第101話 水着選びの約束
その後、綾香は落ち着きを取り戻すために、ずっとコタロウの頭を撫で続けていて。
その間、一輝はずっと彼女の部屋に仰向けに倒れたまま、真っ白な見慣れない天井をずっと見上げていたのだが。
(……やばい、どうしよう)
段々と冷静さを取り戻した一輝は心の中でそう呟いた。元はといえば、最初に色々な事をして来た綾香が原因ではあるのだが。
だからといって、彼女を押し倒して、その上、嫌がる綾香の首元に無理矢理キスをして良い理由にはならなかった。
なので、一輝はゆっくりと床から起き上がると。
「あっ、一輝くん、冷静になれましたか?」
コタロウの頭を撫でていた綾香は一輝の方を観て、そう質問をして来たので。
「ええ……あの、綾香さん」
一輝がそう言うと。
「何ですか? 一輝くん」
綾香はそう聞き返して来たので、一輝はその場で正座をすると、床に頭を擦り付けて。
「すみませんでした!!」
綾香に向けて土下座をして、大声でそう言った。すると、
「えっ? 急にどうしたんですか、一輝くん」
それを観て、綾香は少し驚いた様子でそう聞いて来たので。
「いきなり綾香さんに襲い掛かってしまった事です、幾ら恋人同士とはいっても、やって良い事と悪い事があるのに、とんでもない事をしてしまって本当にすみません!!」
一輝は頭を床に付けたまま、そう言って謝った。すると、
「一輝くん、顔を上げて下さい、私は別に怒っていませんから」
綾香は優しい口調でそう言ったので。
「えっ、そうなんですか?」
そう言って、一輝が顔を上げると。
「ええ、勿論です、そもそもこうなってしまったのは、私が一輝くんを興奮させる様な事を色々してしまったからです、それに」
「それに、何ですか?」
一輝がそう質問をすると、綾香は少しだけ頬を赤く染めながら。
「さっきみたいに一輝くんに襲われるのも、私は嫌では無かったので」
綾香はそんな事を言ったので。
「えっ!? それって……」
一輝が驚いて、そう言うと。
「あっ、いえ、今のは口が滑ったと言うか、その……とにかく、今の言葉を忘れて下さい!!」
綾香は慌ててそう言ったので。
「……ええ、分かりました、あの、綾香さん」
「何ですか?」
綾香がそう言うと。
「その、さっき僕が綾香さんを襲ってしまったお詫びを何かさせて貰えませんか?」
一輝はそう言った。すると、
「えっ、そんな事は別に気にしなくても大丈夫ですよ」
綾香はそう言ったのだが。
「いえ、そういう訳にはいきません、綾香さんは優しいので許してくれましたが、それでも僕がしてしまった事は人として駄目な事だと思います、だから、何でもいいので僕に罰を与えて下さい、そうじゃないと、僕は綾香さんに申し訳なくてこの先堂々と綾香さんとは付き合えません」
一輝はそう言った。すると、
「……そうですか、分かりました、一輝くんがそこまで言うのなら、何か罰を考えます」
綾香はそう言った。しかし、
「でも、いきなり罰と言われても、急には思いつきませんね」
綾香はそう言うと、自分の顎に手を当てて、一輝に対する罰を考え始めた。
しかし、直ぐにはいいアイディアが浮かばないのか、綾香は暫くの間、頭を悩ませていたのだが。
「……あっ、そうです」
何かを思いついたのか、綾香はそう言った。そして、
「一輝くん、夏休みになったら私とプールデートをしようと約束していたのを覚えていますか?」
綾香はそんな事を聞いて来たので。
「ええ、勿論覚えていますよ」
一輝がそう答えると。
「そうですか、それはよかったです、でも、私はまだ一輝くんとプールデートをするための水着をまだ買っていないんです」
綾香はそこまで言うと、一度言葉を切って。
「だから一輝くん、罰として今度、私と一緒に買い物に行って、私の水着を選んで下さい!!」
綾香は笑顔を浮かべてそう言った。
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