[otomé-ŋòkoɾo]

 ぼくは道化師


 おっす どうしたんだい? 元気がないけど


 でも 憂いを帯びた美人てのも 何だか羨ましいよ


 今の 皮肉に取んないでね


 嫌味言うだけが道化の仕事と思われちゃ ぼくだって困るよ


 そして あんたの困っている原因は……


 ……そっか あんた自分の弟を好きんなっちゃったんだね


 ぼくにしてみれば なぁんだ そんな事かってカンジだけど


 あんた達の世界では いわゆるタブーってヤツだよね


 想いをはっきりさせるまでは自分の力でどうにかなっても


 その後の周囲からの風当たりを考えると ……悩むのもわかるなぁ


 結論から言わせてもらうとさ


 愛ってのは幻想なんだ


 そうなんだって 愛とか愛情とかいうものは


 それがどんな形であろうと 誰と誰の間に発生したものであろうと


 全て「これは愛なんだ」って思い込みなのさ


 でもね 愛がただの幻想と違うところが一つある


 それは…… 二人で共有できる って事さ


 誰かを「好きだ」って気持ち それはそれ自体でホンモノだよね


 でも 一人が思ってるだけじゃ いつまで経っても


 それが愛だって事は証明できない


 だから ふたり なのさ


 それがどんな形であろうと 誰と誰との間であろうと


 二人の想いが同じなら それは紛れもない本物の愛なんだ


 ……何だか ぼくらしくない話で 気が滅入るよ


 さ わかったら 帰った帰った


 その弟クンがあんたの事 どう思ってるか知らないからさ


 保証はできないけど 前に進む努力をしたら?


 どうせ 後ろに道なんてないんだ


 ダメだよ 他人に頼ろうとしちゃ


 自分にできる努力をするんだ その後でなら……


 また話を聞いてあげるからさ

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