Round 8 魔女見習いによるパチンコ攻略法4『天秤は右に傾く』
金髪の魔女見習いに絡まれ2日後の週末。
例に漏れずまた馴染みのパチンコ店へ。そろそろ勝ちすぎて顔認証が発動しそうだが、先日の件もあり来てしまった……と言うより、
『もし来なければ永遠に負ける魔法を掛けますよ』
んなわけあるか、と否定できない今日この頃。
「あ! 遅い弟子もどき!」
「弟子じゃないんだが……」
「お黙り一般人!」
やはりどう見ても成人には見えない。
つまるところ、ガキである。
「あんたを倒して師匠は連れ帰るから!」
「はぁ……」
傍らのベンチでは銀髪の魔女が呑気に缶コーヒーを飲んでいる。こいつのことなんだろうが、師匠とは? ゴト仲間?
「勝負は簡単よ! あんたの得意なパチンコで球をいっぱい出した方の勝ち!」
負けないから! と言わんばかりに胸を張る金髪。念のためパチンカスの魔女に確認。
「なぁ、これ打たずに自滅待ちはダメなの?」
「魔法使いの戦いは正々堂々ですよ」
魔法を使ってパチンコは良くないと思いまぁす!
「それに、適当にあしらうと彼女しつこいですよ。パチンコ以外に魔法を使うのも躊躇いありませんし」
脅迫かな?
演者でもないのになぜバラエティじみたことをせにゃならんのだ。
「まぁいいけど、恨みっこなしだぞ」
「とーぜんよ! そっちこそ言い訳しないでよね!」
……ホントに成人かぁ?
それはさておき早速勝負台へ。
業界では超有名な黄金騎士……ではなく、2号ライダーよろしく銀牙騎士を題材にした10カウントチャージ台──のライトスペック。
大当たり後、時短一回の勝負に勝てば右打ち、1:1で1000発出るなかなかの機種だ。
「んじゃ、これで多く球出す勝負な」
特に選出の理由はない。
なぜなら俺には負けたらダメな理由はないのだ。あと気分。ミドルばかりで最近疲れた。
「あとで吠え面かかないでよね!」
リアルで吠え面なんて言う奴いたんだな……
面倒なことに巻き込まれたがまぁライトスペックだし、お互い悲惨なことにはならんだろ。
◇ ◇ ◇
と、思っていた時期が俺にもありました。
「んぅ〜サ◯セイフラッシュ!」
入賞時の大当たり確定音が癖になるメーカーである。ちょくちょく右打ちに入りつつ、ただいま4000発。
対して金髪の
「ぐ、ぐぬぬぬぬぬ……!」
135分の1と手軽な台だが、350回ハマっていた。その間、熱いリーチすらなし。
「なによこれ! 壊れてんじゃないのッ⁈」
う〜ん、順調に
その間に俺の台は右打ちを賭けた一発勝負で龍を倒す。余裕の赤タイトル、数度目の突破である。
「うぃ〜」
「あんたね! あたしの台に魔法掛けてるでしょ!」
遠隔と言い換えれば、立派なパチンカスの誕生である。
「ヒキの弱さを他人に押し付けんなよぉ?」
銀髪の魔女に比べてわかったことがある。こいつヒキが弱い。あと単純に打ち慣れてない。
「見てなさい、あたしも勉強してるんだから! あとちょっとで『遊タイム』? が発動するから、もう魔法使っちゃお。えい!」
煽りに過剰反応した金髪が懐から杖を取り出し一振り。
「あたしは自分の力で当てていーっぱい出玉を取るわ! これが自己流・魔女の攻略法『
…………………………
……………………
………………
カッカッカッ
特に変化はなく、球が打ち出される。
『
ましてや『
「見てなさい、遊タイムに入ったら勝敗は決まったも同然よ!」
「はぁ……」
遊タイムに入ったら勝てる……?
ちなみに『遊タイム』とは、パチンコで規定回転数の間大当たりが引けなかった場合に時短が発動する救済機能のことである。要するにスロットの天井だ。
救済程度でなに期待してんだこいつ。
何も知らないアホなのか、それとも
3、2、1、0!!
フェイスオブゼロォ──!
あ、また当たった。
下皿からドル箱へ流れる球を均していると、隣から不意に聞こえるサ◯セイフラッシュの確定音。
「え、ちょ、ちょっと待ってよ! なんで⁉︎」
「そりゃあお前……135分の1だし」
何のためのライトスペックだよ、と喉元で止める。金髪の魔女の台は音の通り大当たり。ここから一回転で右打ちの当否を祈るのだが……
緑タイトル、チャンスアップなし、BGM通常……
キサマノインガ、オレガタチキル!
──プシュン……
「なんで遊タイム直前であたっちゃうのよーっ!」
あるよね、天井ストッパー。
◇ ◇ ◇
参考機種:P10カウントチャージ絶狼 神撃135Ver.
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