第11章 試験期間
第84話 一輝の決意と綾香との約束
綾香を無事彼女の家まで送り届けた一輝は自転車で自分の家に帰ると、綾香が昼に作ってくれたカレーライスを食べ終えてから。
風呂に入ってから明日の学校へ行く準備を済ませると、一輝はいつも通り綾香に自分のスマホで電話を掛けた。すると、
「……もしもし」
数コールした後、綾香がそう言って電話に出たので。
「あっ、もしもし、綾香さん、今大丈夫ですか?」
一輝がそう質問をすると。
「ええ、大丈夫ですよ」
綾香はそう答えたので。
「そうですか、それならいつも通り少し話をしませんか?」
一輝がそう言うと。
「ええ、そうしましょう」
綾香もそう答えたので、二人は電話で話をすることにした。すると、
「ところで、一輝くんは無事にお家に帰れましたか?」
最初に綾香はそんなことを聞いて来たので。
「ええ、大丈夫でしたよ」
一輝がそう答えると。
「そうですか、それならよかったです」
綾香は安心した声音でそう言った。なので、
「そうですね、因みに綾香さんの方は大丈夫でしたか?」
一輝がそう質問をすると。
「えっと、何がですか?」
綾香はそう聞き返して来たので。
「えっと、それはその、僕たちがキスをしている姿を綾香さんのお母さんに観られたことです、僕が帰った後、綾香さんはお母さんに何か言われませんでしたか?」
一輝が遠慮がちにそう質問をすると。
「……その事ですか」
綾香は少し言い辛そうな様子でそう言うと。
「実は一輝くんがお家に帰った頃、私はお母さんから一輝くんの事に付いて色々と聞かれました。私が一輝くんとお付き合いをしていることはまだ家族には話していなかったので」
綾香はそう答えたので。
「あっ、やっぱり綾香さんは僕たちが付き合っていることはまだ話していなかったんですね」
一輝がそう答えると。
「ええ、ただ、お母さんは私に彼氏に出来たという事は何となく気が付いていたみたいです……あっ、一輝くん、勘違いしないで下さい、私がこの事を話していなかったのは、一輝くんと付き合っているのがバレるのが嫌だったというわけではなくて、一輝くんの事を思ってですから!!」
綾香は少し慌てた様子でそう言ったので。
「僕の事を思ってですか?」
一輝がそう質問をすると。
「はい、そうです、私は一輝くんと付き合い始めた事を直ぐにでも両親に伝えてもいいとは思っていたのですが、私に彼氏ができたと分かったら、私の両親は直ぐにでも一輝くんに会いたいと言ったと思うんです。でも、一輝くんはまだ私の両親に会う決意が出来ていない様子だったので、一輝くんが私の両親に会う決心が着くまでは、私の両親には言わないでおこうと思ったんです」
綾香はそう答えたので。
「そうなんですか、気を使って頂いてありがとうございます。ただ、さっきのことで綾香さんのお母さんにはバレてしまいましたね」
一輝がそう言うと。
「そのことに付いては完全に私の不注意でした、ごめんなさい、私があんなところでキスをしたいと言ってしまったので」
綾香は申し訳なさそうにそう言ったので。
「いえ、気にしないで下さい、僕もあの場所で綾香さんとキスが出来て嬉しかったですし、それに今回の事で自分なりに決心が着きました」
一輝がそう言うと。
「決心ですか?」
綾香がそう聞いて来たので。
「ええ、試験期間が終わったら、僕は綾香さんの両親に会いたいと思っています!!」
一輝は力強くそう答えた。すると、
「えっ、いいのですか?」
綾香は少しだけ驚いた様子でそう言ったので。
「ええ、勿論です、綾香さんは僕の両親に会ってくれたのに、いつまでも僕だけが逃げる訳にはいきませんから」
一輝がそう答えると。
「そうですか、私としても一輝くんが私の両親に会ってくれるのは嬉しいのですが、本当にいいのですか? 私のお母さんに言われた事で無理をしていませんか?」
綾香は少しだけ一輝を心配する様にそう言ったので。
「確かに、綾香さんのお母さんに近いうちに会いに来てくださいと言われた事も理由の一つです、でも、僕は今日、綾香さんのお母さんに見つかってよかったと思います。多分今日のことがなければ、僕はいつまでも綾香さんの両親に会う決意が出来なかったと思うので、今回のことは良いキッカケになれたと思っています。なので、次のテストではなるべく良い点数を取って、それから綾香さんの両親に胸を張って会いたいと思います!!」
一輝はそう言った。すると、
「そうですか、分かりました、一輝くんがそこまで言うのなら、今度の試験が終わったら、一輝くんが私の両親と落ち着いて話が出来るように私から話をしておきますね」
綾香はそう言ったので。
「綾香さん、ありがとうございます」
一輝がそう言うと。
「気にしないで下さい、それに一輝くんが私の両親に会ってくれると決意してくれて、私も嬉しいです」
綾香はそう答えた。そして、綾香は一息つくと。
「ただ、その為にはまず、今度の試験で良い点を取って、一輝くんに自信を付けてもらわないといけません」
綾香はそう言ったので。
「ええ、そうですね、だから明日からは試験勉強を頑張らないといけませんね」
一輝はそう答えると。
「ええ、そうですね、でも一輝くん、いつもより良い成績を取るために一人で試験勉強を頑張るのは結構大変だと思うのです、だから、一輝くんさえ良かったら、今度の休日は私と一緒に試験勉強をしませんか?」
綾香はそんな提案を一輝にして来たので。
「えっと、僕としてはその提案はとても嬉しいのですが、綾香さんはいいのですか?」
一輝がそう質問をすると。
「何がでしょうか?」
綾香はそう聞き返して来たので。
「綾香さんは毎回学年で上位10位以内に入るくらいに成績がよかったですよね、それなのに僕と一緒に勉強をすることになったら、僕が綾香さんの勉強を邪魔してしまいませんか?」
一輝が少し心配そうな口調でそう質問をすると。
「そんな事はありません、一人で勉強をするより誰かと一緒に勉強をした方がより勉強を頑張れると私はそう思いますから。だから、一輝くんさえよかったら、次の休日は私と一緒に勉強をして欲しいです」
綾香は改めてそう言ったので。
「……そうですか、分かりました、それなら次の土日は僕と一緒に勉強会をしましょう」
一輝がそう言うと。
「ええ、よろしくお願いします!!」
綾香は嬉しそうにそう言ったので。
「こちらこそよろしくお願いします、それで綾香さん、勉強会は何処でやりますか?」
一輝がそう質問をすると。
「そうですね……私は外で勉強をするよりは家で勉強した方がより集中できるので、出来れば私か一輝くんの家のどちらかがいいのですが」
綾香はそう言ったので。
「えっと、それなら僕の家で勉強会をしませんか? 情けない話ですが、試験期間が終わるまでは、僕はまだ綾香さんのご両親とは会わないでおきたいので」
一輝がそう答えると。
「そうですね、分かりました、それなら今度の土日は私が一輝くんの家に行って勉強会をすることにしますね」
綾香は一輝の意見を快く了承したので。
「ありがとうございます、綾香さん……それと、すみません、いつも僕のわがままを聞いてもらって」
一輝が少し申し訳なさそうにそう言うと。
「気にしないで下さい、一輝くんばかりでもなく、私も一輝くんにわがままを言って一輝くんを困らせてしまっている事もよくありますから。でも、そう思って下さっているのなら、次のテストでは少しでもいい点数を取れるように頑張って、試験期間が終わったら自信を持って私の両親に会いに来てくださいね」
綾香はそう言ったので。
「ええ、勿論です!!」
一輝は力強くそう答えた。
こうして来週の土日は、一輝は自分の家で綾香と一緒に勉強会をすることが決まったのだった。
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