Round4 魔女によるスロット攻略法2 『前衛は任せた』
時に──大人には演技が必要である。
翌週末、同じパチンコ屋を訪れた。
『新たなスロット攻略の魔法を編み出しました。これは弟子である、あなたの協力が不可欠です……ノリ打ちしましょう』
……怪しさ満点。
あの女が利用するにしても絶対面倒だ。
とはいえ、ノリ打ちなら勝てば山分け。魔法にあやかるのは若干癪だが、刹那主義が抗えるはずもない。
……のだが、
「は〜い、どうもこんにちは! パチンコパチスロ実践系配信者の魔女、
「……」
今日の台は
その角台で銀髪の魔女は三脚を立てて準備が終わると、そこへ設置したカメラに向かって不気味な笑顔を作った。作った声も媚びが全面に出ている。
しかし
「……なんですかその顔は」
「いや、店ン中クーラー効いてるなあって」
上着持ってくればよかったかな。
友達ではないにせよ、知り合いの変な様を見ていたたまれなくなる。これが共感性羞恥か……
「今日の魔法には必要な体裁なのです」
「これ配信してんの?」
「まぁ一応。魔法の発動の際、違和感がないよう、私なりの配慮です」
こいつが配慮……? 何か悪いモノでも食べてしまったのか。大丈夫だろうか。
「あ、配信してるってことは俺映ったらやばくない?」
「それはご心配なく。きっちり対策しています」
まさに声が入っている気がするが……魔女が細工しているなら大丈夫か、多分。
「……んで、どんな魔法なワケ?」
「それはその時までのお楽しみですよ、カメラマンさん!」
誰がカメラマンじゃ!
「じゃあ気を取り直して、実践開始ぃ〜!」
こうして、実践系配信者と化した
今にして思えば、ここで普通にパチンコを打つ方向へ変えればよかったのかもしれない。
◇ ◇ ◇
さて、この台はまずボーナスを当てるためレア役などで
通常 → CZ → ボーナス → ボス戦 →AT
実際はCZのCZを引いてCZを当てるという2段階仕様。いかに早くボス戦に辿り着くかが重要だ。
「ところでお前、このアニメ見たことあるの?」
「当然じゃないですかぁ! 神アニメですよぉ!」
見事なキャラ作りである。しかし愛想笑いの間も、レバーオンとボタンを押す動作は滑らか。
……随分と
「あ、早速レア役! やったぁ!」
……果たしてこのままのテンションが続くのだろうか?
早くもノリ打ち仲間ではなく、カメラマン視点になりつつある。素が出なければいいが。
CZのCZへ突入し、魔女の顔つきが変わった。レンズ越しの誰かへ媚びるものではなく、よく見る
「さて、そろそろ準備をしましょうか」
CZを危なげなく突破し、ついに魔女は懐から杖を取り出す。CZ突破っつうと、前にもやったような……
「前の攻略法……とは違うんだよな?」
「無論です。今回はこちらから攻撃するタイプの台、敵の技など見る必要もありません」
おい、白銀シルバ……キャラ忘れてんぞ。
「このCZは私達2人のコンビネーションが鍵です。用意はいいですね?」
「お、おぉ」
一体何をするのか、魔女の後ろにいる俺に何をしろと言うのか。
そして、CZは始まる。
ダンジョンの奥、待ち受けるはコボルトの親玉。HPゲージを3本削れば晴れてボーナス獲得だ。できれば、だが。
重要なのは、毎ゲーム確率で発生する「スイッチ目」という特殊な役。原作では前衛と後衛が入れ替わる意味で、戦いの鍵となる。
その小役が成立するとHPが削れるが、普通はそう上手くいかないわけで……俺も動画で見たがなかなか決まらないようだ。
ただ、魔女は違う。
「……スイッチが成立しないのは覚悟がないからです」
「覚悟?」
「画面の奥で戦う彼らと我々打ち手では覚悟が違う……ならばもう、私達が『スイッチ』するしかない!」
レバーを叩く直前、魔女が杖を振るう。そして、CZ1回転目──
「スイッチ‼︎」
「は、ぇ、おぉっ⁉︎」
突如席を立った魔女に、入れ替わるように座らされ画面のナビ通り打つ。
──ウォォォォォ!
スイッチ目、成立。
ボスのHPゲージが、1本削れた。残り2本。
「成功ですね……今のは私の補助ありきですが。次は自分で、迅速に動いてください」
「お、おい……まさか魔法って、スイッチ……⁉︎」
「これぞスマスロ攻略法第1弾『
白銀シルバの満面の作り笑顔から放たれる営業スマイル。
どうやら俺は、いつのまにか魔女とパーティになったらしい。
……今すぐ追放したい。
◇
参考機種:『スロット ソードアート・オンライン』
詳しい台のことは「スマスロSAO」で動画検索!!
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