食事休憩 寿司と魔法と異世界パーティ(中編)



 はずれ。


「これで40皿目じゃ! またはずれかのぅ~」

「遠隔デスね」


 おかしい。

 普通30皿前後で当たるというのに。ことごとく外している。今日は最初から一貫ものでも勝負しているというのに……なぜ。


「わーっはっはっは! またまた確定だぜぃ!」

「今度はなんだろ~」


 隣のテーブル席は3回ごとの確定で当たりを重ねていく。何といってもガバガバ釘が如く大きな胃袋を持つ橙髪の聖女がいるのもデカい。それに加えて金髪の女騎士がデザートで枚数を重ねている。


「くっそ~、回転数が多ければ抽選回数も多いことを忘れてたぜ……」

「今日は幸運の女神に恵まれませんね」


 一貫ものの大トロを口にしつつ、銀髪の魔女がぼやく。

 そんな様子を見かねてか、金髪の魔女見習いがこちらを伺う。


「あの~魔女様たちも景品が欲しいなら、おまけについてるセットを頼めばいいのでは?」


「俺は景品が欲しいんじゃない、当たりが欲しいんだ!」

「私は景品が欲しいわけではなく、当たりが欲しいのです」


 …………謎のハモり。それは師弟の共通意思。

 そう、俺達はガチャの景品が欲しいのではない。単純に当たり演出に脳を焼きたいのである。そんな熱意あるセリフを前に、勇者は正論(?)を口にした。


「だったら魔法使えばいいじゃねーかよ」

「それは違うじゃん……?」


 食べた後の皿で引くことに意味があるのだ。まぁ、引けていないんだが……


「魔法にも使いどころを誤れば無駄に魔力を使うだけに終わることもありますからね」

「それ、今日のボクの魔法に言ってマス?」

「必要なのは願い、実現させること。明確なビジョンが必要なのです」


 前は制約がどうのとか言ってなかったっけ……?

 ツッコみを入れる前に、銀髪の魔女は懐から一本の杖を取り、俺に差し出した。それは50センチ程の、ダークブラウンの杖。太い幹を荒削りしたような、武骨なそれは、驚くほど手に馴染む。


「杖?」

「来たる魔人戦では、立ち合いこそする予定ですが他者は加勢できません。己の力のみで戦ってください。これはその為の対抗手段です」

「対抗手段って……修行もそこそこだし、そもそも肝心の魔人さんがいないだろ」

「あぁ、それなんじゃが……ほれ」


 魔王が流れるレーンの隙間を指差す。

 ネギトロの軍艦を頬張りながら覗き込むと、熱々の茶碗蒸しと格闘している紫髪の魔人がいた。


「あっふ……って、あ! 貴様!」

「えぇ……」

「我もついさっき気づいたぞぃ」

 

 魔王とのお揃いを意識してか、紫のジャージを着て食事をする宿敵(?)は、どうにもリアクションに困る姿だった。

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