食事休憩 寿司屋のガチャですら脳を焼く異世界の者達


「我、みそラーメン」

「マグロを4皿~」

「私は唐揚げでももらいましょうか」


 ……聖女のオーダーが、唯一寿司屋であることを再認識してくれる。

 俺は魔王の発動した魔法『約束された舞台ホープフル・ステージ』の対価を払う為に寿司屋に来たんだ……回転寿司屋に。


「しかし、生魚を食すとは今でも考えられませんね」

「確かにぃ……あちらでは港街くらいでしか食べられなかったですぅ」


 とか言いつつ銀髪の魔女は流れてきたサーモンをするっと取った。そして綺麗な箸の所作で握りを掴み、口へ運ぶ。


「だぁーっはっはっは! やはり勝利の酒はうまい!」


 魔王は魔王でまたビールである。

 こいつら現代日本を満喫しすぎだろ……


「んぅ~おいひいでふぅ~」


 聖女は聖女で既に10皿積んである……もちろんまだ開始数分である。  

 魔法使っても使ってなくても食うんじゃねぇか!! 


「さて……我が兄弟子にここを奢らせるのはほかでもない、これじゃぁっ!」


 魔王はレーン上のパネル、さらにその上に座す機械を指差す。多くの色のカプセルが入ったガチャ……通称『びっ〇らポン』。

 この回転寿司屋は各テーブルごとに食べ終えた皿を片づけられるスペースがあるのだが、5枚投入ごとにこのガチャが引ける。何種類かの演出があるが、見事当てるとガチャ商品ゲットである。


 正直中身などどうでもいい。

 パチンコの後にも『当たり』が欲しいのである。まぁ、焼肉と違ってそこまで出費にはならんからいいだろ……


「さっそく投入じゃ! 聖女、やれぇい!」

「は、はいぃ~」


 5枚投入。

 キャラクター達が徒競走を始める……チャンスアップはない。数秒後、あえなくはずれ。

 このガチャ、チャンスアップがなければほぼ当たらない。逆に言えば通常とことなる演出があれば大当たり濃厚だ。


「ぐぬぬぅ……聖女ぉ、もう一回じゃ!」

「了解ですぅ」


 今度は金魚すくい。

 またもやチャンスアップはない……はずれだ!


「くぅ~一筋縄ではいかんぞぃ」

「目安は25皿くらいだったっけかな?」


 ポンポン当たってたら中身の補充追いつかないしな。

 

「ならば食えばよし! 寿司をくらえぇい!」


 パチンカス軍団パーティVSびっ〇らポン、開幕。

 魔法がいるかよ、こっちは回転数稼げる聖女がいるんだぜ?


 当ててやるよぉっ!



 ◇ ◇ ◇



 30皿目を超え、ようやくチャンスアップ演出が発生。そして……

 『あたり』


「ぬぉっ! ようやく来たぞぃ!」


 景品はなにかアニメのコラボキャラだったが、それは別にいい。

 もうちょっと当てたい。なぜなら今33皿、あと2皿でまた引けるのだ。


「お前らまだ満腹じゃないよな?」

「無論じゃ! 酒で胃は拡張済みじゃい!」

「腹3分目ですぅ」

「まだまだ序の口ですよ」


 頼もしいことで……


 宴は続く。

 当たりに満足する、その時まで。


 ……いくらになるかなぁ。

 

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