Round 13 REGに偏るのは運命
「コヒュー、コヒュー……!」
今にも倒れそうな顔で勇者はブドウの役を揃える。
「チィッ、またREGかぁッ!」
対照的に勇者のことなど忘れた聖女は3連REGボーナスに舌打ち。優しそうな表情は失せ、眉間に皺が寄る。そんな2人に挟まれ、久々に俺の台のランプが「ペカっ」と光り──
7
7
7
「ふぃ、やっとBIGだ……」
ようやく拝めた
ちょっとホッとしたな、あれからずっとREGだったし。さすがに連続すると神の介入を疑ってしまう。
これで大当たりは聖女8回、俺5回、勇者0回。
三者三様の遊技状況を見せつつも、メダルの獲得枚数は勇者が1位である……獲得枚数は。
「こ、こんな単調な作業のどこが面白いんだ……コヒュー、コヒュー…………!」
息も絶え絶えの勇者が虚な瞳でこちらを見てくる。
「いや、だってスロットってそういう遊び方しないし……」
「ま、まぁでもメダルの枚数は俺様が1番だからな」
「あれ、聞いてなかった? 勝ちの条件は大当たりの回数だぞ」
「……は?」
「そりゃそうだろ。たまたま揃ったブドウ図柄の枚数カウントされたら、勝負として面白くねぇもん」
「も、もしかして勇者様の魔法の制約のことわかってて……⁈」
負けても失うものないしな。
魔女に制約の話聞いといてよかったぜぇ〜。
「て、てめぇ……!」
「おっと、条件を呑んだのは勇者様だぞ。まさか勇者が負けそうだからなかったことにしてくれ、なんて言わないよな」
「ぐ、ぐぬぬぬぬぬ……!」
出玉は負けてるけどな。そういえば、勝ったからどうするとか決めてなかったなけど……まぁいいか。
勇者にとってはここで勝負を無しにすれば挑んだ自分のプライドに関わるし、条件を変えるなんて言えば、提示した条件では勝てないという敗北宣言になる。
つまり、絶対光らないランプを待って打つしかないのだ。
その間もブドウは揃い続けるんだから、羨ましいけどなぁ。
◇ ◇ ◇
「んぅ〜設定入ってるぽいけどREG8割は陰謀を感じるぞ……」
「ひゃは〜っ! またまたBIG頂きますぅ〜っ!」
当たっている分、まぁそれなりに満足。
「ヒュー……ヒュー」
今にも死にそうな顔でいる隣の勇者がいなければ、だが。
「当たり……当たりは、いつ来る……?」
「もう台変えたら?」
「魔法掛けるとこの台から動けねぇんだよぉ!」
御愁傷様。
多分魔力が尽きるまで延々と打つことになるんだろう。全パチンカスにとっては魅力的な魔法だというのに、なんと勿体無い表情で打っているのか……
まぁ……魔法の内容と打ち手の性格が絶望的に合っていなかったと言いますか。
「今日はこんなとこかな。おい、聖女様」
「んひぃ〜! ……ふぇ、なんですかぁ?」
「顔の落差よ……そろそろ終わりにしようや」
お互いのグラフを見ても伸びを感じない。ある程度で見切りをつけるのもパチンカスの必須スキルだ。特に今日は、深追いする気分ではないし。
「名残惜しいですぅ」
「どーせまたうちに来るんだからいいんだよ」
1箱分のメダルを持ち席を立つ。聖女はなんだかんだで2箱持っていた。さっさとメダルを流そうとする俺たちを、勇者は引き止める。
「ま、待ってくれ……ぇ」
「なんでそんなに苦しそうなんだよ。めっちゃ出てるのに」
「勇者様って派手なことは好きなんですけどぉ、今みたいに細かいことの積み重ねって苦手なんですぅ」
相性最悪の魔法じゃねーか!
なんであんなにイキってたんだ⁉︎
「こ……今度勝負する時は条件擦り合わせような。お疲れ」
「ぁ……あぁ……まってぇ……!」
振り返らない、全力疾走だ!
あいつ……スロット向いてないと思う。
あいつに合ってるのは大量高速出玉系のパチンコだろ……と思いつつも、そんな助言をする義理もないのでさっさと退散した。
ペカっ、の光で当たりの栄養補給は十分堪能できたのでOKです!
その夜、スマホで台の様子を確認したが、閉店まで離れられなかったらしい。当たってもないのに右肩上がりのグラフは、バグを疑われ稼働停止になったとさ。
まぁ俺には関係ないので、ヨシ!
◇ ◇ ◇
登場人物の一部イメージ図を近況ノートにまとめています。
興味のある方は覗いてみて頂けると嬉しいです。
〇銀髪の魔女、黒髪の魔王、金髪の女騎士、橙髪の聖女イメージ図〇
https://kakuyomu.jp/users/mutamuttamuta/news/16817330661395896766
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます