第62話 心愛との雑談
そして、心愛のそんな発言を聞いた颯太は、
「……ああ、そうだな」
そんな曖昧な返事をした。すると、
「なあ、颯太、今日二人を見て思っていたけど、まだ付き合って日が浅いとはいえ、彼女にはもう少し優しく接した方がいいんじゃないか? お前の態度は彼女に向けるモノとしては無関心すぎると思うぞ」
一輝が颯太に向けてそう突っ込みを入れた。すると、
「……まさかお前に彼氏彼女の事に付いて突っ込まれるとは思わなかったよ。でも、そうだな、折角付き合うことになったんだし、その辺は少し考えてみるよ」
颯太はそんなことを言ったので。
「ああ、そうしてくれ……えっと、それじゃあ、また明日、二人とも」
一輝がそう言うと。
「ああ、また明日」
「明日もよろしくお願いします、佐藤先輩、立花先輩」
颯太と心愛が別れの挨拶をしたので、一輝は綾香と一緒にファミレスを後にした。すると、
「それで、今度は一体何を企んでいるんだ」
颯太は心愛に向けて、そう質問をしたが。
「えー、何がですか?」
心愛はそんなことを言ったので。
「とぼけなくていいぞ、お前が何の理由もなくダブルデートなんて提案するはずないだろ」
颯太はそう言った。すると、
「さすが颯太先輩、私のことをよく分かっていますね」
心愛は素直にそう言って、颯太の言葉を認めたので。
「そうか、それじゃあ今度は一体何を企んでいるのか、俺に教えてくれないか?」
颯太はそう言ったのだが。
「残念ですが、今回の事は秘密にさせてもらいます、でも、別に何か変なことをするつもりは無いので、その点だけは安心して貰っていいですよ」
心愛はそんなことを言った。なので、颯太は少し考えてから。
「……分かった、お前がそう言うのなら今はその言葉を信じよう、けど、明日はくれぐれも余計な事はせず、普通に過ごしてくれよ」
心愛に向かってそう言ったので。
「分かっていますよ、颯太先輩、それより明日の初デートは命一杯楽しみましょうね!!」
心愛はそう返事をしてから、颯太に向けてそう言ったので。
「ああ、そうだな」
颯太もそう返事をした。
そして、次の日の日曜日、一輝は約束していた駅へと自転車へと向かった。そして、切符を買って目的の駅へと降りると。
「あっ、こんにちは、佐藤先輩」
先に駅に来ていて、ベンチに座ってスマホを弄っていた黒澤心愛が立ちあがると、一輝にそう挨拶をして来た。なので、
「ええ、こんにちは、黒澤さん」
一輝もそう言って、彼女に挨拶を返した。ただ、一輝は特に話題も思い浮かばず、彼女と少し距離を取り、黙って心愛の隣に立っていると。
「そういえば佐藤先輩、一つ聞きたいことがあるのですがいいですか?」
心愛は唐突にそんなことを言ったので。
「ええ、良いですよ、なんですか?」
一輝がそう答えると。
「その、こんなことを私が聞いていいのか分かりませんが、佐藤先輩が私の兄との勝負を終えた後、立花先輩は男子生徒から告白されましたか?」
心愛はそんなことを聞いて来た。なので、
「そうですね、少なくとも今のところはそういったことは無いと綾香さんは言っていました。それだけ、黒澤さんの作戦のインパクトが大きかったのでしょうね」
一輝がそう答えると。
「そうですか、それなら私はこの作戦を実行して良かったです」
心愛は安心したようにそう言ったのだが。
「でも、少しだけ疑問なんですよね、何で僕が負けたのに、綾香さんへの告白が無くなったのでしょうか?」
一輝がふと、そんな疑問を口にすると。
「それは多分、立花先輩の告白への返事が良かったからでしょうね」
心愛がそんな事を言ったので。
「綾香さんの返事がですか?」
一輝がそう答えると。
「ええ、そうです、佐藤先輩は気を失っていたみたいなので、多分聞いていないのでしょうが、私の兄は佐藤先輩に勝って満を持して告白したのに、立花先輩にあんな風に振られている様子を眼にしたら、多分誰もが立花先輩に告白をしても振られるだろうと、そう思った筈ですよ、それに」
「それに、何ですか?」
一輝がそう質問をすると。
「負けたとはいえ、佐藤先輩があそこまで粘る何て、恐らくは誰も思っていなかったので、そんな先輩の姿を観て、少しは佐藤先輩の事を立花先輩の彼氏として他の生徒たちが認めてくれたのもあるのかもしれませんよ、まあ、これはあくまで私の想像で違うのかもしれませんが」
綾香はそんな事を言った。そして、その言葉を聞き終えた一輝は、
