第9話 友人への報告

 そして、次の日の放課後、一輝は颯太と共に学校の近くにあるファミレスに来ていて。


 晩御飯前ということもあって、二人はドリンクバーだけを頼み、テーブル席に付いていた。そして、


「それで一輝、大事な話っていうのは何なんだ?」


 颯太が一輝に対してそう質問をして来た。しかし、


「それを言う前に一つだけ約束をして欲しいのだけど、この話は絶対に他の人にはしないって約束をしてくれないか? そうじゃないとこの話は颯太には出来ないんだ」


 一輝が真剣な口調でそう言った。すると、


「そうか、分かったよ、お前がそう言うのなら、この話は絶対に他言しねえよ。それで、肝心の話の内容は何なんだ?」


 颯太は改めてそう言った。なので、


「実は僕は今、立花さんと付き合っているんだ」


 一輝がそう言うと。


「ふーん、そうなのか」


 颯太はそう呟くと、手元のグラスに注いでいた炭酸飲料を飲み始めた。なので、一輝は思ったよりも反応が薄いなと思いながら、そんな颯太を見ていたが。


「……なあ一輝、さっきの言葉、もう一回言ってくれないか?」


 颯太はグラスを机の上に置くと、そんなことを言ったので。


「だから、僕は今、立花さんと付き合っているって、そう言ったんだよ」


 一輝が改めてそう言うと。


「はあああああ!?」


 颯太は大声でそう叫んだので。


「馬鹿、声が大きいよ」


 一輝が慌ててそう言った。すると、


「っと、悪い、さすがに店の中で叫んだら迷惑だよな……ただ、どういうことなのかきちんと説明してくれないか? 俺はお前が立花さんに振られたとそう思っていたからな。何たって、当の本人であるお前自身がそう言ったんだからな」


 颯太は一輝の顔を見てそう言ったので。


「分かっているよ、実は……」


 そう言って、一輝は金曜日から今日までの出来事を颯太に説明し始めた。


 実は自分から彼女への告白は成功していのだたが、立花綾香がこのことは誰にも言わないで欲しいと言ったから、颯太には嘘を付いていた事。


 そして、学校ではこれまで通り、ただの同学年の生徒として特に関わる事もなく自分たちは過ごしているのだが、実は毎晩、彼女と電話をするくらいの仲にはなれたこと。


 そして昨日、綾香からこのことを颯太にだけは話してもいいと許可をもらったので、今こうして颯太にだけは真実を話して。


 その代わり、この事は他の誰にも決して言わないで欲しいと、一輝は改めて颯太に強くお願いをした。


 そして、一輝の全ての話を聞き終えた颯太は、


「成程な、取りあえず俺が思ったことは、立花さんと毎晩電話できるような仲なら、もっと早く立花さんに許可をもらって、俺に本当のことを教えて欲しかったってことだな。ここ数日間、俺がどれだけお前のことを心配していたと思っているんだ?」


 一輝に向けて少し嫌味の様にそう言った。なので、


「それは悪かったよ、ただ、僕も初めて彼女が出来て、そのことで頭の中が一杯で、そこまで気が周らなかったんだ」


 一輝は颯太に謝りつつも、そう言い訳をした。すると、


「そうか……まあでも、お前が立花さんと付き合える様になったことは素直に祝福するよ、おめでとう、一輝」


 颯太は若干呆れた様な口調ながらも、そう言って素直に一輝に彼女が出来たことを祝った。なので、


「いや、そもそも僕が立花さんと付き合えたのは、颯太があんな罰ゲームを提案してくれたからだよ。だからありがとう、颯太」


 一輝も素直に颯太にお礼を言った。すると、


「何気にするな、親友が幸せになってくれるのは俺としても嬉しいかなら」


 颯太は笑いながらそう言った。しかし、


「ただ、お前の話の中で一つ気になることがあって、お前と立花さんは学校じゃあ今まで通り一切話をしてないんだろ?」


 颯太はそんなことを言ったので。


「そうだけど、それがどうかしたのか?」


 一輝がそう言うと。


「いや、こんな事を俺が言うのも余計なお世話だとは思うんだけど、学校では話しをしないと決めているのなら、休日には二人でデートをした方がいいんじゃないか? 毎晩電話をしているのは良い事だと俺も思うけど、やっぱり実際に会って話をしたり、色んな所に行った方がよりお前たちの仲が深まるんじゃないかって、俺はそう思うけどな」


