第13章 水着選びとプールデート
第102話 水着選びのデート当日
「綾香さん、まだかな?」
一輝が綾香と水着選びの約束をした次の週の土曜日、一輝は近所にあるショッピングモールの駐輪場に来ていて、綾香が来るのを待っていた。
しかし、集合時間より20分も前に付いたため、さすがに早く来すぎたのかもしれないと思い、一輝はポケットからスマホを取り出そうとすると。
「……スッ」
突如、一輝の視界が暗くなり、一輝は驚いてその場で固まった。すると、
「ふふ、だーれだ?」
一輝の背後からそんな聞きなれた、大好きな人の声が聞こえたので、一輝は素直にその人の名前を呼ぼうとしたのだが。
「……」
一輝は直ぐには名前を言わず、その場で黙った。すると、
「? 一輝くん? どうしました?」
声の主は一輝が黙ったので、そんな事を聞いて来た。すると、一輝は少しだけ考えてから。
「いえ、何でもないです、ただ、すみません、今のやり取りだけだと貴方が誰なのか僕には分からないです」
背後から目隠しをされたまま、一輝はそんな事を言った。すると、
「えっ、そんな、酷いです、一輝くん」
目隠しをしている人は少し悲しそうな声でそんな事を言ったので。
「すみません、だから、もし可能なら、僕の事を大好きだと耳元でささやいてくれませんか? そうすれば、貴方が誰なのか分かると思うと思います」
一輝は目隠しをされたまま、そんな事を呟いた。すると、
「……もう、一輝くん、私が誰か分かっていて、からかっていますよね?」
彼女はそんな事を言ったのだが。
「いえ、そんな事は無いです、僕は本当に貴方が誰か分からないです」
一輝はとぼける様にそんな事を言った。すると、
「そうですか、分かりました、一輝くんは鈍感なので本当に分からないのかもしれませんね」
彼女は渋々ながら、納得した様にそう言った。そして、
「それでは一輝くん、いきますね」
彼女はそんな事を言ったので。
「ええ、お願いします」
一輝はそう答えた。すると、一輝の耳元の彼女の顔が近づいて来るのを一輝は感じた。そして、
「……一輝くん、大好きですよ」
一輝の耳元で彼女は優しくそうささやいた。
「…………」
ただ、そのささやきを聞いた一輝はその場で固まってしまい、数秒間黙っていた。すると、
「一輝くん、どうかしましたか?」
少し心配になって、彼女がそう声を掛けて来たので。
「あっ、すみません綾香さん、あまりの衝撃にちょっと意識が飛んでいました」
一輝はそう答えた。すると、
「もう、一輝くん、私だって気付いているじゃないですか」
綾香は少しだけ不満そうな口調でそう言うと、一輝の目元から自分の手を放したので。
「すみません、綾香さんにはいつもやられてばかりだったので、ついやり返してみたくなったんです」
綾香の方へ振り向きながら、一輝は正直にそう答えた。すると、
「それなら、一輝くんも偶には私に悪戯をしてもいいんですよ」
綾香はそんな事を言ったので、一輝はつい、いやらしい想像をしてしまいそうになったのが、そんな邪な気持ちを何とか振り払って。
「……分かりました、考えておきます」
一輝は短くそう答えた。すると、
「ふふ、一輝くんがどんな悪戯をしてくれるのか楽しみにしていますね」
綾香は楽しそうに笑いながらそう言った。そして、
「それより一輝くん、早く私の水着を選びに行きましょう!!」
綾香はそう言うと、一輝の手を恋人繋ぎで握って来たので。
「……ええ、そうですね」
一輝はそう返事をした。すると、
「一輝くん、もしかして緊張していますか?」
一輝の事を上目遣いで見上げながら、綾香はそんな事を聞いて来たので。
「それは当然ですよ、綾香さんの水着なんてモノを観たら、僕は冷静でいられる自信が無いですから」
一輝は正直にそう答えた。すると、
「……もう一輝くん、そんな事を言わないで下さい、私だって一輝くんに水着姿を見せるのは凄く恥ずかしいんですよ」
綾香は頬を少しだけ赤く染めながらそう言ったので、一輝は少しだけ慌てながらも。
「えっと、それはそうですよね、すみません綾香さん、綾香さんの水着姿を見ても冷静でいられるように精一杯努力します!!」
一輝はそう答えたのだが。
「……それはそれで少し嫌です、彼女の水着を見ても何も思わないなんて、私の水着姿には何の魅力も無いみたいですから、なので一輝くん」
そう言うと、綾香は一輝の耳元に自分の口元を寄せて。
「少しくらいなら、私の水着姿を見て、そういう気持ちになってくれてもいいんですよ」
「っつ!?」
そう言われて、一輝が思わずそう声を漏らすと、綾香は直ぐに一輝の傍から顔を放して。
「それじゃあ一輝くん、早速お買い物デートを始めましょう」
綾香は駆け足で一輝の手を引っ張りながら、ショッピングモールの中へ向かって行ったので。
一輝は綾香に手を引かれて、彼女の後に付いて行ったのだが。
ずっと綾香の背中を観ていたせいで、一輝は綾香の顔が真っ赤に染まっていた事には気が付かなかった。
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