Round 11 性格は違えど本質はパチンカス


 

「よし、確定っ! もらった、もらったァッ!」


 時短中に大当たり確定の敵が登場し無事突破。ようやく確変である。額にはじっとりと汗がにじむ。それは暖房のせいではなく、魔力()消費のため。ガチ実践なのに理不尽もいいとこだ。


 それは置いといて。


「ぐはっ……!」


 隣の女騎士が台から帰還。

 どうやら敵の大剣使いの女に全敗したようだ。


「あの女戦士、なかなかやる……!」


 そりゃチャンスアップなきゃ無理だろ……というかどうやって台に入ってんだ……?


「もぉ〜全然当たんないじゃない!」


 反対の妹は俺と同じく真っ当に時短へ挑むものの、見事に外してはや5連単発。初当たりのヒキだけは強い。


「やっぱこれ操作されてんじゃないの?」

「ねー……うん、まぁ疑うよね」


 完全に否定できないところがパチンコである。もっとも、この店はそんなことしなくても繁盛してるが。


「先生ぇっい! 右打ちの必勝法はないのですか⁉︎」

「祈れ」


 できればガキの出現を待てと。

 

「なるほど、神に祈ることで運命を変えるのですね! 聖女様のようです」


 違う、全然違う。

 なんなら聖女のことは大間違いだ。


『キィっ〜、な・ん・でREGなんじゃーいッ! キェッー!』


 おっとりお淑やかなキャラクターが血走った目でレバーを叩く姿はホラーである。


「ですが、自分は己の剣で勝ち取りますっ!!」

「いや、玉入れた時点で……」


 左打ちに戻した直後、女騎士の台はまた虹色に光ると、簡単に初当たりを掴む。右打ちの突破率の低さより、こいつらのリアルラックに遠隔を疑いたい。


「勝利か敗北、自分には勝利以外いりません! では!」


 またもやペンダントを輝かせ、女騎士は右打ちの戦いを自分で挑み始めた。


「我は■■■!」


 誰も座っていない台で、本来いないはずのキャラクターが名乗りをあげる。聞き取れない言語で名乗り、女戦士と対峙する。


「貴様の太刀筋はもう見切った、覚悟!」


 一瞬の立ち合い、そして──

 女戦士の方が倒れた。


「はっはっは! 我が剣に敗北なし!」


 こうして、女騎士も右打ちへ突入するのだった……



 ◇ ◇ ◇



 まぁ、運ってのは収束するもので。


「はぁ〜⁉︎ なんで1回も当たらずに終わるのよ、壊れてるわよこれっ!」

「なぜ……5回転で負けるのだ……」


 初当たりが100回転以内の代わりなのか、時短突破した金髪姉妹は駆け抜けと即転落を繰り返していた。


「先生ぇ〜」

「ええぃ、ヒキの弱さを機械のせいにするな! ぬんっ」


 レバーを押し込み大当たりの振動に、脳を震わせる。


「──こう当てるんだ」


 ドヤ顔である。

 


 初期投資分が少なめだったこともあり、珍しくそれなりのプラス収支で実践は終了。


「うむぅ、ぱちんことは奥が深い……やはりあの時にリーチを引かねば……」

「もー、あそこで当たってれば……!」


 台に直接介入したりどうなることかと思ったが、順当に沼へ嵌っているようだ。


 こいつら、やっぱり適正あるんじゃね?


「ふぃ、とりあえず打てるだけ打ったし魔力も上がったろ。しらねぇけど」


 肩を回す俺を、魔女見習いである金髪妹が眉間に皺を寄せて見つめる。


「ほんっっっっっとうにちょっと増えたかも」

「修行、この方法で合ってる?」


 ノーコメントであった。


「今日も楽しかったですね、先生!」

「お、おう」


 魔力が0.05%上がった、らしい。

 うさんくせぇ〜

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