 颯太はそんな感想を口にした。そして、その話を聞いた一輝は、


「分かっているよ、それくらい、学校で話が出来ないのなら休日くらいは立花さんと二人で過ごしたいと、僕もそう思っているよ、でも」


「でも、何だ?」


 颯太がそう聞くと。


「デートに誘う勇気が持てないんだよ、今は立花さんとの雰囲気もいい感じだし、立花さんは優しいから、多分誘ってもOKしてもらえると思うんだけど、もし断られてその後の雰囲気が悪くなると思うと、それが怖くて中々デートに誘えないんだ」


 一輝はそんな弱音を口にした。そして、そんな一輝の言葉を聞いた颯太は、


「はあ、情けないな、お前たちはもう付き合っているんだし、告白する事に比べたらデートに誘うくらいの事は何てことないだろ?」


 颯太はそう言ったのだが。


「……そんなことはないよ、立花さんに告白した時はどうせ振られるだろうと思っていたから、逆に開き直っていてある意味気楽だったけど、こういう関係になった以上は今後も立花さんとはいい雰囲気でいたいから、僕が余計なことをして今の雰囲気が壊れる可能性があるのなら、それが怖くて中々一歩が踏み出せないんだよ」


 一輝はそう言って、自分のグラスに入っている炭酸飲料を飲んだ。すると、


「それはさすがにお前の考えすぎだと思うけどな。でも、こういう時のお前には俺が何を言っても無駄だろうし……しゃーない、俺も協力してやるか」


 颯太は唐突にそんなことを言ったので。


「協力?」


 一輝がそう聞くと。


「ああ、今週の日曜日に俺とお前と立花さんの三人で何処かに遊びに行こうぜ!! 本来ならお前と立花さんの二人で遊びに行くべきだと思うけど、いきなり二人っきりだと心配だから俺も特別に付いて行ってやるよ!!」


 颯太は一輝に向けて力強くそう言った。






 そして、その日の夜、もう既に一輝にとっては日課になりつつある、立花綾香との電話にて、


「というわけで今日の放課後、颯太には僕と立花さんが付き合っていることを伝えました。颯太にはこの事は誰にも話さないように何度も釘を刺しましたし、話をした場所もファミレスで制服姿の人は見かけなかったので、これが原因で僕たちが付き合っていることがバレる心配は無いと思います」


 一輝がそう説明すると。


「そうですか、それなら良かったです」


 綾香は安心した様子でそう言った。そして、


「えっと、それで立花さん僕から一つ聞きたいことがあるのですが」


 一輝がそう言うと。


「はい、何ですか?」


 綾香はそう返事をしたので。


「立花さんは今週の日曜日に何か予定はありますか?」


 一輝が綾香にそう質問をすると。


「今週の日曜日ですか? いえ、特に予定はありませんが」


 綾香はそう答えたので。


「えっと、それならもし立花さんさえ良かったら、日曜日に僕と立花さんと颯太の三人で何処かに遊びに行きませんか?」


 一輝はそう言った。すると、


「……えっと、私達だけではなく、斎藤くんも来るのですか?」


 少し間を開けて、綾香はそんな当然の疑問を口にしたので。


「はい、日曜日は元々、僕と颯太の二人で遊ぶ予定だったのですが、今日立花さんの事を颯太に話したら、それなら立花さんを入れた三人で遊ぼうという話になったのです」


 一輝はそう言った。


 ただ、勿論これは作り話で、こういう言い方をすれば仮に断られても変な雰囲気にはならないだろうと、颯太が考えたモノだった。


 そして、その話を聞いて綾香は少しの間、何か考え事をしていたようだったが。


「分かりました、迷惑でないのなら私もご一緒させて下さい」


 最終的に綾香は納得したので、一輝は日曜日の大まかな予定を彼女に伝えた。

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