Round 2 魔王によるパチンコ攻略法3『そして結末へと辿り着く』



「ほぉ~、F商事の台はこんなにスッキリしておったのか」

「今もまともな方だけどな、このメーカー台」


 信頼度は別として。


 黒い台枠、余計な付属品のないシンプルな設計と、今も引き継がれる中心の赤と白のボタン。右上にはラッキーエアーが吹く装置。枠上部にはピンク色のツインテールの少女が2丁拳銃を構える。ヒロインいっぱいのアニメ台だ。


「信頼度ブレイカーなんだよ」

「ならカスタムすればよいじゃろ?」

「してもなぁ……あんまり変わらないと思うぞ」


 この台はそういうものなのだ。


「なら物は試しじゃ、打とうぞ兄弟子」

「……まぁ、いいか」


 どうせ何打つか決めてねぇし。

 流れるように着席からの1万円諭吉投入。


 保留が入ると台下部の拳銃がガチャガチャと動きを見せる。基本は保留の弾が変化しなければ寒い。しかしこの台、難点があり……


「うぉ⁈ 変な保留が出たぞぃ!」


 ハート型の保留が魔王の台に現れている。ちなみにそんなに熱くない。対して期待度も高くないリーチへ行き、ごく普通に外れる。


「んぅ〜、最近のカスタム自由度に慣れたせいかのう」

「ま、当たれば当たるんだ、気長に待てよ」

「それではただ打つだけではないか!?」

「それでいいだろ……」


 なんで魔法使う前提なんだよ。

 もう少しおとなしーーーーーくパチンコを打てんもんかね。


「このような無駄に長い偽りの保留、我が許さぬ!」

「えぇ……」


 黙ってパチンコを打てないのか異世界人は。

 魔王は左手から黒いモヤを生み出し、ついでに俺の台にまで飛ばした。


「受けよっ、我が魔法!」

「うぉ」


 ………

 ………………

 ………………………………


 台に変化はない。

 なのに魔王はドヤ顔である。


「なんかしたのか?」

「まぁまぁ、当たるまで見ておれ」


 なんの細工をしたのやら……

 数分経過しても特に何か起こる様子はない。


 そして、新たに保留が入った。


「当たったァッ!」

「はっ? ……って、なんも出てねーじゃねーか」

 

 ごく普通の保留が並んでいるだけである。

 しかし――


「刮目せよ! 我が魔法は真実のみ現わすぞぃ!」


 魔王の細い指、その先にある保留。

 そいつは黄色と黒のストライプ――DENGER柄に変わった。


「くらだぬ保留変化なぞ不要ッ! 我が欲するは大当たりの真実のみ! これが魔王による攻略法『そして結末へと至るリーチ・ザ・トゥルース』ぞぃ!」

「んなアホな……」


 未来予知かっての。

 瞬間、自分の台のチェッカーに球が入った。


 脳裏を駆け巡るは赤保留変化、激熱演出、ヒ〇テリアモードからの弾丸ストック4、役物落下、タイトル金…………


 大量の情報が脳を焼く。


「な……なんだ、今の」

「ぬっふっふ……兄弟子も?」


 ま、まさか……

 見上げた先、液晶画面。


 そこに座すは赤保留。


「さぁ、風穴を空けようぞ!」


 高らかに吠える魔王。ハイトーンボイスには一切の濁りはなく――

 ……あれ、なんか台の声と似てね?



 ◇


 参考機種:CR緋弾のアリアⅡ

 くぎゅうううううううううううううううううううう

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