Round 10 女騎士&魔女見習いによるパチンコ攻略法その2『剣を取れ、栄光の為に』



 時に、姉妹とは似ないことが多い。

(※個人の感想である)


「先生ぇっ、今日は何卒!」

「ホントに女になってる……」


 片や、キラッキラした眼差しで俺を先生と仰ぐ縦セタの女騎士。

 片や、呪いに掛かった姿を見て目を丸くしたままのパーカー姿の魔女見習い。2人に挟まれ今日もパチンコ実践だ。

 当世風の服装で金髪姉妹が久々にやってきたのである……なぜ。


『私達で魔人を探してみます。普段パチンコをしないこの2人に魔力強化を習うと良いでしょう』


 そう言って魔女と魔王と聖女いつもの3人は消えていった……

 打ち続けてたら魔力強化できるんじゃなかったのかよ。


「大事なのは『魔力を使ってる』って意識なのよ、ちゃんと分かってる?」

「いや、全然」


 知らんがな、なんだよその意識。

 

「まぁまぁ久しぶりのぱちんこ、まずは楽しもう!」

「お姉ちゃんはお気楽すぎなの! 魔女様に任されてるんだから、ちゃんとしなきゃ!」


 ところで妹は未成年では無かったのだろうか……いや、きっと成人だろう。きっと異世界だと15くらいが成人なのだ。そうなのだ。


「とにかくさっさと打つぞ。ここんとこマジで勝ってねぇんだからな」


 薄い財布から諭吉様を取り出して捧げる。金髪姉妹は姉の女騎士が財布を出したが、相変わらず紙幣が可哀想なくらいぎっちり詰まっていた。


「マジで何しにパチンコに来てんだ……」

「先生? なにか言いました?」


 きょとんとした眼差しを返されると反応に困る。パチンコは遊技なのだと言わんばかりである。……いや、名目上は『遊技』で合ってんだけどね。


 今日はパチンコの中でも『萌え系台』に挑む。

 10年以上の歴史を持つ戦国武将を題材にした乙女パチンコである。通常のミドル帯よりも当たりやすい1/222.9の確率。俺と女騎士は転落式、魔女見習いは遊タイム付きの台。


 バラエティ寄りで導入が少ないからな、しゃーない。

 ようやく実践を開始し、各々が画面とのにらめっこを始める。今日は4円パチンコだからなのか、ハンドルを握る右手から何か抜けるような感覚が続く。


 50回転を越えたところで、女騎士が挙手。


「先生、ひとつよろしいですか?」

「ん、どした?」

「このぱちんこの登場人物、こちらの世界では男性の名前とお見受けしますが……なぜみんな少女なのでしょうか?」

「ホントだ、なんでなの?」


 何でなの、と言われましても…………そういう世界のお話なんだとしか。改めて聞かれると返答に困るな。


 あ、俺もいま似たようなもんか。


「理由はない。そういうもんだと思っとけ」


 萌え台に深いことを考えてはいけない。

 Don't think feel、だ。


 くだらないやり取りをしていると魔女見習い金髪妹の台が騒がしくなる。青い炎の演出、保留は赤……これは……


 よくあるキャラリーチに発展し、簡単に数字が揃う。画面の前にはドヤ顔のガキ。


「お先ぃ~」

「ほぉ、今日は遊タイム直前じゃなかったんだな」

 

 リアルラックもしっかり修正してきたようだ。感心感心。煽りに眉をひそめるも、妹はずいぶん余裕の笑みだった。


「見てなさい、今日こそ大勝ちしてやるんだから!」


 あら、フラグかな?


 今回打っている台のポイントは初当たり後の時短だ。通常の確変よりも少ない回転数の間に当たりを引く必要があるわけで……リアルラックを鍛えていようが、ヒキがなければ意味がないのだ。


「ちょっと⁉ あんな子供に負けるのよ!」

「はっはっは、そういうもんだ」


 むしろ微笑ましい。自分の台ではない時に熱い演出が外れるのを見ると心が安らぐ。きっと俺は、満面の笑みで妹の方を見ているだろう。


「先生ぇっ! 自分も当たりました!」

「はや……お前ら運良すぎだろ」


 女騎士まで初当たり。この姉妹……俺を挟んで先に当てるなよなぁ……俺の修行だろ!!


「くぅ~せっかく当てたのにぃ」

「仇はお姉ちゃんに任せろっ!」


 またアイテムを使って魔法でもやるんだろうか?

 そういえばこの台、金髪の女剣士がいたっけかな…………初当たり「0」のデータカウンターを見ていると、女騎士はハンドルから手を放し首を回して深呼吸。


「では、行ってきます。先生もご武運を!」

「は?」

「お姉ちゃん、魔力はばっちりだよ!」

「うむ!」


 妹の方からペンダントを受け取り、女騎士はそれを握り締め目を閉じる。


「――望むは勝利、敗北は不要。しかし欲するものは待てど来ることはない…………希望は我が手で、仇なす者から奪い取る――!」

「いっけぇ、お姉ちゃん!」

「うぉ、光量下げて……!」


 一瞬の光と共に、女騎士が消える。


「『剣を取れ、栄光の為にソード・オア・スレイヴ』!」

 

 どこに消えたかと思えば……女騎士は初めて会った時の鎧姿で、画面の中で敵の女キャラと対峙していた…………


「がんばれーおねえちゃん!」

「んなアホな」


 自分で当たりを掴み取るにしても……台に入り込むとは……

 魔法ハンパねぇな。



 ◇



 参考機種:P戦国乙女6 暁の関ヶ原

      P戦国乙女 LEGEND BATTLE


      個人的には伊達マサムネが推し。「日本晴レ」、いいよね……!


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