Round3 キャラは推し一択だろッ!
「この魔法の肝はキャラクター達と一緒に歌うことじゃ」
「はぁ……」
んなアホな……
魔王すら脳が焼き切ってしまうのか、パチンコは。
「銀髪の魔女と違って難しいことはない簡単な魔法だぞぅ! 兄弟子の台にも掛けてやろうか?」
「遠慮しとくわ」
歌うのは勘弁。
「そうか? さぁて、お気にはクリスちゃんじゃ!」
「…………」
至って真面目に遊技している。まぁでも時間巻き戻したり釘にダイレクトに攻撃する魔法に比べたら可愛いもんだな。
……いかんいかん、俺まで毒されてる。基準があのパチンカスに寄っているのはまずい。
「むぅぃ……テンパイすらせん」
「まさかとは思うけど、突破に魔法全振りでその後は……」
「己の引きじゃ!」
あぁパチンカス。
まぁこの台は右打ちに入れるかが全てと言って過言じゃないからな。そこへ集中した魔法というのは、わからんでもない。
ラストも寒い発展で終わってしまった。
「ま、まぁオスイチなぞ続かんのが常識だしの」
「メンタル魔王かよ」
魔王だった。
とかなんとかやってたら俺の台の保留が全部『てがみ』に変わった。勝ったな。
「ぬぉ、デュ○ンダルまた来たぞぃ!」
「やはり甘パチ、甘パチは全て解決する」
リーチ自体はキャラリーチだったが普通に突破、最終決戦である。
「ホントに歌わぬのか?」
「勝負師たるもの小細工抜きだ」
「かぁっ〜! さすが兄弟子」
勘違いしてくれてなにより。
さ、気合い入れて保留貯めるか。
「……で、魔王はまた歌うの?」
「無論ッ! 我が美声をとくと聞くが良いぞぃ」
「がとぅらんですばーべるじーぐれっとえーでるなーる……えみゅすとーろんぜんふぃーねえるばらーじぃー……」
同調した歌声はものすっごく下手。でも癖になりそう。
魔王の台に表示されたのは通常ボタンではなく、台付属のギア。ほぼ確定である。
「わっはっは! 魔王は勝つッ!」
――キュキュキュキュイン! キュキュキュキュイン! キュキュキュキュキュキュキュキュキュイン! ポォロポポポポペペペペピピピピピーペペペペペペペペー
……確かに恥がなければ強い魔法である。でもまぁ……
「俺も当たったけどな」
1/7.7なんぞ当てて当然。
「出球勝負じゃ兄弟子!」
「ハッ、俺のフォ○ックゲイン舐めんな」
キャラもちろん、デスデ〜ス!
みんなも推し一択だろッ!!
◇ ◇ ◇
結果から言うと俺は何度も魔王の美声を聞くハメになったし、しまいには、右打ち中も歌い始めやがった……!
「すぅ〜ぱぁ〜懺悔タイムじゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! ひゃっはー!」
う〜ん、ホントにあの銀髪の魔女たちと戦ったのかぁ? と思うほどあどけない。もしかしてみせいね――
……いや、やめよう。こいつらの年齢を考えたところで無駄だ。どうせパチンカスだしな!
「なーっはっはっは! 台が当たりたがっておるわぁっ!」
早くも10連、出玉もMAXラウンドに偏り魔王の足元にはドル箱が数箱。さすがは魔王。対する俺は低ラウンドに偏り苦戦である。
「ま、甘だしこんなもんだろ」
推しキャラの演出は楽しめたし、そろそろ別の台いくか。
「ぃよし! 次は3を打つぞぃ!」
「え⁉ やめといたほうが……」
1000円で10回転するかどうかだぞ……
魔王は勝った事で調子に乗ったか、諫言を聞き入れる様子はない。
「何を言う! これは前哨戦ッ、ここで得た出玉で勝負じゃーっ!」
ササっと店員を呼んで、魔王は絶唱3に移動していった……
「ふっ……所詮はパチンカスか」
俺もミドルの方行ってみるかぁ。
いざ本番、ガチ勝負に向かう為1箱とちょっとを流すべく『呼出』ボタンを押そうとしたその時、白い手に掴まれた。
「やはりいましたか我が弟子」
「……お前もいたんかい」
黒いローブで全身を覆い、頭にはつばの広いこれまた黒色のとんがり帽子。深めに被ったソレから覗く銀色の髪。
お馴染み、
「なんか用か?」
「新たなスロット攻略の魔法を編み出しました。これは弟子である、あなたの協力が不可欠です……ノリ打ちしましょう」
拒否権はないんだろうなぁ……
しかもノリ打ちとは、いつになくこちらに譲った条件は妙だ。何か企んで……企んでるよな。
「まぁいいけど、俺まだパチンコ打ちたいんだけど」
「構いませんよ。攻略は来週の土曜、朝からくるように……機材の準備もあるので」
「機材ぃ……?」
言いたいことだけ告げると、魔女も他の島へ消えていった……
ん~……色々と気になるが、まぁ来週になってからでいいか。
ちなみに魔王はクソ釘にやられて出玉消滅。
俺も当たりこそ引いたが通常を掴まされ出玉消滅。
あの魔法、一日に一台にしか掛けられなかったらしい。アホである。
「我のたまがぁっ~!」
「出玉がなくなっただけで、実質勝ちだから……!」
朝一番の勝ち分というのは、大抵は消えるもの。夢を追い球を費やす、それがパチンカス。
◇
次回はもしかしたら取材を挟むかもです。諭吉さんと相談して決めます。
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