「そうですか、それなら、その話が本当だと嬉しいですね……ただ、こんな結果を得られたのも全て、黒澤さんがこの作戦を実行してくれたからです、本当にありがとうございました」
一輝は改めて、そうお礼を言ったが。
「別に気にしなくてもいいですよ、昨日もお話しをしましたが、私がこの作戦を実行したのは佐藤先輩たちのためではなく、私の大好きな颯太先輩のためですから」
心愛はそう言ったので。
「そういえばそうでしたね……ただ」
「ただ、何ですか?」
心愛はそう聞いて来たのだが。
「いえ、なんでもありません」
一輝はそう言って言葉を濁した。すると、
「えー、そんな風にはぐらかされたら余計に気になるじゃないですか、教えて下さいよ」
心愛はそう言って来たので。
「……その、話してもいいですが気分を悪くしないで下さいね」
一輝はそう答えると。
「んー、それは話の内容によりますね」
心愛は笑顔でそんなことを言ったので。
「……そんな風に言われると、非常に話し辛いのですが」
一輝がそう答えると。
「安心して下さい、余程変なことを言うかセクハラみたいな発言でもしない限り、私は怒ったりしませんから」
心愛はそう言った。なので、一輝は少し考えてから。
「分かりました、それじゃあ話しますね」
一輝がそう言うと。
「ええ、お願いします」
心愛は笑顔を浮かべてそう言ったので、一輝は話し始めた。
「えっと、黒澤さんは昨日、僕と黒澤さんのお兄さんの勝負があった日から颯太と付き合ったと言っていましたよね?」
一輝がそう質問すると。
「ええ、そうですよ」
心愛は素直にそう答えたので。
「えっと、黒澤さんはどうして、そんなタイミングで颯太と付き合い始めたのかなと、ふと疑問に思ったんです。黒澤さんの話だと、颯太とは小学生の頃から仲が良かったみたいですが、それならもっと早くから颯太と付き合っていても良かったんじゃないのかと、僕はそう思ったんです」
一輝は正直に昨日疑問に思ったことを口にした。すると、
「成程、そういうことですか、確かに先輩の疑問は最もですが、何故そんなタイミングで私たちが付き合うことになったのかは、ちゃんとした理由があるんですよ、それに私と颯太先輩はまだ正式な恋人同士ではありませんから」
心愛はそんなことを言った。なので、
「えっ、それって一体どういうことですか?」
一輝がそう質問をすると。
「……知りたいですか?」
心愛はそんなことを聞いて来たので。
「それは、まあ、颯太は僕にとって一番の友達だし、その友達の彼女にそんなことを言われたら、当然気になりますよ」
一輝は正直にそう答えた。すると、
「そうですか……まあ、今回の件を知っている佐藤先輩になら教えても良いですが、それには一つだけ条件があります」
心愛はそう言った。なので、
「条件ですか?」
一輝がそう聞くと。
「ええ、私は今、ある目的を達成するために色々と行動をしようとしているのですが、佐藤先輩が私の話を聞くのでしたら、私の目的を達成するために佐藤先輩にも協力して貰います」
心愛はそんな言葉を口にした。なので、
「……えっと、その目的というのは何なのですか?」
一輝がそう質問をすると。
「それは言えません、私の目的は佐藤先輩が聞きたい話と深くかかわっていることなので、ですが、一方的に協力して貰うのはさすがに申し訳ないので、佐藤先輩が私に協力してくれるのなら、私も佐藤先輩の為に色々と協力してあげますよ」
心愛はそんなことを言ったので。
「協力をすると言いましたが、一体何に協力してくれるのですか?」
一輝がそう質問をすると。
「それは勿論、佐藤先輩が立花先輩との仲を今以上に進めるための協力ですよ!!」
心愛はそう言った。しかし、
「えっと、申し訳ないですが、黒澤さんの作戦のお陰で僕と綾香さんは今、とても仲良く過ごせていると思いますよ」
一輝はそう答えたのだが。
「それはお二人を見ていればよく分かりますよ。でも、私が言いたいのはそういう話ではありません」
心愛はそんな言葉を口にした。なので、
「えっと、それじゃあ一体、どういった話なのですか?」
一輝がそう質問をすると。
「佐藤先輩、単刀直入にお聞きします。立花先輩とはもうエッチなことはしましたか?」
心愛は唐突にそんな爆弾発言をした。
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