第107話 水着写真
綾香との水着選びのデートを終えてから数日後の夜、一輝は自分の部屋に置いてあるノートパソコンでアニメを観ていると。
「……ピロリン」
「ん?」
珍しくベッドの上に置いてあったスマホのチェインの音が鳴ったので、アニメを一旦止めてからベッドの前に向かい、一輝がチェインを開くと。
「……え?」
そこには綾香が自分の部屋で少し恥ずかしそうな表情で写っている、彼女の水着写真が送られてきていた。
そして、その写真を見て、一輝が少しの間スマホ画面を見たまま固まっていると。
「プルルルルル」
「っつ!?」
突然、一輝のスマホが鳴り始め画面には立花綾香の名前が表示されていたので、一輝は慌てて電話に出た。すると、
「……もしもし」
そう言って、綾香が電話に出たので。
「あっ、えっと……もしもし綾香さん、どうかしましたか?」
少し動揺しつつも、一輝がそう言って電話に出ると。
「あっ、もしもし一輝くん、今電話をしても大丈夫でしたか?」
綾香がそんな事を聞いて来たので。
「ええ、大丈夫ですよ」
一輝がそう答えると。
「そうですか、それなら良かったです」
綾香は嬉しそうな声音でそう言った。そして、
「因みにですが一輝くん、私はさっき一輝くんに私の水着写真を送ったのですが、ちゃんと送信出来ていましたか?」
最初に綾香はそんな事を聞いて来たので。
「……ええ、ちゃんと来ていましたよ」
一輝が少し遠慮がちにそう答えると。
「そうですか、それは良かったです、私は普段あまりチェインを使わないので少し自信が無かったんです」
綾香は安心した様子でそう答えたので。
「その気持ちは少し分かります、僕も普段はそんなにチェインを使う事はありませんから」
一輝はそう言った。そして、一輝は一呼吸置いてから。
「でも、さっきは少し驚きました」
一輝がそう言うと。
「えっ、何がですか?」
綾香はそう聞いて来たので。
「水着写真の事ですよ、綾香さんの事なので、今度もまたコタロウの写真を送って来ると思っていたので、本当に水着写真を送って貰えて少し驚きました」
一輝がそう答えると。
「もう、何を言っているんですか一輝くん、私はちゃんと私の水着写真を上げると言ったので、そんな騙し討ちみたいな事はしませんよ、それに」
「それに、何ですか?」
一輝がそう言うと。
「私とプールデートをする時には水着姿の私と会う事になるのですから、今の内に写真を見て私の水着姿に慣れておいて下さい、そうしないとデートどころでは無くなってしまいそうですから」
綾香は少しだけ恥ずかしそうな口調でそう言ったので。
「えっ、あっ、そうですね……」
一輝も恥ずかしそうな口調でそう言った。
「「……」」
その後、暫く二人の間には少しだけ甘酸っぱい様な沈黙が流れていたのだが。
「……あの、一輝くん」
唐突に綾香がそんな事を言ったので。
「えっ、ええ、何ですか?」
一輝がそう答えると。
「……その、私の水着写真はどうでしたか?」
綾香は遠慮がちにそんな事を聞いて来たので。
「えっ、えっと、それは……」
そんな事を言われて、一輝は何と答えるべきか悩んだのだが。
「……その、凄く似合っていて良かったです」
一輝は遠慮がちにそう答えた。すると、
「ふふ、一輝くんのそんな答えが聞けたのなら、多少恥ずかしい思いをしてでも写真を撮ったかいがありました」
綾香は嬉しそうな声でそう答えた。そして、それから一呼吸置いてから。
「でも、この写真はくれぐれも他の人には見せないで下さいね、一輝くん以外の人にこの写真を見られるのはとても恥ずかしいですから」
綾香はそんな事を言ったので。
「ええ、分かっています、それに僕もこんな素敵な綾香さんの写真を他の人には見られたくないので、僕は絶対この写真を他の人には見せません!!」
一輝は力強くそう答えた。すると、
「そうですか、その言葉を聞いて安心しました。えっと、それでは少し早いですがもう電話を切りますね、私はそろそろお風呂に入ろうと思うので」
その言葉を聞いた綾香はそんな事を言ったので。
「ええ、分かりました、それじゃあ綾香さん、また明日」
一輝もそう返事をすると。
「ええ、また明日……あの一輝くん」
「はい、何ですか?」
綾香がそんな事を聞いて来たので、一輝がそう聞き返したのだが。
「……いえ、何でもありません、それでは一輝くん、また明日」
綾香は何故か少し焦った様子でそう言ったので。
「え? ええ、また明日」
一輝はそう言って、そのまま電話を切った。
その後、一輝は力尽きたようにベッドに横になると、再びチェインを開いて綾香から送られて来た彼女の水着写真を見た。
そして暫くの間、一輝はベッドに寝転ぶとそのまま綾香の水着写真を黙って見ていたのだが。
(……ヤバい、ずっとこの写真を見ていると何か変な気分になりそうだ)
心の中でそう思うと、一輝は素早くチェインを閉じるとスマホをベッドの上に置いた。そして、そのままベッドから起き上がると。
「……僕も風呂に入ろう、このまま写真を見続けると妙な気を起こしてしまいそうだ」
今の状況ではさっきまで見ていたアニメの続きを見る気には全くなれず、一輝はそう言うとパジャマを持って自分の部屋を後にした。
「はあ、一輝くんに写真を送ってしまいました……」
一方その頃、電話を終えた綾香は自室のベッドに寝転がり、顔を赤くしてそう呟いた。
綾香は一輝に自分の水着写真を送るかどうかをここ数日間ずっと悩んでいたのだが、今日ようやく決心できて、とてつもない恥ずかしさを抱えながらも、こうして一輝に自分の水着写真を送ったのだった。しかし、
「……一輝くんの事だから、他の人に見られる心配は無いと思いますが、一輝くんはいつでも好きな時に私の水着姿を見る事が出来るんですよね……っつ!!」
そう呟くと、綾香は恥ずかしさをぶつける様に一輝から貰った犬のぬいぐるみに自分の顔を思いっきり埋めた。
そして、その状態で数秒間経つと、綾香はぬいぐるみから少しだけ自分の顔を離すと。
「でも、仕方が無いですよね、私の水着姿に慣れてなくてデートが失敗するくらいなら、一輝くんに写真を上げた方が良いに決まっています!! ただ、もしかしたら一輝くんに私の写真を変な風に使われるかもしれませんが……一輝くんも男の子なので、それは仕方が無いですよね」
綾香は自分を納得させる様にそう言ったのだが、それでも自分の胸の内にあるモヤモヤした感情は消える事は無く。
それは今、風呂に入って頭を冷やしている一輝も同じで、二人は寝るまでの間ずっと悶々とした気持ちで過ごしたのだった。
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