Round 18 魔王によるパチンコ攻略法2『約束された舞台』 



 パチンカスたるもの、常に勝ちに貪欲であらねばならない。







 ――ポキューン



 チェッカーに球が入った瞬間、台下部の宝玉が赤く染まる。ともに鳴らされた電子音は……ある種、中毒性の高いドラッグ。


 パチンカス諸兄には既になじみ深い「鬼がかっている」台である。確変3000発or1500発通常の振り分けはまさにHEAVEN or HELL。


「くぅ~! この音を聞くために生きてるぞぃ」

「同感」


 まぁ今のは外れてしまったんだが。

 これにまつわる魔法をやるのかもしれないが……


「制約の話聞くと魔法使ってパチンコ打つのも考え物なんだよなぁ」

「なんじゃ急に?」

 

 先日の聖女の話をすると、魔王は笑い飛ばした。


「だぁっーはっは! そんなもん魔力の個人差もあるものぞぃ」

「あ、そうなの?」

「まぁ我や魔女は特別じゃからな。聖女はそこそこくらいじゃし。効率と結果を求めれば制約がかかるというだけじゃ」


 魔力があればイカサマし放題。

 そう聞こえる気がするんだが?


「攻略! 攻略じゃから!」

「今更問い詰めることでもないけどなー」


 半分共犯だし。

 台ではチェッカー上のステージで銀玉が揺れ、そして落ちる。意外と真ん中に行かない。


「そうそう、汎用性魔法ならステージ攻略が残っとったの」

「ホントに今更だな……!」


 最近はトンデモ理論が多かったからまともな魔法を見たいものだ。


「うむ! 制約に食傷気味な兄弟子に、効率と結果のバランスを考慮した素敵魔法を送るぞぃ!」

「頼みますよぉ、弟弟子〜」


 任せておれ! と魔王は息巻きながら左手に黒いモヤを纏う。


「我は魔を統べる王! 運命を司る銀の星よ、盤上に舞え! 『約束された舞台ホープフル・ステージ』!」

「うぉ、モヤで見えねぇ⁉︎」


 俺と魔王、2人の台を黒いモヤが包み込むと、魔法は発動を終えた。


 カッカッカッカッカッ


 ……リズミカルな玉の流れは変わらない。


「なんか変わったのかこれ?」

「魔法ですぐに当たるという発想は間違った知識じゃ。魔女とて初当たりは自力であることが多かろう? ほれほれ」


 魔王はチェッカー上のステージを指差す。


 左手側から舞台へ降り立った銀色の球体達は、その悉くがチェッカーへ降りてゆく。真上からだけではなく、外れた両端からも。


「ステージが……完璧に役割を果たしてる……⁉︎」


 ステージ性能というものがあるが、これはそのスペックを最大まで──いや、最大以上にしている。


 ──ポキューン


 ステージから降り注いだ玉が台下の宝玉を赤く染める。


「だぁーはっはっは! これで回転率あっぷじゃ!」

「あれ……?」


 それは、魔女と2度目に会った時。


『馬鹿正直に打ち尽くすなんて愚の骨頂。真の勝者はチェッカーまでの道筋を作り、すべてを抽選させます…………そうすれば、楽に戦えるでしょう?』


 魔女による攻略法その1……『風の絨毯インビジブル・ロード』。


 懐かしい凶悪魔法に似ている。

 ……というか下位互換では?


「他メーカーのパクリ台が出るんじゃから魔法とてパクるぞぃっ! それに、燃費ならこちらが上! 終日打っても疲れんぞぃ」

「なるほど……」


 短時間の回転率ではなく、『ステージ上の玉を誘導』することのみに魔力を使ったわけか……これなら怪しまれることもない、のか?


 ──ポキューン

 ──アーハッハッハッハッハ!


 画面の先では青い髪の少女が笑う。


「そろそろ兄弟子らしいヒキを見せてもらおうかの?」


 ま、鍵は弄ってないから俺のヒキだな!

 魔法とか現実にありえないからね!


「っしゃ、後輩にヒキの強さ見せてやんよ」


 意見はコロコロ変わる。

 それがパチンカス。


 ──ポキューン!



 ◇


 参考機種:P Re:ゼロから始める異世界生活 鬼がかりver.

 あの音を聞くたび、心拍が上がります。

 

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