食事休憩 寿司と魔法と異世界パーティ(前編)


 修行の実践後、再び集結した異世界パーティどもは俺を含めて食事へ向かった。


「んで……今日は寿司なワケ?」

「一応あの2人にも協力してもらいましたかね、お礼も兼ねて。今日は私の奢りです」


 とはいえ、銀髪の魔女は同席したくなかったのか、勇者のいるボックス席とは別……俺の方へ(しかも隣)座した。まぁなんともバランスの悪いパーティ編成なのだが……


 ①俺、銀髪の魔女、魔王、灰髪の魔女

 ②聖女、女騎士、魔女見習い、勇者


 絶対②の方がバランスいいじゃん……

 外見だけなら美男美女が座る異様な光景――だが恐れるな、座っている大半の奴は脳を焼かれたパチンカスだ。


「ケッ、もっと高いもん食わせろよな。オレ様は勇者だぞ」

「まったくデス。もっと労ってほしいものデスね」

「いらないなら構いませんが」

「「いる!」」


 勇者達はそれぞれぶーぶー文句言う割に流れるように粉末茶をお湯で溶いていく。さてはこいつら経験済みだな?


「ぬぅ慣れておるな、お湯で手を洗うネタを披露したかったぞぃ」

「お前がガチでやった時は焦ったな」


 少し前に魔王と行った時は、真に受けて洗ったもんだから血の気が引いた。そしてなんともない魔王にさらに引いた。


「くだらないことを言っていないで注文しますよ」

「お前もネタにしてたじゃん……」


 そもそも言い出しっぺは銀髪の魔女である。

 こいつらの俗世への馴染み方は尋常ではない。未だローブ姿ではあるが。


「ぬぉっ⁉︎ 見ろ兄弟子、ガチャの仕様が変わっておるぞ!」

「マジか」


 通常、びっく◯ポンは5皿につき1回抽選を受けられる。どうやら仕様変更らしいが、1皿につき10円プラスした価格にすれば3回に1回当たるそうな……


 ……天井システム?


「ついに寿司業界も天井導入ですか……」

「イカれたデキレからずいぶん変わったのぅ」

 

 発想がパチンカスである。

 しかし3回……15皿に1回確定とは……寿司屋も変わったものだ。


 しかし各皿に10円プラスとはなかなかやる。奢りだから気にしないけど、自分なら普通の確率でやるかな……


「店側に確定されるのは好みませんね」


 えい、と銀髪の魔女は通常確率を選んだ。

 せっかくのチャンスをみすみす流すとは、パチンカスの魔女いかに?


「高くなるではないですか」

「いっつも万券突っ込んでるじゃん…………?」

「金銭感覚が壊れてマスね」

「あるあるじゃな」


 ちなみに勇者パーティは確定システムを選んでいた。

 目の前の10円を惜しみ、1万円は惜しまない。


 まさにパチンカスである。

 

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