第46話 両親との雑談
そして、綾香がリビングの中へ入り、一輝の母親に言われるがまま、食事用の机の前にある一つの椅子に座ると。
「えっと、立花さん、何か飲みたいモノはあるかしら? 大したモノはないけど、家にあるモノでよければ用意させてもらうわよ」
一輝の母は綾香に対してそう質問をした。すると、
「えっと、それなら、紅茶を頂いてもいいですか?」
綾香は少し遠慮がちにそう言った。すると、
「ええ、勿論よ、ほら一輝、いつまでもそんなところに突っ立ってないで、立花さんの為に早くお湯を沸かしなさい!!」
一輝の母は一輝に向けてそう言ったので。
「えっ、あ、うん」
一輝はそう返事をすると、リビングの奥へと行き、ヤカンに水を入れてお湯を沸かし始めた。そして、そんな息子の姿を一輝の母が確認すると。
「因みに、立花さんは甘いお菓子は好きなのかい?」
一輝の母は再び、綾香に対してそんな質問をした。すると、
「……ええ、好きですよ」
そんな勢いに押されつつも、綾香は正直にそう答えた。すると、
「そうかい、ねえ、お父さん、カップ麺とかを仕舞っている棚の奥にチョコレートが入っている箱が置いてあるから直ぐに取り出して!! 今家にあるお菓子の中で一番高価なモノだけど、折角一輝がこんな素敵な彼女を連れて来たんだから、今食べましょう!!」
今度は一輝の父親に向けてそう言った。すると、
「ああ、そうだな、こんな素敵なお嬢さん相手に飲み物しか出さないというのも失礼な話だからな」
一輝の父親もそう言って、直ぐに棚のある方へと駆けて行った。そして……
「それじゃあ、立花さん、遠慮せずどうぞ」
一輝の母は綾香に向けてそう言った。そして、そんな綾香が座っている席の前には紅茶とチョコレートが出されていて。
一輝の母の隣には一輝の父が座り、父の向かいの席で綾香の右隣りの席には一輝が並んで腰かけていた。そして、
「さあ、立花さん、これくらいのモノしかないけど遠慮せず食べてね」
綾香に向けて一輝の母が満面の笑みを浮かべながらそう言うと。
「……ええ、頂きます」
そんな母の気迫に少し押されつつも、綾香はそう返事をすると、一輝が淹れた紅茶の入ったカップを手に取ると、ゆっくりと紅茶を飲んだ。そして、
「あっ、一輝くん、この紅茶とても美味しいですよ!!」
自分の右隣りの席に座っている一輝の方を振り向いて、綾香はそう言った。なので、
「そうですか、それなら良かったです」
一輝は少し安心した様子でそう返事をした。すると、
「よかったな、一輝、彼女さんに褒めてもらえて」
一輝の目の前の席に座っている彼の父がそう言った。すると、
「それよりも立花さん、チョコレートも遠慮せずに食べてね」
一輝の母は綾香に向けて続けてそう言った。なので、
「ええ、頂きます」
綾香はそう返事をすると、今度は箱の中から一粒のチョコレートを取り出して、自分の口へと運んだ。そして、それをゆっくりと食べ終えると。
「……とても美味しいです。その、事前に何の連絡もせずに急に訪れた私に対してこんなに親切にして下さって、本当にありがとうございます」
綾香はそんな風に、一輝の両親に向けて頭を下げてそう言った。なので、
「そんな、気にしなくていいよ。確かに、息子にこんな美人な彼女が居たと知った時はかなり驚いたけど、立花さんのような綺麗で礼儀正しい子なら家はいつでも歓迎するよ」
一輝の父は綾香に向けてそう言った。すると、
「そんな、大袈裟ですよ、お父さま」
綾香は少しあたふたしながらそう言うと、照れ隠しをするかのように、再び紅茶を自分の口元へと運んだ。すると、
「そんなことはないわよ、立花さんは私が今まで観てきた女性の中でも一番だと思えるくらいの美人な女性よ。ただ、そんな立花さんはどうして、一輝と付き合うことになったの?」
母親はそんなことを言った。すると、
「けほっ!?」
その言葉を聞いた綾香は思わず、飲んでいた紅茶を喉に詰まらせてその場で咽てしまった。なので、
「綾香さん!? 大丈夫ですか!?」
一輝は慌ててそう言うと、少し遠慮がちに彼女の背中をさすって上げた。すると、綾香は徐々に呼吸を落ち着かせていった。そして、
「……はあ、はあ、落ち着きました、一輝くん、ありがとうございます」
綾香がそう言ったので、一輝はゆっくりと彼女の背中から手を離した。そして、
「母さん、急に何を言っているんだよ!!」
一輝は語気を強めてそう言った。すると、
「だって、気になるじゃない、立花さんみたいな綺麗な子がどうして家の子と付き合ってくれているのか。あ、でも、立花さんがどうしても話たくないのなら無理に話さなくてもいいからね、でも、もし二人が話してもいいと思えるのなら、少しだけでもいいからその理由を聞かせて欲しいわ、ねっ、お父さん」
一輝の母は自分の隣に座っている自分の夫に向けてそう言った。すると、
「……ああ、そうだな、嫌なら無理に話してくれとは言わないが、二人が別に話しても大丈夫だと思っているくらいのことなら、出来れば聞かせて欲しい」
母に続いて一輝の父親もそう言った。そして、その言葉を聞いた綾香は、
「えっと、どうしますか、一輝くん?」
少し困った表情を浮かべた綾香はそう言って、一輝の方を見て来た。なので、
「えっと、僕は別に話をしてもいいと思ってはいますが、綾香さんが話したくないと思うのなら、無理に話さなくてもいいですよ」
一輝はそう言った。そして、その言葉を聞いて綾香は少しだけ考えてから。
「いえ、私も別に話していいと思っているので、少しだけお話をさせてもらいます」
一輝に向けてそう言うと、綾香は改めて一輝の両親へ向き直ると。
「えっと、私と一輝くんが始めて出会ったのは、去年同じクラスだったからです」
綾香は一輝の両親に向けてそう言った。すると、
「ということは、一輝と立花さんはクラスメイトだったことがキッカケで仲良くなったのね」
一輝の母は綾香に向けてそう言った。しかし、
「いえ、違います、確かに一輝くんと私はクラスメイトでしたが、学校では私たちは全くといっていい程接点は無かったです、ずっと席が離れていたので、私たちは教室では会話をする機会は殆どありませんでしたから」
綾香は正直にそう答えた。すると、
「あら、それならどうやって二人は仲良くなったの?」
一輝の母は当然のように、そんなことを聞いて来た。なので、
「えっと、それはですね」
そう言って、綾香は一輝と仲良くなった経緯を大雑把に説明した。
一輝と仲良くなったのは今から一年程前で、自分が困っていた所を一輝に助けてもらったのがキッカケで。
その後、お互いに同じような趣味を持っていたので、そのことを通して、お互いに仲良くなっていって。
二年生になって直ぐに一輝から告白されて、綾香もそれにOKしたので付き合い始めたと、綾香は一輝の両親に対してそう告げた。すると、
「成程ね、でも、一輝にしてはよく頑張ったわね。幾ら仲良くなったといっても、あんたがこんなに美人な子に告白する度胸があるなんて私は思ってもいなかったわ」
一輝の母は自分の息子に向けてそう言った。なので、
「いや、そういうわけじゃないんだ。実は、僕が綾香さんに告白したのは、颯太に告白しろと言われたからなんだ」
一輝は正直にそう答えた。すると、
「あら、そうなの、それなら斎藤くんには今度お礼を言わないといけないわね、そのお陰で一輝には、こんな素敵な彼女が出来たのだから」
一輝の母はそう言った。そして、この話はここで終わるのかと、一輝がそう思っていると。
「それじゃあ、次の質問だけど、一輝と立花さんはお互いのどんな所が一番好きなの?」
二人の馴れ初めの話を聞いてテンションが高くなったのか、一輝の母は今度は二人に対してそんなことを聞いて来た。
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