした口調ながらも、今は素直に負けを認めたのかそんな事を言ったので。
「ああ、期待せずに待ってるよ」
颯太はぶっきら棒な口調でそう言った。そして、その言葉を聞いた心愛は、
「……まあ、颯太先輩の感想はもう良いです、大方予想通りでしたから、でも、佐藤先輩はどうしてずっと背を向けていて、こっちを見ないのですか?」
未だに背を向けている一輝に向けて心愛はそんな事を聞いて来たので。
「多分一輝は緊張していて、立花さんの水着姿を正面から観られないんだろう」
先程余計な事を言って悪いと思ったのか、颯太はそう言って一輝をフォローした。すると、
「あの、佐藤先輩、それはさすがに男として情けなさ過ぎると思いますよ」
少し呆れた様子で心愛がそんな事を言った。すると、心愛に続いて直ぐに綾香が口を開き。
「……一輝くんが緊張してしまう気持ちは私もよく分かります、私も今は一輝くんに水着姿を見られると思うと凄く緊張してしまいますから。でも、今日は一輝くんに水着姿の私の姿を観てもらいたくてここに来たので、恥ずかしがらずにしっかりと私の姿を観て欲しいです!!」
照れ臭そうに頬を染めながらも、綾香はしっかりと口調でそう言ったので。
「……綾香さん、分かりました」
一輝はそう言うと、一呼吸して早く鼓動している自分の心臓を落ち着かせて、直ぐ後ろに居る綾香の方へ振り向いた。
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