Round 14 魔女によるパチンコ攻略法その8『法則、消えるべし』
「勇者とスロットで勝負を?」
「死にそうな顔なのにメダルが増えるもんだからシュールだったぞ」
「目先の欲だけ考える勇者らしい魔法ですね」
朝からマイホ。
店に預けている俺の諭吉をいい加減下ろしたいところ。今回も高継続機種を打つが、確変突入率も大事だ。
狙い台が同じだったのか、銀髪の魔女が角台に俺がその隣に座り、この前の勇者のことを話題にしていた。
──テヤンディ
大工のGさんである。
かつては超人気台の筆頭となり、似たゲーム性の台が乱立した罪な台。シンプルなオレンジの筐体が目につきやすい。
……まぁ『大工』と言っているが大工らしい場面を見ることはない。
さてと、打つかな。
ちょっと強めにハンドルを捻ると、右側の方へ球が飛んで行った。
──ハンドルヲヒダリニモドシテクレィ!
Gさんのデカい警告に体がビクつく。ホント、この音量なんとかならんのか……
気を取り直して打ち始めると、魔女が勇者の話題を続ける。
「まぁ、あの男にこの高尚な戦いは理解できないでしょう」
「パチンコなんだが……?」
「魔法の限界を研究できる素晴らしい機械ではありませんか」
体の良い言い訳である。魔法を研究するだけのやつは流れるように通常時のモード変えたりしないぞ。
「んで師匠よぉ、今回も魔法使うのか?」
「当然です。何のために来たと思っているのですか」
パチンコだが?
「弟子の為に懇切丁寧な授業をしてあげようというのに失礼な……!」
「頼んでねぇよ」
「授業を始めます」
回転数を積みながら、魔女の授業は始まる。
この大工のGさんは当たるまでの数字にいくつか法則がある。もし『制約』とやらを考えるならそこを突くのか?
簡単に説明すると、
リーチ図柄の数字によって発展が異なる。
1 SPリーチに発展すれば、バトルリーチ後半か期待大のリーチ発展濃厚
2 特になし
3 SPリーチ以上に発展濃厚。大当りすれば確変の期待大
4 特になし
5 バトルリーチ後半か、その他期待大リーチに発展すれば大当り濃厚
6 SPリーチに発展すれば大当り濃厚
7 期待大演出発生濃厚。大当りすれば右打ち濃厚
8 SPリーチに発展すれば、バトルリーチ後半か期待大リーチ発展濃厚
9 バトルリーチ後半か期待大リーチで大当り濃厚
※濃厚は濃厚であって確定ではない。濃厚である。ほぼ確実にあたるとしても濃厚とぼかしているのは、そういうことなのである。
……要するに2と4以外なら何かしらリーチへ行くことがあるわけだ。この2つだけは寒いと言っても過言ではない。
――キトウグミガダイクカイノチョウテンダ
敵キャラのこのセリフ、『体育会の頂点』って聞こえるのは俺だけか……?
「今日はこの法則を打ち破ります。寒いリーチも、熱い演出に変えてこそ魔法というものです」
「最近はまともな魔法だったのに、ここにきてまたオカルトっすか」
「失礼な、純然たる攻略魔法です」
攻略(だったらいいね)魔法ともいえる。
師匠は懐から杖を取り出し、オレンジの筐体へ魔法をかけた。
「今日はおまけです」
「あっ、てめぇ!」
皮肉のお返しか……魔女は俺の台にも魔法をキラキラと降りかけた。ちょっと悔しそうな顔をしていると、奴はめちゃくちゃ嬉しそうに笑う。
「さて……弟子も同じ条件にしたところで」
「させたんだろ……」
お互いの台に先読みが始まる。そして当該保留で騒がしくなっていく……左右の数字は俺が1、魔女が4だった。この時点ではどちらも寒い。リーチさえかかればこちらが上だが。
「言ったはずですよ、法則を打ち破ると」
静かに1と2が左右に並ぶ俺の台に対して、魔女の台はボタンは震えるわ役物は上下に動くわとどう見ても熱い。
――キョク ゲン エン ブ!!
リーチ図柄は4のままバトルリーチ後半まで進み、魔女の台は早くも当たりを引き寄せた。
「これ……当たりはお前のヒキなんだよな」
「勿論、私の
マジか冗談か知らんが……ほざいてろとしか。
ちらっと台枠上部のランプを見ると白色……確変期待度は低い。低いのだが……
「これで確変入るのかぁ?」
「魔法は既に発動済み、抜かりありません」
賞球が流れ始めると、あっという間に敵の社長が開眼。超Gラッシュ突入だ。
――チョウゲンラーッシュ‼
「うそん……」
「これが魔女によるパチンコ攻略法8『
一体何が対価になるのか。すべては確変で明らかになる。
こいつが当たりを引いたことより、魔法の対価の事の方が気になってしまう。
俺はもう、十分魔法にやられているのかもしれない。
◇ ◇ ◇
参考機種:『P大工の源さん 超韋駄天(&超韋駄天ライト)』
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