第63話 心愛の提案
「……え?」
そして、そんな言葉を聞いた一輝は一瞬なにを言われたのか理解できず、そう言って固まっていたのだが……
「えっ、その、黒澤さん、一体なにを!?」
言葉の意味を理解した一輝は慌てた様子でそう言ったが。
「もう、止めて下さいよ、男の人がそんな反応をしても気持ちが悪いだけですよ」
そんな一輝の反応を見て、心愛はそんな風に辛辣な言葉を浴びせた。なので、
「……そうですね、すみません」
一輝は内心少し傷つきながらもそう言った。ただ、その言葉のお陰で一輝は冷静さを取り戻すことができたので。
「えっと、その質問に僕が答える必要がありますか?」
一輝がそう質問をすると。
「別に先輩が言いたくないのなら答えなくても良いですよ、ただ、私の秘密を知りたいのでしたら、先輩もそれくらいの秘密を聞かせてくれても良いのではないかと、そう思っただけです」
心愛はなんでもないといった様子でそう言った。そして、その言葉を聞いて、一輝は少し考えてから。
「……綾香さんとはまだ、そういったことは一度もしていません」
一輝は正直に心愛の質問に対してそう答えた。すると、
「やっぱりそうですか、佐藤先輩はそういったことに対してはかなり奥手そうな感じがしていましたが、どうやら私のイメージ通りだったみたいですね」
心愛は何故か少し得意げな様子でそう言った。なので、
「えっと、駄目ですか? 僕たちがまだそういったことをしていなくて」
一輝がそう質問をすると。
「別に駄目だとは思いませんよ、人にはそれぞれペースというモノがありますし、無理矢理ことを進めようとして二人の関係が壊れたりしたら元も子も無いですからね……でも、先輩たちは付き合い始めてからもう二か月以上も経っているのに、佐藤先輩は立花先輩とはそういったことをしたいとは思わないのですか?」
心愛はそんなことを聞いて来た。なので、一輝はなんと答えようか少しだけ悩んだモノの。
「それは、僕も男なので人並みにしたいとは思いますよ」
一輝は正直にそう言った。すると、
「まあ、そうですよね、あんなに可愛くてスタイルも良くておまけに胸も大きいのですから、男なら普通にしたくなりますよね」
心愛は何故かニヤニヤとした満面の笑みを浮かべてそういった。なので、
「あっ、いえ、その、僕はそんな風に思っては……」
一輝はそう言ったのだが。
「否定しなくてもいいですよ、それとも、やっぱり佐藤先輩は立花先輩とはそういうとはしたくないですか?」
心愛は改めてそんなことを聞いて来たので。
「それは、出来ることならしたいですよ、ただ」
「ただ、なんですか?」
心愛がそう質問をすると。
「……その、僕は女性と付き合うのは綾香さんが初めてなので、どういう風に誘えばいいのか分からないんです」
一輝は正直にそう答えた。すると、
「成程、先輩の気持ちはよく分かります、初めて付き合うのでしたら、色々なことが不安で中々前に進めませんよね、ただ、それなら私が先輩の手助けをしてあげます」
心愛がそんなことを言ったので。
「えっと、一体なんの手助けですか?」
一輝がそう質問をすると。
「そんなの決まっているじゃないですか」
心愛はそう言うと、少し背伸びをして、一輝の耳元に自分の口を近づけて。
「佐藤先輩が立花先輩とエッチなことが出来るように私が手助けをしてあげても良いですよ」
そんな事を心愛は呟いた。しかし、
「えっ!? いや、なにを言っているんですか?」
その言葉を聞いた一輝は驚いて、そんな事を言ったのだが。
「私は本気ですよ、ただし、それには条件が合って佐藤先輩が私の秘密の話を聞いて、その上で私の目的ために協力をしてくれるのなら、私はそうなるように全力で先輩の手助けをしますよ」
心愛はなんてことの無いようにそう言った。そして、
「それでどうしますか、佐藤先輩、私の提案に乗りますか?」
心愛はそんなことを聞いて来たので。
「えっと、それは……」
そう言って、一輝が悩んでいると。
「……おはようございます、一輝くん」
唐突、一輝の背後からそんな声が聞こえて、一輝が後ろを振り返ると。
「うわっ、綾香さん!?」
そこには、普段より少しだけ怖い笑顔を浮かべた綾香が立っていた。すると、
「おはようございます、立花先輩」
心愛が綾香に向けてそう挨拶をしたので。
「ええ、おはようございます、黒澤さん」
綾香もそう言って心愛に挨拶を返した。そして、
「……えっと、綾香さん、もしかして今の僕たちの話を聞いていましたか?」
一輝は恐る恐る、そう質問をすると。
「いえ、何を話しているのかは聞いていませんよ、勝手に盗み聞きをするのは良くないと、私はそう思いましたから、ただ」
「ただ、何でしょう?」
一輝がそう言うと、綾香は笑顔を浮かべたまま。
「今日の一輝くんは黒澤さんと少し仲良くし過ぎではありませんか? 黒澤さんには斎藤くんという素敵な彼氏が居るのに、一輝くんがそんなに仲良くしていると、斎藤くんが不安に思ってしまうかもしれませんよ」
一輝に対して綾香はそんな事を言った。そして、その言葉を聞いた一輝は、
「えっと……気のせいなら悪いのですが、綾香さんはもしかして嫉妬していますか?」
綾香に対してそんな疑問をぶつけると。
「そう思うのなら、私の目の前で他の女性と楽しそうにお話をしないで下さい」
綾香は少しだけムッとした表情を浮かべて、そんな事を言ったので。
「あっ、その、すみません、綾香さん、ただ、勘違いしないで下さい、僕が好きなのは綾香さんだけで他の女性には全く興味がありませんから……僕にとって綾香さん以上に素敵な女性はこの世界の何処にも居ないので」
一輝がそう言った。すると、
「……もう、一輝くん、そんな調子の良いことを言って機嫌を取ろうとしても駄目ですよ。でも、そう言って貰えたのは嬉しかったので、今回だけは特別に許してあげます」
綾香はそう言ったので。
「ありがとうございます、やっぱり綾香さんは僕にとって世界で一番素敵な彼女です!!」
一輝が続けてそう言うと。
「もう、止めて下さい、一輝くん、そんな風に言われたら少しだけ恥ずかしいです」
綾香は少しだけ頬を赤く染めてそう言った。すると、
「……あの、二人とも人前であまりいちゃつかないでもらえますか?」
心愛は二人にシド目を向けて、そう突っ込みを入れた。なので、
「あっ、すみません、黒澤さん、ただ、綾香さんは可愛すぎるので目の前に居るとつい、僕は冷静さを失ってしまうんです」
一輝がそう言うと。
「もう、一輝くん、大袈裟ですよ」
綾香は嬉しそうに微笑みながらそう言った。すると、
「……はあ、もういいです、ラブラブな二人にこれ以上なにかを言っても無駄なようですから」
心愛はため息を付きながら、呆れた様子でそう言った。
そして、三人がそんなやり取りをしていると。
「結構早めに来たつもりだけど、どうやら俺が最後みたいだな」
そんな事を言いながら、最後に颯太が三人の元へとやって来て。
今日ダブルデートをする予定の四人全員が駅に揃ったので、その後は電車が来るのを四人は静かに待っていた。
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