Round 8 勇者によるパチンコ攻略法1『力こそ正義』
『見るからに『勇者』っぽい人物がいたら距離をとることですね。碌なことになりませんから』
『それ……お前が言うか? 大丈夫だろ、そんな奴に会うワケないっつーの。だぁーっはっはっは!』
言霊とは、本当にあるものだと後悔する。パチンコに関して後悔はしていない。
「っざけんなこの
「……」
平穏たる俺のパチンコは、クズと噂の勇者によって崩された。
◇ ◇ ◇
紳士淑女の諸君、おしりペンペンは好きかな? 俺は好きだ。
しかし現実社会でそんなことをすれば社会的な死は待ったなし。そこでパチンコである。
そう、パチンコでも美少女のケツを引っ叩ける台がある。『シンデレラの
これはゲーム性が特殊で、通常当たりを目指すのとは別に36回転の間、1/15で回転数を『リセット』する転落を引かなければ大当たりチャレンジをもらえる変わった台なのだ。チャレンジを通せば、見事『おしりペンペンRush』という清々しい名前の確変に入れる。
いかに36回転中平穏に過ごすかがキーとなる。
以前手酷く負けたがリベンジに来た次第。目標はもちろん、全キャラおしりペンペンだッ!
……と、意気込むのもそこそこに、早速我が軍の諭吉を投入したところで異変は起きた。
よく見えなかったが、視界の端に変な奴がちらつく。
いや、コスプレした銀髪とか金髪の女騎士とか角生えてる魔王とか今更な気もするが……集中しよう。
1ゲーム、2ゲームとちょっとずつ天井に近づいていく。が、12回転目でリセット。まぁこんなもんだ、大した問題じゃない。これを耐えてこそのカタルシスがある。
ひとり悶えていると今度は俺の台を見ながら、背後を変な奴が通り過ぎる。
……まさか、なぁ?
2度目の挑戦。
20ゲームと折り返しまで平穏。ピンチもなんとか乗り越えて後少し……と、そこでついに変な奴が隣の同じ台に座った。パチンカスとして鍛えられた視野で、視線だけ右に向ける。
「ッたく、こいつやっか」
燃えるような赤い髪に、腹筋が露わになった皮と胸当ての軽装防具。背中には鞘に収められた剣。精悍な顔つきの青年だった。よくわからんが、俺を一瞥するなりちょっと眉を寄せた。
いやいやいやいや……
パチンコ屋にドレスコードなんてねぇし、気にしたらダメだ。
ようやく36回転に到達し、チャンスを手に入れる。バトルで突破すればおしりペンペンだッ!
(たのむぜ〜)
信頼度を示す攻撃の色は白、白そして緑。寒い、それでも──!
祈りよ届け、俺におしりを……!
──バンッ‼︎
「うぇっ⁉︎」
「クソが! またやり直しじゃねーかっ!」
隣の赤髪が台のガラスへ鉄拳制裁。同時に俺のチャンスは失敗に終わる。台パン勢かよ……久々に出くわしたわ。
本来なら台移動を検討するところだが、生憎俺はおしりペンペンに来たのだ。ここで引くつもりはない……そう思っていたのだが、
「っざけんなこの
「……」
うっぜぇ……いい大人がキレんなよなぁ。興醒めもいいところである。
「勇者のオレ様を気持ちよくさせねーなんていい度胸してんなぁこの店はぁっ⁉︎」
……やっぱり勇者らしい。
「お前もそう思うよなぁっ⁉︎」
飛び火とはこのこと。急に半裸の青年に肩を掴まれた。ナニ触ったか分からない手で触ってほしくないなぁ……
「え? はぁ……」
パチ屋でいきなり話しかけてくるタイプ、俺苦手なんだよね。肯定も否定もせず、適当に濁す。
「こんなクソみてぇな機械には、勇者のオレ様が罰を与えてやる! アホみてえに球吐かせてやるからなぁ」
まさに転落したばかりの勇者。
数回転後にまた転落演出が訪れたその時、勇者の拳が光を放つ。
「勇者の魔法をくらいやがれ、『
腰の入っていない、へなちょこ台パン。鈍い音が台を揺らす。対して眩しくもない光の正拳を受け、転落演出は回避された。
「気に入らねぇやつは魔法使って殴ってやるぜ、ギャハハハハハ!」
要するに殴って転落回避か。まごうことなきクズ野郎である。
台パンダメ、ゼッタイ。
◇ ◇ ◇
参考機種:『P シンデレラブレイド』
詳しくはパチンコの実践動画を見ると、よりわかりやすいです。私はこの台のゲーム性、嫌いじゃないですけど合わない人は合わないですね。
台パンは迷惑行為!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます