第45話 両親への紹介
そして、一輝の言葉を聞いた綾香は、
「えっと、私としては一輝くんの提案はとても嬉しいのですが、一輝くんは、いえ、一輝くんのご家族はいいのですか? 折角の家族水入らずの場所に私が混ざってしまっても」
少し心配した表情を浮かべて、綾香は一輝に対してそんなことを聞いて来た。なので、
「ええ、勿論です、綾香さんは僕の大切な彼女なのですから、ただ」
「ただ、何ですか?」
綾香がそう質問をすると。
「僕の両親は僕に彼女が居ることは知らないので、綾香さんみたいなとんでもない美人が僕の彼女だと急に言っても、多分僕の両親は直ぐにはそんなことは信じないと思いますが、そこに関しては勘弁してくださいね」
一輝は少し苦笑いを浮かべながらそう言った。すると、
「とんでもない美人だなんて、一輝くんそれは私のことを褒めすぎですよ。でも、もし一輝くんの両親が私のことを一輝くんの彼女だと認めてくれないのでしたら、私なりに精一杯努力して、私が一輝くんの恋人だと認めてもらえるように頑張りますね」
綾香はそんなことを言った。しかし、
「あ、いえ、そんな……綾香さんは今のままでも十分に素敵な人なので、何も頑張らずこのままで大丈夫ですよ。というよりも、綾香さんがこれ以上頑張って今よりも魅力的になってしまったら、僕が絶対に追い付けなくなる程の遠い存在になってしまうので、綾香さんはどうか今の綾香さんのままでいて下さい」
一輝は慌ててそう言った。すると、
「そうですか、分かりました、一輝くんがそう言うのでしたら、そうさせてもらいます」
綾香はそう言った。なので、
「ええ、是非そうして下さい」
一輝はそう答えた。そして、
「えっと、それでは綾香さん、そろそろ僕の家に入りますか」
一輝がそう答えると。
「……ええ、そうしましょう」
綾香にしては珍しく少し緊張した面持ちでそう言った。なので、
「そんなに身構えなくても大丈夫ですよ、僕の家は綾香さんの家程立派ではないですし、僕の両親は何てことはない普通の人たちなので、綾香さんはいつも通りにしていたら大丈夫ですよ」
一輝はそう言うと、自分の家の玄関の扉を開けて靴を脱いで家へ上がると、綾香も一輝の後から靴を脱いで、一輝の家へ上がった。
そして、一輝は少し緊張した表情で一輝の後ろを付いて来る綾香のことを引き連れてリビングへと向かった。そして、
「ただいま、母さん」
一輝はそう言って、自分の家のリビングの扉を開いた。すると、
「あら、お帰りなさい、一輝」
椅子に座ってテレビのニュースを見ていた、小柄で少しふっくらとした体形の女性である一輝の母親がそう言うと、一輝の方へ振り向いてそう言った。しかし、
「あら、一輝、誰かお友達が来ているの?」
一輝の背後に誰か居るのに気が付いて、一輝の母親はそんなことを聞いて来た。なので、
「ええ、そうです。えっと……綾香さん、これが僕の母親です」
一輝がそう言って、リビングの中へと移動した。すると、一輝の背後に隠れていた少し恥ずかしそうな表情をした綾香が一輝の母親の前に姿を現した。すると、
「……えっと、一輝、この綺麗なお嬢さんは一体誰なの?」
一輝の母親は立花綾香の姿を観て、かなり驚いた様子でそんなことを聞いて来た。なので、
「あっ、えっと……初めまして、一輝くんのお母さま、私は現在、一輝くんの彼女をやらせてもらっている立花綾香といいます、よろしくお願いします!!」
少し緊張した口調で綾香はそう言ってから頭を下げて、一輝の母親に挨拶をした。しかし、
「……え?」
その言葉を聞いても、一輝の母親は一瞬何を言われたのか分からないといった様子でそう呟いた。そして、
「ねえ、一輝、今そこにいる美人のお嬢さんが自分のことを貴方の彼女だと言っていたのだけど……冗談よね」
一輝の母親は一輝の方へ振り向くと、そんなことを聞いて来たので。
「信じられない気持ちはよく分かるけど、綾香さんが言ったことは全て本当のことだよ」
一輝はそう言った。すると、
「ええーー!?」
一輝の母親はその言葉を聞いてかなり驚いたのか、そんな風に大声を上げた。すると、
「どうかしたのか、母さん、そんな大声を上げて」
そんなことを言いながら、綾香の背後に眼鏡を掛けた長身で少し細身の中年の男が現れた。すると、
「……あっ、お父さん、実は……」
一輝の母親がそう言ったので、綾香は背後を振り返った。すると、
「うわっ、凄く綺麗なお嬢さんだね、ただ、君は一体」
一輝の父親は綾香の顔を見ると驚いてから、綾香にそう質問をした。すると、
「一輝くんのお父さまですね、始めまして、私は一輝くんの彼女をさせてもらっている立花綾香と言います、今後はこの家に偶にお邪魔する機会があるかもしれませんが、その時はどうかよろしくお願います」
そう言って、綾香は一輝の父親にも同じように頭を下げた。なので、
「それはご丁寧にどうも、そうか、君は一輝の彼女なのか……え?」
一輝の父親はそう言って、綾香に挨拶を返したのだが、その後、直ぐに一輝の方へ振り向くと。
「……なあ、一輝、今ここに居る綺麗なお嬢さんがお前の彼女だと言ったのだが、この話は本当なのか?」
一輝の父親は一輝の母親と同じように、そんな質問を一輝にぶつけて来た。なので、
「ええ、本当です」
一輝はそう答えた。すると、
「……そうか……なあ、お嬢さん、もしかして一輝に何か弱みでも握られているのか?」
父親は綾香に対してそんなことを言った。なので、
「えっ? いえ、そんなことはありませんが、何故ですか?」
綾香は少し困惑した様子で一輝の父親に向けてそう質問をすると。
「いや、だって、自分の息子に対してこんなことを言うのは何だが、一輝は特に目立つことのない普通の人間だろ? それなのに立花さんのような綺麗で礼儀正しい彼女が居るなんて、何か裏があるのではないかと思うのが普通だろ? だからもし、立花さんが一輝から何かで脅されたりしているのならこの場で正直に話して欲しい、息子に可愛い彼女が出来るのは嬉しいが、何か悪いことをしてまで彼女を作って欲しいとは思わないし、私は立花さんの味方をすると誓うから、どうか正直に本当のことを話してくれないか?」
一輝の父親は真剣な表情を浮かべながら、綾香に向けてそんなことを言った。なので、
「あっ、いえ、そんな……私は別に一輝くんからなにも脅されてはいないですし、きちんと一輝くんに告白をされて、私も一輝くんのことが好きだから、一輝くんと付き合っているんです。だから、お父さまもお母さまも安心して、出来れば私たちの仲を応援してもらえると私はとても嬉しいです」
綾香は自分の目の前に居る一輝の父親に向けて笑顔を向けてそう言うと、その後、直ぐに顔を逸らして、少し離れた所で話を聞いていた一輝の母親にも同じように微笑んだ。すると、
「……ええ、勿論よ、こんな冴えない息子に彼女が出来るだけでもとても嬉しいことなのに、その相手が貴方みたいな可愛くて礼儀正し子なのなら、私たちからは何の文句もないわ」
一輝の母親は椅子から立ち上がるとそんなことを言いながら、綾香の元へと歩いて来た。なので、
「ああ、そうだな、私も息子の彼女が君のような美人で素敵な子なら、安心して息子のことを任せられるよ。というか、母さん、いつまでも立花さんをこんなところに立たせていないで、椅子に座ってもらったらどうだ? 彼女に失礼だろう」
一輝の父親がそう言うと、一輝の母親も少し慌てた様子で、
「それもそうね……えっと、確か立花さんだったわよね、汚くて少し狭いところだけど、席に付いてどうかゆっくりと過ごしてね。それと一輝、立花さんのために何かお菓子と飲み物を用意しなさい、折角こんな綺麗な子がわざわざ家に来てくれたのに、何のおもてなしもしない訳にはいかないでしょう!!」
一輝に向けてそう言った。すると、そんな一家の様子を見た綾香は、
「あの、そんなに気を遣って頂かなくても大丈夫ですよ」
少し遠慮がちにそう言ったのだが。
「いいのよ、立花さん、気にしないで、息子の彼女、それもこんな美人を相手に普通の対応をする方が失礼だから、我が家でできる一番のおもてなしをさせてもらいます!!」
一輝の母親はそう言って、綾香をリビングの中へと招き入れた。
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