Round 3 カスタムの極致は当たりを待つのみ



 結論から言うと、ホントに当たった。



 脳内に突如浮かんだ演出の数々はその通りに画面に映し出され、見事大当たり。そして右打ち確変中である。


「だぁっーはっは! 下らぬ変化でイライラするよりも健全じゃろ?」

「自分でオプション付けるなよ……」


 もはやお手軽カスタムだな。

 そして現在も魔法継続中……なのだが、脳内に何も起きないということは当たりはない。


「ぬぉ、キタキタ!」


 バトルリーチへ発展、魔王の髪が台の風ラッキーエアーに吹かれ、そしてボタンを押し―――



 カザアナ! カザカザカザカザアナ――カザアナアケルワヨ!



 ピンクのツインテール娘が画面中心に現れ大当たり。


「ふはははははーっ! 視える、視えるぞぃ!」


 『究極の先読みシステム』……とでも言うべきか。信頼度100%、安心安全の未来予知カスタマイズ。ここまでくると当たりを待つだけのパチンコだと思うが……


 刹那、脳裏を過るヒロインのあられもない姿。

 当たった……いや、当たる、か。



 カザアナ! カザカザカザカザアナ――カザアナアケルワヨ!


 

 癖になる某声優ボイスが脳を焼く。

 あ゛ぁ゛~〇ぎゅううううううううううううううううううう

 

 脳内先読みシステムと強インパクトのキャラクターボイスに脳内回路がショート寸前。あとはこれの繰り返しです。


「当たり……当たりのビジョンをくれぇ~!」


 先読みに呑まれた者の末路、それは――――



 

 身体は当たりを求める。




 数時間後、そこには回転数を重ねる俺。


「兄弟子ぃ~そろそろ引き上げるぞぃ」

「い、いや、まだまだ……!」


 まだ先読み足りない! もっと当たりの瞬間を見たいッ!

 レバブルしかり、ポキューンしかり、

 大当たりの予兆を感じさせる挙動に、俺達パチンカスは弱いのだ。


「さ、さすが兄弟子。魔法に強烈な影響を受けておる……」

「結局あの後2回当たっただけで全然脳が焼けねーぞ!」

「いやいや、そこは己のヒキじゃて」

 

 先読みが全然ごな゛い゛ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!


「ちょ、ちょっとやりすぎたかの……?」


 未来予知ができたとしても、当たらなければ意味はない。

 『究極の先読みシステム』も、ヒキ弱には宝の持ち腐れであった……



 ◇ ◇ ◇


 

 当たりを追い続けたものの、大当たりのビジョンが見えることはなかった。


「くそっ、未来の先読みがこねーじゃねーかッ!」

「カスタマイズすると当たりにくくなるからのぅ」


 ※そんなことはありません。


「まーそろそろ引き上げじゃな」

「今日はおけらだぁっ!」


 財布は空っぽ。どうしてこうなった。

 

 カザアナアケルワヨ!


 ふと、疑問が再燃する。負けのことはともかく、ちょっと気になる。


「……なぁ魔王、このキャラのセリフ言ってみ、両手で髪持って」

「なんじゃ急に」

「いいからいいから」

「んぬぅ?」


 言われるがまま、魔王は艶のある黒髪を両手に握り、擬似ツインテに早変わり。



「ゴホンッ……んでは、『風穴空けるわよっ』!」


 

 威厳とか偉大さは感じられないが、その声は確かにピンクツインテと瓜二つ。魔法の効果が切れたのか、脳は焼けない。


「う~ん……やっぱ似てる」


 まぁ、だからなんだという話なんだが。

 それからしばらく、魔王の声が脳内に残り続けるのであった……

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