第103話 水着選び

 その後、一輝は綾香と綾香はショッピングモールの二階にある水着売り場に来ていた。そして、


「それじゃあ一輝くん、早速私の水着を選びましょう」


 綾香がそう言うと。


「ええ、そうですね……あの、綾香さん」


「はい、何ですか?」


「その、僕は店の外で待っていても良いですか?」


 一輝はそんな事を言った。すると、


「えっ、何故ですか?」


 綾香は当然の様にそう聞き返して来たので。


「その、当たり前ですが、ここは女性の水着売り場なので、男性客は僕だけなのは正直とても気まずいので、出来れば店の外で待たせて欲しいです」


 一輝は正直にそう答えた。すると、


「成程、そういう事ですか、確かに一輝くんの言い分はよく分かります」


 綾香はそう言ったので。


「えっ、それなら」


 その言葉を聞いた一輝は希望を持って、綾香の顔を見たのだが。


「でも、すみません、一輝くん、それでも出来れば一輝くんは私と一緒に水着を見て周ってくれませんか?」


 綾香は無情にもそう言ったので。


「えっ!? それは何故ですか?」


 一輝がそう聞き返すと。


「……だって、私は一輝くんとプールデートをする為に水着を選ぶので、出来れば一輝くんが好きな水着姿でデートに行きたいですから。だから、一輝くんにとっては少しだけ大変かもしれませんが、私は一輝くんの好きな水着を着たいので、一輝くんには私の水着選びに付き合って欲しいんです」


 少し目線を落としながらも、綾香はそう言ってハッキリと自分の思いを口にした。


 そして、そんな綾香の本心を聞いた以上、一輝はノーと答える訳にもいかず。


「……分かりました、ただ、僕の為に選んで貰うのにこういう事を言うのは何ですが、出来るだけ早く決めましょう、あまり長時間この場にいるのは、僕には少し厳しいので」


 一輝はそう言って、綾香の言葉に同意した。すると、


「一輝くん、ありがとうございます、それなら早速ですが、水着選びを始めましょう!!」


 その言葉を聞いた綾香は嬉しそうな笑みを浮かべてそう言った。そして……






「一輝くん、この水着はどうですか?」


 綾香は一着の水着を手に持つと、一輝にそう言って見せて来た。しかし、


「あっ、えっと……凄く素敵だと思うのですが」


「ですが、何ですか?」


 綾香がそう言ったので、一輝は話そうか悩んだが。


「その……その水着を着ている綾香さんはとても魅力的だと思いますが、そんな派手な水着を着てしまったら、綾香さんが注目を集めすぎてしまってデートどころでは無くなってしまうと思うんです、だから、出来ればもう少しだけ地味な水着にして欲しいです」


 一輝は正直に自分の思いを口にした。すると、


「成程、分かりました、一輝くんがそう言うのならもう少しだけ地味な水着にしますね」


 綾香は納得した様子でそう言うと、手に持っていた水着を売り場に戻した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る