第14章 プールデート当日
第112話 プールデート当日
色々な事があって迎えたプールデート当日、一輝は目的地のプールへ向かう為に家から自転車で近くの駅に来ていた。
そして、切符を買ってから改札口を通り駅に降りると。
「よう、一輝」
そこには先に来ていた斎藤颯太が居て、一輝にそう言って話しかけて来たので。
「よう、颯太」
一輝もそう挨拶を返した。すると、
「今日は悪かったな、折角二人きりのプールデートなのに心愛のせいで俺たちまで付き合う事になってしまって」
颯太は少しだけ申し訳なさそうな様子でそう声を掛けて来たので。
「いや、別に気にしなくていいぞ」
一輝はそう答えた。すると、
「あっ、先輩方おはようございます!!」
元気のいい声でそう言って、黒澤心愛が階段を降りながら挨拶をして来て。
そんな心愛の隣には立花綾香が居て、心愛と一緒に一輝たちの元へと歩いて来た。
そして、女子二人が一輝たちの元へ来ると。
「悪いな、立花さん、今日は折角の一輝との二人きりのデートなのに俺たちが邪魔をしてしまって」
颯太は一輝に言ったのと同じようなセリフを綾香にも言った。すると、
「斎藤くん気にしないで下さい、今は夏休みなので一輝くんと二人きりでデートをする機会は何度もあると思います、それに」
そう言うと、綾香は一度言葉を切ってから。
「私は最近心愛ちゃんと友達になったので、大切な友達の頼みならなるべく聞いてあげたいと思いますから」
綾香は嬉しそうに微笑みながらそう言った。しかし、その言葉を聞いた颯太は少し顔をしかめてから。
「えっ、立花さん、心愛と友達になったのか? えっと、そうだな……人の交友関係にいちいち口出しするつもりはないけど、心愛の頼みをあんまり安請け合いすると痛い目にあうかもしれないから、くれぐれも気を付けてくれよ」
そんな事を言って綾香にアドバイスをした。しかし、その言葉を聞いた心愛は、
「颯太先輩にそんな事を言われるのはもう慣れたのでもう怒ろうとは思いませんが、これでも私は先輩の彼女なんですよ、せめてもう少しくらいは私の事を気遣った発言をしても良いと思いますよ」
少しだけ気分を害した様子でそう言った。すると、
「まあまあ、そんなに気にするな、確かにお前は性格は悪いけど見た目は十分可愛いからな、それでプラマイゼロだろ」
そんな事を呟くと、長身の颯太は背の低い心愛の頭を多少雑に撫で始めた。すると、
「もう先輩、私の事を子どもみたいに扱うのは止めて下さい!!」
そう言って、心愛は颯太から顔を逸らした。しかし、それでも頭を撫でるのを止めろとは言わないので、颯太は心愛の頭を雑に撫で続けていて。
颯太からは見えていないが、心愛の顔は少しだけ赤くなっていた。
そして、少し距離を開けて一輝と綾香は二人の様子を眺めていたのだが。
「お二人とも仲が良いですね、これなら今後もちゃんとした恋人同士で居られると思います」
綾香は二人に聞こえない様に小声で一輝に向けてそう言ったのだが。
「そうですか? 僕にはどう見ても仲の良い先輩後輩の間柄にしか見えないのですが」
一輝はそんな風に思った事を口にした。すると、
「ふふ、そう思うのなら私と勝負をしますか? 心愛ちゃんと斎藤くんが付き合えるかどうか?」
綾香はそんな提案をして来たが。
「……いえ、止めておきます、負けた時の事を思うと少し怖いですから、それに」
「それに、何ですか?」
綾香がそんな事を聞いて来たので。
「何度も言っていますが、僕は二人には上手く行って欲しいと思っていますから、だから例え勝負だとしても二人が付き合えないとは言いたくないです」
一輝は正直にそう答えた。すると、
「……それもそうですね、それなら今日のデートで二人が上手く行くように私は願っておきます」
その答えを聞いた綾香はそんな事を言ったので。
「それなら僕も二人が上手く行くように願っておきます」
一輝もそう答えると。
「えっと、一輝くんにはそんな余裕がありますか?」
綾香はそんな事を聞いて来たので。
「えっ、何がですか?」
一輝がそう聞き返すと、綾香は少しだけ頬を赤く染めて。
「今日はプールデートなので、私の水着姿を観るだけでなく私と一緒に遊んだり泳いだり……もしかしたら私たちの肌が触れたりするかもしれません、それなのに心愛ちゃんたちの事を心配している余裕は一輝くんにはあるのですか?」
綾香はそんな事を聞いて来た。そして、その言葉を聞いた一輝は、
「えっ、あっ、それは……」
直ぐには言い切れず、一輝がその場でアタフタしていると。
「……ふふ、いつも通りの一輝くんで安心しました、心愛ちゃんたちの事は私が気にしておくので、一輝くんは私とのデートにだけ意識を集中して下さいね、折角のデートなのに他の人を気にして私の事を疎かにされるのは嫌ですから」
綾香は一輝の事を上目遣いで見上げながらそんな事を言ったので。
「……ええ、分かりました」
そんな彼女から目線を逸らして、一輝はそう返事をした。
そして、二組のカップルがそんなやり取りをしている内に今日乗る予定の電車がやって来て。
四人は電車に乗り込んで、電車は目的地のプールへと向かって行った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます