Round 10 魔女によるパチンコ攻略法5『我は激熱を欲する』


 金髪の魔女ガキを倒し(自滅だが)、1週間後。

 特にやることもないので今日も元気にパチンコである……が。


「先日はご迷惑をおかけしました」

「お、おう……」


 どういう風の吹き回しか、銀髪の魔女は会うなり頭を下げた。


「まさか追手が来るとは予想外だったので」

「なんか連れ帰ろうとしてたけどあのガキ」

「さて、なんのことやら……」


 それは知らばっくれるんかい。

 追手とか言ってるけど、身内じゃないのかぁ?


「まぁそれはさておき、そのお詫びをば」

「お詫びぃ?」


 俺の懐に詰める魔女。艶のある唇が店内の照明で照る。

 

「本日は特別に大当たりする台を教えて差し上げましょう」

「…………」


 うーん…………

 やはりパチンカスである。

 某谷〇先生が言ってたっけな、「当たりたがっている台に座る」とかなんとか……


 脳が焼き切れるとここまでイッちまうわけだな。南無南無。

 こうはなりたくないモンだ。


「ずいぶん失礼なモノローグですね」

「ナチュラルに心を読むな」

「……まぁいいでしょう、着いてきてください」


 どうせ打つ台は決めてないしいいか……

 ということで魔女の後をてくてく追いかける。


 あれ? この先の島は…………


 バンバンバン! 


 台を叩く音に思わず身体がビクつく。島の角台、ご年配の紳士が青を基調としたパチンコ台の中心、貝殻を模したボタンを連続強打していた。

 

 訂正、紳士ではない。


 かと思えば、その反対の台では意味もなく画面を撫でるご年配のご婦人。……あの行動、意味があるんだろうか。


「今日はここが熱いです。アツアツの激熱です」


 皆さんお馴染み、『海』のパチンコである。大好きマ〇ンちゃんも、もうずいぶん長いお勤めである。


「熱いって……まぁそれなりに当たってるみたいだけどさぁ」


 正直、現代の出玉速度に刺激され過ぎて海系の台はやや敬遠気味なのだ。なにより先バレ演出の多い昨今、あの音や挙動に頭をやられたユーザーは少なくない。レバーの震えや「ポキューン」という音に脳汁を出した奴は数知れず。


 要するに、物足りないのである。


「まぁまぁ、今回は魚群が高確率で現れる台を教えて差し上げると言っているのですよ……要するにの台です」

「あ?」


 ん~、オカルトが極まり過ぎて会話にヤバい香りしかねぇ。

 確かに、魚群演出は海系の台で高信頼度の演出だ。むしろそれが当たり契機のメインでもある(今は別のモードもあるが)。


 魔女はスッと懐から杖を出し、天井に向かって大きく振るう。


「魔女によるパチンコ攻略法5『我は激熱を欲するクレイビング・ヒート

 

 幻覚か、3Dマッピングか

 杖の先から現れたのは大量の魚たち。


 その魚群は、なんと海系の島を泳ぎ始めたのだった……


 

 ◇ ◇ ◇


 参考機種:海物語シリーズ

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