第114話 余計な一言

 その後、素早く着替えを終えた一輝と颯太の二人はいち早く屋内プールへと来ていた。


 そして、二人は軽い準備運動をしていると。


「なあ、一輝」


「何だ?」


 一輝がそう返事をすると。


「お前は立花さんの水着姿は楽しみじゃないのか?」


 颯太はそんな事を言ったので。


「急に何を言ってるんだ」


 一輝がそう聞き返すと。


「いや、だって、お前の事だからこんな状況になると慌てるなり何なりしてもっと動揺するかと思っていたんだけど、割といつも通りの姿だったからな……あっ!!」


 そんな風に颯太は急に大声を上げたので。


「うるさいな、急に叫んでどうしたんだ?」


 一輝がそう突っ込みを入れると。


「いや、何、ただお前がこんな状況でも冷静でいられる理由が分かっただけだ」


 颯太は少しだけニヤニヤとした笑みを浮かべながらそんな事を言ったので。


「違うと思うけど一応聞いておくよ、その理由は何だ?」


 一輝がそう質問をすると。


「はは、とぼけるなって、言うのが恥ずかしいのは分かるけど、男同士なんだしそんな事は気にするな!!」


 颯太はまたしてもそんな事を言ったので。


「お前が何を言いたいのか僕にはさっぱり分からないよ」


 一輝が改めてそう言うと。


「何だ、ここまで言われて分からないなんて、お前は本当に鈍い奴だな」


 颯太は少しだけ呆れた様にそう言ってため息を付くと、その後直ぐに顔を上げると満面の笑みを浮かべて。


「お前と立花さんはもうHな事は済ませたんだろ?」


 颯太はそんな事を言ったのだが。


「…………え?」


 一輝は颯太の言った言葉の意味が直ぐには分からず、少しの間その場で固まっていた。


 しかし、それから数秒経って颯太の言った言葉の意味を正しく理解すると。


「な……何を言っているんだ、僕と綾香さんはまだそんな事はしてないよ!!」


 一輝は内心かなり動揺しつつも、大声で慌てて颯太の言葉を否定した。すると、


「何だ、違うのか? お前たちは付き合ってもう4ヶ月も経っているんだし、てっきりもうそういう事は済ませたから今更立花さんの水着くらい平気なのかと思ったんだけど」


 颯太は意外そうな口調でそう言ったので。


「っつ、馬鹿、違うわ!! 僕はただ、立花さんの水着姿の写真を毎日見ていたから今は多少冷静でいられるだけで、立花さんとはまだそんな事はしていないよ!!」


 一輝は早口で颯太に向けてそう説明をした。すると、


「そうか、それは悪かったな、変に勘ぐってしまって」


 颯太は少しだけ申し訳なさそうにそう言ったので。


「……別に良いよ、でも、今ので少しだけ変な気分になったから、綾香さんたちが来る前に一泳ぎして頭を冷やして来ようか……」


 一輝がそう言って、一足先にプールに入ろうとしていると。


「先輩方お待たせしました!! 私たちの着替えがようやく終わりましたよ!!」


 タイミング悪く一輝たちの背後から元気のいい心愛の声が聞こえた。

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