第100話 初めての経験
そして、そんな風に一輝に押し倒されている中。
(ふぇ?)
綾香は内心とても混乱していた。
今までの経験から、綾香は一輝がとんでも無いヘタレだという事は良く分かっていたので、これくらい大胆に行動しても大丈夫だろうと思って、綾香は思いっきり一輝に甘えていたのだが。
そんな一輝の理性も綾香の大体過ぎる攻めの中で遂に限界を迎えてしまった様で、一輝はかなり呼吸を荒くしながら、綾香の顔を見つめていた。
そして、そんな一輝の表情を見た綾香は、
(何だかこのままだと、とても不味い気がします、初めて積極的になってくれた一輝くんには申し訳ありませんが、今はここから逃げないと)
綾香は心の中でそう思うと、何とかその場から起き上がろうとしたのだが。
「っつ!! 綾香さん!!」
「きゃっ!!」
そう言うと一輝は、倒れている綾香に上から覆いかぶさって来て、綾香の逃げ場を完全に塞いでしまった。
そして、その状況になって初めて、綾香は本気で焦りながら。
「一輝くん、今日は駄目です、お父さんとお母さんに声が聞こえてしまいます」
そう言って、何とか一輝に踏みとどまって貰おうとしたのだが、今の一輝にはその言葉は届かずに……
「……ん」
「ひゃっ」
綾香は自分の首筋に温かいモノが当たるのを感じたが、今の姿勢では一切抵抗できずに、一輝にされるがままになっていた。
そして、暫く時間が経つと、一輝の唇が綾香の首筋から離れたが、それでもまだ、一輝の興奮が収まる様子は一切なかった。
しかし、今はこれ以上許すわけにはいかないと、そう思った綾香は咄嗟に、
「っ、コタロウ!!」
家中に響くくらいの大声で、綾香は愛犬の名前を呼んだ。すると、
「タッタッタッタッ!!」
それから数秒経ってから、そんな風に誰から階段を駆け上がって来る足音が聞こえた。そして、
「バン!!」
そのまま勢いよく、綾香の部屋のドアを開けて、コタロウが綾香の部屋に入って来ると。
「ワン!!」
「うわっ!?」
その巨体で綾香の上に覆いかぶさっている一輝を吹っ飛ばすと、そのまま床に倒れている綾香の顔を舐めて、飼い主である綾香に尻尾を振って甘え始めた。すると、
「はあ、はあ、ありがとうございます、コタロウ、お陰で助かりました」
綾香はコタロウの頭を撫でながらゆっくりと起き上がると、そのまま床に座って、自分の事を助けてくれたコタロウの事を褒めてあげていた。
そして、愛犬の頭を撫でて上げながら、綾香は目の前に倒れている一輝の姿を観ると。
(もう、どうしてよりによって今日なのですか、お父さんとお母さんが居ない時なら私は何時でも大丈夫なのに……)
綾香は声には出さず、心の中だけでそんな不満を口にしたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます